20話
その日の朝、いつもの様に広間でご飯を食べていると総一郎さんが少し慌てた様子で話しかけて来た。
「雛菊、柊。昨日手術が終わって疲れてるとこ悪いんだか、あいつの裁判が急遽早まって今日になったんだ。行けそうか?」
「雛菊は全然大丈夫だよ!」
「柊も平気!」
「悪いな、まぁ裁判って言っても判決は決まってる様なもんで、罪状読み上げて判決言って終わりみたいなもんだから、気楽にな!じゃあ行くぞ」
そういうと総一郎さんは私達と車に乗り込んだ。
車の中には運転席に海斗さん、助手席に健剛さん、私達と総一郎さんが乗る予定の後部座席には日翔さんが既に乗っていた。
「みんなで行くの?」
「そうだよ?僕達は総一郎様の側近だからね」
「そうだった!でもちょっと狭いね!」
「しょうがないでしょ?裁判が急遽今日になったんだから、今これしか車無いのよ我慢しなさい」
「それにぃ〜狭いの後ろだけだしねぇ〜」
この世界の法律的にこの乗り方は有りなのか?
体感で40分くらい車に乗って着いたのはオレンジと白を基調にした暖かみのある、ドデカイお城だった。
「凄い、大きいね!」
「綺麗なお城だね!」
「でしょ〜?僕もここ大好きなんだよね〜」
「無駄話してないで行くわよ」
「は〜い」
急ぐという事で私は総一郎さん、雛菊は海斗さんに抱えられて移動した。
「それにしても王の奴も勝手だよなぁ〜こっちにだって都合っつうもんがあんのに」
「しょうがないですよ、あの犯罪者が急に体調不良になったんですから」
「え!施設長病気なの?」
「ううん、そういう訳じゃ無いみたいだよ?少し体調を崩してるだけなんだけどね」
「原因がわかんないんだって〜」
「分からない?」
日翔さんの話曰く、王都内の医者の殆どに見せたのだが原因不明。
精神的な物から来るものでは無いかと言われているらしく、このまま死なれてはたまったものでは無いと急遽裁判が決まったらしい。
「着きました、2人ともくれぐれも証言する時以外は騒がない様に」
「分かった!」
「了解!」
健剛さんは私達を怪訝そうな顔で見ながら、扉を開けた。
「被告人ローグ・カラミティ。貴方の罪状を読み上げます。人身売買、脅迫、人権侵害並びに殺害、以上の事に何か意義はありますか?」
「あります!私は全てやっておりません!」
「私の手元に証拠があるんです、全てやってないは嘘ですね」
「っ!」
施設長って本名そんな名前だったんだ。
今の今まで知らなかった。
家名があるってことは貴族なのか、それとも没落したけど過去の栄光に囚われた哀れな人か。
「施設長どうなっちゃうのかな?」
「う〜ん、このまま行けば終身刑とかじゃ無い?罪が多いし、エグいこといっぱいしてるからね」
「そうなんだ〜!」
「2人とも何話してるの?」
「「ううん!何にも!」」
日本とは法律が違うだろうし、最悪死刑とかもあり得るかも知れないね。
「ここで証人にお越しいただいた。証人は前へ」
「「はーい!」」
私と雛菊が元気よく返事をして前へ出るとその場が少しどよめく。
「まだ子供じゃ無いか」
「あんな子供に証言なんてできるのか?」
「長い間監禁されて居た子達の様だしローグに丸め込まれてしまうんじゃ無いのか?」
「っ!…雛菊!柊!」
少し騒がしくなった会場の中から施設長の期待を含んだ声が小さく聞こえた。
「証人の2人は施設で見た事を話して下さい」
「柊が見たのは、色んな人が遠くに行っちゃうって書いてある紙だったよ!色々な国が書いてあったけど、大員数買ってた国はディオナスって国だったよ!」
「う〜ん、雛菊が見たのは、銃の事が書かれてあったよ!ディオナスって所にいっぱい売ったって書いてあった!」
雛菊と柊が言った事に周りがザワザワとした。
「ディオナスって……」
「ディオナス教国の事だよな」
「人や銃なんて集めて、戦争でも始めるつもりなのか?」
「どちらにしろローグがやった事は大罪だな」
「静粛に」
宰相の一言でザワザワして居た会場が静まり返った。
「確かにディオナス教国に銃と人を売ったと書いてあったのですね?」
「はい!」
「書いてありました!」
「そんな子供に…文字が読めるわけありません!周りの奴に言えと…命令されているに…違いない!」
施設長は顔色を悪くしながら、息も絶え絶えに反論した。
「柊、文字読めるよ!本だって1人で読める!」
「雛菊もちょっとだけなら読めるよ!」
「うるさい!…口答えを…するな!」
「では、本当に文字が読めるのか試してみましょうか?」
そういうと宰相さんは一枚の紙を取り出し、何やら書くと私達2人にその紙を見せた。
「これを読めますか?」
「「美味しい料理を食べたいですか…?……食べたい!」」
「ふふ、良く読めましたね」
「そ、そんなの!事前に教えておけばどうとでもなるだろう!」
「往生際の悪い、それなら貴方が書いた物をあの子達に読ませれば良い。どうぞ?」
宰相は施設長に紙とペンを渡しました。
「どうせ教えて居たんだ…私は文字など教えて居ない…読めるはずがない…だからアイツらを手伝わせて居たんだ…」
施設長は誰にも聞こえない声でブツブツの何かを言っている。
「これは…読めまい!」
「私達は死に損ないのゴミです!」
「…私は死に損ないのゴミです!」
「よ、読めるのか…」
「ッ!」
「あの野郎…」
「この状況でまだ調子に乗ってる様ですね」
私の事は良いにしても雛菊の事を悪く言うのは許さない。
昔からイライラさせてくれるな。
「はぁ、なんてものを読ませているのですか」
「あ、こっこれは!読めないと思っていたからで…」
「反省しているなら多少の減刑も考えようかと思って居ましたが、全く反省の色が見えませんね?とても残念です」
「そっそんな!待って下さ…ゴホッゴホッ!」
施設長が宰相に訴えかけようと声を荒げた瞬間、施設長は咳き込み始め最終的に血を吐いてしまった。
「施設長、そんなに病気悪かったのかな?」
「ね、これは酷いね」
血を吐く施設長に王や宰相達は容赦なく判決を下す。
「この度の裁判の結果、被告人に反省の色なし、よって死刑を言い渡す」
「そ、そんな!」
「まぁ、死刑になる前に死んでしまいそうですけどね」
「こうなったら、お前達全員道連れにして死んでやる!」
そういうと施設長は口を大きく開けてガチっと歯を噛んだ。
しかし何も起きず、施設長は動揺し始める。
「ど、どういう事だ!何故死なない!」
「貴方は何を言っているんですか?」
もしかして、私達の体に入っていたマイクロチップで何かしようとした?
「王、発言してもよろしいでしょうか?」
「総一郎か、発言を許可しよう」
王が許可を出すと総一郎さんは私たちの隣にやって来て、袋に入ったマイクロチップを出した。
「それは何だ?」
「これはコイツが居た施設で売買されていた人間の頭に埋め込まれていたマイクロチップだ。居場所が分かる機能と遠隔操作が出来る様になっていた」
「なるほど…遠隔操作か、」
王は総一郎さんの説明で全て理解したのか、施設長の方を睨みつける。
「つまり、お前が何故死なないのか疑問に思ったのは、そのマイクロチップに何か殺せる機能が付いているという事か」
「そ、それは…」
「偽証をすれば即座に死刑だぞ?」
「うぐっ!」
冷たい顔をした王様に施設長が顔を白くしている。
「わ、私は…わたしは……」
追い詰められたからなのか施設長は俯いてブツブツと何か言っていて、フラフラと私たちの方に歩いて来る。
私は咄嗟に雛菊の前に出て施設長から隠すと寄って来た施設長に肩を掴まれ縋られる。
「雛菊、柊助けてくれ…私はお前らに優しくして来ただろ?ーーー頼む、助けてくれ」
「優しくはしてくれたね!」
「確かに、優しかったね!」
「なら!」
「でも悪い事したんでしょ?」
「悪い事したらごめんなさいしなきゃダメだよ!」
私と雛菊は満面の笑みで私の肩にある施設長の手を退けた。
「私は悪い事なんてしていないんだよ、父親に酷い事をされていたお前達を助けたくて、施設に連れていったんだよ?」
「そうなの?」
「そうだよ?他の人達もみんな酷い目にあっていたんだ。みんな私を頼ってくれたから保護していただけなんだ」
「う〜ん?でも、コウくんと結ちゃんの事殺したの施設長でしょ?」
「え、何故それを……」
私が幸太郎さんと結さんの事を聞くと目を見開いて、唖然としていた。
「だって幸太郎と女を見つけて殺せー!って大きな声で言ってたし!」
「男の人と女の人の死体見て大人しく言うこと聞いてればこんな事にならなかったのになって言ってたでしょ?」
「あ、あれは幸太郎じゃ無いんだ、あれは別の人間で…」
「そうなの?でも」
「「コウくんと結ちゃんじゃなくても殺したのは事実だからやっぱり罪は償わなきゃね!」」
私達が満面の笑みで言うと施設長は力が抜けた様に座り込んだ。
もう戦闘不能?
もうちょっと粘っても良さそうだけどな?
「雛菊、柊はもう下がって良いぞ。貴重な証言をありがとう」
「はーい!」
「失礼しまーす!」
私達が自分たちの席についた後は宰相さんと王様が罪状を読み上げ、総一郎さんの証言もあり正式に死刑が決まった。




