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シオンの涙雲  作者: 居鳥虎落
第1章
25/30

25話

 その日の夕方、料理長達にお願いしていた通り夕食にカヌレが出た。



「はいはい!今日はデザートがあるよ〜」

 文哉さんが手を叩きながら大きな声を出してその側でデカいワゴンにカヌレを乗せて押してくる和希さんがいた。 



「デザートって珍しいな」

「今までは野郎が多かったからな、施設から連れて来た女子供も多いからそれで作ったんじゃね?」

「あぁ〜それか」

「ちなみに雛菊ちゃんと柊ちゃんの手作りです!」

「マジか、」

「あの小さいの料理出来たんだな」



 私達はカヌレを配る文哉さんと和希さんを手伝って一緒に配る。配っている最中に一樹さんに声をかけられた。



「雛菊ちゃん!柊ちゃん!これ、このカヌレ?すっごく美味しいよ!」

「本当に?良かった!」

「美味い」



 一樹さんが興奮気味で話しかけている時隣に居た隆之介さんがボソリと言ったのが耳に入った。

 正直すごく意外だ、甘いの好きじゃなさそうなのに。



「お?隆が甘いの美味しいって言うの珍しいね」

「酒が入ってるから甘くても美味い」

「え、これ酒入ってるのやばく無い?雨音酒撃弱じゃなかったけ?」

「そうだっけか?」

「うん確かね。雨音ー!大丈夫かー?カヌレ酒入ってるみたいだよー!」



 一樹さんが雨音さんのいる方向に声を掛けると雨音さんがスッと立ち上がってコチラを振り返った。その顔は真っ赤かに染まっていた。



「らいじょうぶです、カヌレ美味いれす。もっとくらはい」

「全然大丈夫じゃ無いじゃん、何で立った危ないから座りなさい」

「フラフラしてて危ないね!」

「へぇ〜!雨音酒弱かったんっすね!俺知らなかった!」

「コイツ昔から酒弱いんだよなぁ〜」

「昔って子供もお酒飲んで良いの?」

「あ?まぁ多少飲んでも捕まったりはしねぇよ、それにこの国では15から成人扱いだ、コイツはもう18だからな成人してから3年は経ってるぞ」

「嘘だ」

「本当だよ?」



 嘘だー、こんなに日本と似てるのに成人が15歳って思わないでしょ。

 ん?待てよ、て事は私も15歳になったら飲めんじゃん!あと5年待てばお酒飲めるんだ!やったー!

 10年待たないと飲めないと思ってたから超嬉しい。



「雨音お兄ちゃん大丈夫?はい!これお水!文哉お兄ちゃんから貰ってきたから飲んで!」

「ひないく、ありあと、もらう」

「うん!ゆっくり飲んでね」



 雛菊と雨音は前世の家族と瓜二つだ。

 こうして介抱している姿を見ると懐かしくて悲しくて苦しい。

 2人は顔が似ているだけで違う人だ、雨音さんはお酒が弱いみたいだけど、前世の雨音はお酒が強くて、姉さんの方が激弱でいつも介抱するのは雨音方だった。


 そう言う違いが顔が似ている分尚苦しい…けど、2人が並んでいるのを見るのは幸せ。別人でも嬉しい。



「柊、どうしたの?」

「ううん、どうもしないよ?」

「苦しいって顔してる……また思い出しちゃった?」

「…大丈夫、苦しいけど、嬉しいの」

「そう?なら良いけど、辛くなる前に言うんだよ?」

「うん、ありがと」



 雛菊は私の変化にとても敏感でよく気付いてくれる。周りの人に聞こえない様に小声で心配してくれた。

 雛菊は本当にまだ10歳なのに、私は前世足したら30歳超えてるのに、姉さんに顔が似てるってだけでこの子を守る立場なのにこの子に甘えてる。情け無い、しっかりしなきゃって思うのに上手く出来ない。

 しっかりしろ、演技がバレない様にしなきゃ、無邪気な子供を演じていれば良い事がある。

 まだ信用できない、この人達に裏切られたら雛菊が危ない。

 絶対騙されない、信用しない、雛菊を守らなきゃ、今度こそ大切な家族を自分の手で守ってみせる。

 失いたく無い、奪われたくない。



「柊ちゃん!」

「ん?あ!ひーくん!」

「俺らもいるぞ」

「未来くんに恋くんにゼンちゃんもどうしたの?」

「いや、俺ら昼にカヌレ貰っただろ?ありがとな2個目もうまい」

「これは毎日でも食べたいよ!」

「喜んでもらえて良かった!」

「何だお前ら、2個目なのか?」

「ゲ!実さん」

「ゲとはなんだぁ〜?お前ら2個も食ってずるいぞ!おい野朗どもコイツらがずるしてるぞ!」



 実さんが周りの人達にチクると4人に一斉に襲い掛かりヘッドロックなどを決められていた。

 ご愁傷様です。私は体が小さいので頑張って自力で抜け出してね!



「みんなが喜んでくれて良かった!またいっぱい作るね!」

「本当に?!楽しみにしてる!」


 雛菊が楽しそうで良かった。


 その夜、雛菊が眠った後に私はこっそり起きてルゥに手紙を書く。

 さっそくお料理道具作って貰わなきゃ、突然道具が現れると組の人に怪しまれるから売買組織の壊滅を新聞で見て支援したくて送ったって事にしてもらおう、それでも不自然だけど、徹底的に調べるほどじゃないと思う。

 料理道具だけだと不自然だから、日用品とか必要なものも送って貰おう。

 ルゥはめんどくさがりでやってくれないから日用品の方はルゥの側近に手紙送ろう。


 鳥を呼ぶために外に出なきゃな、人目につかない様に夜やってるんだから誰もいません様に。


 柊が外に出るとまだ呼んでいないはずの鳥がそばの低木に泊まっていた。


「あれ?まだ呼んでないのにどうしたんだろ?」


 不思議に思い鳥のそばに寄ってみるとカリカリと嘴で背にある鞄を突っついていた。


「もしかして手紙が入ってるの?珍しいね、私が手紙送らないと送ってくる事ないのに」


 何の用だろう?

 柊は素早く封を切って中身の内容を確認する。


「…あ〜、なるほど。あいつが来るのか、それもそうかあれから5年、私達を売った金は当然使い切ってるはずだもんね」


 記事が出てからまだそんなに経ってないのに珍しく早いね。

 母さんが来るまでに片付けられるならそれに越した事ないんだよね。

 正直アイツはあんまり使い道ないけど、死ぬまで搾り取ってやる。


「報告ありがとね、はい!ご褒美の餌。それとこの手紙をルゥとオリバーさんにお願いね、これは前金の餌ね」

「クルル!」

「ふふ、お願いね」


 クーとっ1つ鳴いて鳥は飛び立って行きました。

 柊はいつもの様に手を振ってお見送りをして部屋へ帰ろうとするとこちらを見ている人物に気がつきました。


「今の鳥はなんだ?」

「…お友達だよ?隆之介お兄ちゃん」


 柊の後ろに居たのは隆之介でした。

 隆之介さん、私の事めっちゃ睨んでる。

 保弘さんに見られたならある程度許容してくれるだろうけど、この人は無理だ。誤魔化しても正直に言っても許されなそう。

 よし!友達で押し通すぞ!


「ここに来てまだ日は経ってないのにもう友達か?」

「ううん!あの鳥さんは施設にいた時からのお友達!バイバイしたんだけど着いてきちゃったの〜」

「そうか、じゃああの鳥から何を貰って何を運ばせた?」

「…」


 やっぱり全部見てたのか、手を振ってるところだけならまだ誤魔化しようはあったけど、


「お手紙だよ?」

「手紙、誰に送ってる」

「ん〜、柊もわかんない!」

「分からない?」

「うん!またまた鳥さんが手紙持ってるの見つけて、送り主の人と文通始めたの!その時の約束で名前は名乗らないで、誰かも言わない、どこにいるかも秘密にして文通しようって約束したんだ!」

「そんなことあるか?」


 まぁ、全部嘘だから危ないことないけど〜

 やめろって言われたらしばらくは控えないとな。


「危ないことはするなよ、個人的な情報を相手に与えていないなら続けて良いぞ」

「え?良いの?」


 てっきりやめろって言われると思った。


「組に迷惑かけねぇならお前が何をしようと構わん」

「わぁ〜い!やったー!」


 やめろとは言われなかったけど、バレたのは痛いな。

 完全に人目がない所じゃないからバレるのは時間の問題だったけど、こんなに早くバレるとは思わなかったよ。

 鳥を捕まえて手紙の内容見られたらまずいからやり取りするのはやめよう。

 下手に暗号なんか使って勘繰られても困る。


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