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シオンの涙雲  作者: 居鳥虎落
第1章
24/30

24話

「上手くラッピングできて良かったね」

「うん!可愛くできて満足!ちょっと時間掛かっちゃったけど」

「朝早くに作ったから全然大丈夫だよ」

「そうだね!あっ!あそこに居るのゼンちゃんだよ!ゼンちゃーーん!」

「あ、雛菊走ると転ぶよ!」

「大丈夫大丈夫!」



 雛菊はゼンさんを呼びながら大きく手を振って走っていく。お菓子作りで疲れてる筈なのにそれを感じさせない元気だな。

 私の体も同い年な筈なんだけど、精神的に「走ると疲れる」がインプットされてるのか走る気になれない。でも走らないと元気な子供を演じているのに不自然なんだよね〜

 ………走るか、



「ぜんちゃーん!とつげーき!」

「とつげーき!」

「あら?雛菊ちゃんに柊ちゃんじゃ無いの、急に抱きついてきてどうしたの?」



 雛菊と一緒に全力疾走で抱き付いたゼンさんはガタイが良いのもあるのかビクともせずケロッとした様子で立っていたのでちょっとつまらなかった。もっと盛大に倒れてくれても良いんだけど、今度は恋ちゃんにやってみよヒョロヒョロしてるからすぐ倒れそう。



「たまたまぜんちゃん見つけたから突撃してみた!」

「ん?私に何か用事?」

「そうなの!これどうぞ!」



 キョトンとしているぜんさんに雛菊と一緒にラッピングされたカヌレを差し出すと素直に受け取った。



「ありがとう!あら!ラッピング可愛いわね〜これ見た事ないけど、これはお菓子なの?」

「うん!カヌレって言うお菓子だよ!」

「料理長達と一緒に作ったの!」

「あら、もう料理長達と仲良くなったのね!羨ましいわ〜」

「ゼンちゃん料理長がタイプなの?」

「嫌ね!料理長じゃないわよ、文哉くんよ!私のタイプは!口説いてるのに全然落ちないのよ〜はぐらかされちゃってね」

「そうなんだ〜、大変だね!」

「頑張ってね!」

「ありがとう!お菓子もありがたくいただくわね」

「「食べて食べてー!」」



 ゼンさんはそう言うとカヌレと言う見たことがないお菓子を躊躇なく、大きな口を開けて一口で食べてしまった。

 普通お菓子と言われても見知らぬ物を渡されたらもっと警戒する筈なのにゼンさんは度胸があるな。何も考えてない可能性もあるけど、隆之介さんとかは警戒して食べてくれなそう。あの人は一樹さんに毒味させてから食べるかも。



「んー!何これ!とっても美味しいわ、こんなお菓子食べた事ない!埋もれるくらい食べたいわ〜」

「喜んでくれて良かった!」

「一生懸命作ったから嬉しい!」

「本当にありがとね〜仕事で疲れた体に沁みるわ」

「お疲れ様〜」

「これひーくんと未来お兄ちゃんと恋お兄ちゃんの分!ちゃんと渡してね!」

「分かったわ!ちゃんとみんなに渡すわね」

「ありがとうー!」



 3人を探す手間が省けて良かった、食べる時の反応が面白そうだから見てみたかったけど、楽したいからゼンさんに託そう。

 雛菊はゼンさんにカヌレを渡して満足そうに次にカヌレを渡す人を探している。



「今度は誰に届けようか!」

「今更なんだけど、届けるよりご飯の時にデザートとして出した方が早くない?」

「それもそっか〜じゃあ冷蔵庫に入れておいて料理長にご飯の時に出してもらおう!ひーくん達に悪い事しちゃったかな?」

「渡しちゃったししょうがないよ!いっぱい作ったから他の人には内緒でもう一個渡そ」

「そうだね!じゃあ厨房に戻ろう!」



 私達は早足で厨房に戻り、カヌレの事を料理長達にお願いしてプリンだけ和花ちゃんに届ける事にした。

 プリンを持って行くついでに紫さんと、念の為総一郎さんの分のカヌレも持っていこう、紫さんは散歩してない限り部屋に居るだろうし総一郎さんが仕事をサボってる可能性もあるからね。



「紫お姉さんこんにちは!雛菊だよ、入っても良い?」

「柊もいるよ!」

「あら2人とも入ってきて良いよ」

「「お邪魔しまーす!」」



 部屋に入ると和花ちゃんと紫さんそして予想した通り総一郎さんもいた。

 貴方はそういう人だと思ったよ。



「総一郎お兄ちゃん何でいるの?」

「お仕事お休み?」

「あ〜、そんなところだ」

「嘘つかない、サボってるだけでしょ?保弘くんが怒ってまた仕事増やされるよ?」

「それは嫌だな〜でも俺は和花と紫とのんびりしたいんだよ〜仕事行きたくねぇ〜」

「どうせ夜には帰って来れるんだから、我儘言ってないで早く行きなよ」

「はぁ〜」



 めっちゃ嫌そうな顔してるな。仕事に行きたくない気持ちは非常に良く分かる。

 働かないとお金が無くなるけど、働きたくないんだよね〜。

一生遊んで暮らせるシステムを国が作ってくれないかな〜。流石に無理か…



「総一郎お兄ちゃん!このカヌレ食べて元気出して!」

「うん?カヌレ?」

「雛菊達が一生懸命作ったんだよ〜これ食べたら雛菊幸せな気持ちになったから、食べてみて!」

「〜っ!雛菊は良い子だなぁ!」

「紫お姉ちゃんのもあるよ!」



 総一郎さんが目をうるうるさせながら雛菊が差し出しているカヌレをそっと受け取り、袋の丁寧に取って、ゼンさん同様躊躇なく口に放り込んだ。

 ヤクザって躊躇う事ないのかな?



「何っだこれ!美味っ!紫も食べてみろよ!」

「はいはい、頂きます。っ!美味しい、この外はカリカリなのに中がフワフワなのがクセになりますね!」

「だろ?これならいくらでも食えるな」



 紫さんも躊躇ないのか、流石組長の奥さんだな〜

それか総一郎さんが最初に食べてもう毒味は済んでるから食べたか。



「まーま!ちょうだい〜!」

「う〜ん、和花にはまだ早いかな?お酒が入ってるから食べられないのよ?」

「やぁ〜!」

「和花ちゃん!カヌレは食べれないけど、プリンを作ってきたよ?食べる?」

「たべるー!」



 カヌレが食べれないことに泣いていた和花ちゃんが雛菊が差し出したプリンを見た瞬間涙がまだ残っている目を細めて満面の笑みになった。



「和花おいしい?」

「おいちー!」

「良かった!」

「赤ちゃん用に作ってるから体にも良いよ!」

「そうなのか?良く出来てんなぁ」

「2人ともありがとね!今度作り方教えてもらっても良い?」

「もちろん!」

「一緒に作ろ〜!」



 紫さんとお菓子作りなんて雛菊楽しみすぎて毎日紫さんにいつ作るか聞きに来そう。止める材料用意しとかなきゃ。



「雛菊ちゃん達はお菓子作りが好きなの?」

「好き!本を見てイメージトレーニングしてたの!だから作ったのは初めて!」

「柊も初めてで上手くいって良かった!」

「初めてでこの出来はすごいな」

「でしょ〜!」

「料理長達が手伝ってくれたから上手く出来た!」

「アイツらも一枚噛んでんのか。これまた作ってくれ」

「喜んで!」

「いくつでも作るよ!」


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