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シオンの涙雲  作者: 居鳥虎落
第1章
12/30

12話

 柊達が声が聞こえた方を見るとコック帽を被った熊みたいな大男が立っていた。

 熊親父だ、しかも髭もじゃ。



「お前らあれだろ!例の双子だろ!?いや〜会いたかったんだよ!まさかここで会えるとは、俺ってついてるな!海斗から聞いてて自分の肉眼で見て見たかったんだよ〜それにしても、聞いてた通りちっこくて可愛いなぁ!俺の娘も……」

「はいはい!やめてあげてください。料理長のマシンガントークのせいで双子ちゃん固まってるじゃないですか」



 髭もじゃ熊親父こと料理長のマシンガントークに為す術もなく、2人で固まっていると奥の方から、20代前半くらいの男性が救世主かの如く現れ、料理長を止めてくれた。



「ごめんね、怖かったでしょ?でも、怖いのは見た目だけで悪い人では無いから!許してあげて?」

「俺はお前の子供か!」

「貴方みたいな子供は要らない」



 マシンガントークの次は男2人の夫婦漫才見させられてる気分だ。



「大丈夫だよ!ちょっとビックリしただけ!」

「クマさんみたいでカッコいい!」

「料理長の姿を見てカッコいいなんて…」

「中々度胸ある双子だな!」

「雛菊と柊だよ!」

「そりゃ悪かった!俺は銀次郎ぎんじろうだ!」

「僕は文哉ふみやだよ」

「「よろしくね〜」」

「双子ってマジでハモるのな!」



 料理長は機嫌が良さそうに笑うとオーブンの方に行き、何か小さい物を両手に持って戻って来る。



「ほれ!これ食いな、美味いぞ!」

「ありがとー!」

「美味しそう!」



 料理長が持って来たのは、小さなカップケーキでした。

 美味しそうなカップケーキを口に運ぶと口の中に優しい甘味と僅かな苦味が広がり、久しぶりのスイーツに脳から幸せな物質が出ている事が簡単に分かりました。



「おいしー!」

「美味しい…」

「そんな旨そうに食ってくれるなんて嬉しいね〜」

「作った甲斐がありますね」

「…ロリの幸せそうな顔たまらん」



 ん?久しぶりのスイーツにテンション上がってたけど、今変態居たか?

 ロリコンが喜んだ声がした。



「おい変態。この子達を視界に映すんじゃねぇ、視界にも入んな」

「文哉さんの鬼畜!ロリ観察は僕の唯一の生き甲斐なのに!」

「僕に殴られたくなかったら、今すぐ仕事に戻れ」

「ひぃぃぃぃ!ただいま戻ります!失礼しました!」

「全く、変態が」

「良いじゃねぇか!変態は面白くて好きだぞ!」

「実害のある変態は面白くありません」



 それってつまり実害が無ければ面白いって事だよね?

 まぁ、私も変態は面白くて好きですよ。

 突拍子も無い事するところとか、気持ち悪い事をさも当然の様に言うところとか、見てて飽きないよね。



「丁度、飯出来たから先広間行ってな!」

「運ぶの手伝う!」

「重いのは無理だけど、箸とか取り皿なら持ってけるよ!」

「良い子だ…」

「じゃ!手伝ってもらうか、あそこに置いてある小物を頼む!」

「「アイアイサー!」」

「がわいいぃぃぃぃ」

「仕事しろ」

「すいませんしたぁぁぁ!」



 あの変態うるさいタイプの変態だな。




「あれ?雛菊ちゃん達お手伝いしてるの?」

「うん!小さいのなら運んでも良いって!」

「柊達体小さくて、大きいの持てないから、これだけ!」

「手伝うだけ偉いぞ〜中には食い物ら運ばれて来るのが当たり前って思ってる奴も居るからな!」

「何それ〜」

「「そんな訳ないのにね〜」」



 ご飯作って感謝して欲しいと思った事ないけど、それって大切な人に作ってるから何だよね〜

 姉さん達いつもありがとって言ってくれてたし。



「雛菊達は実さんの隣だ」

「「分かった!」」

「雛菊、柊!こっちだ」

「「お邪魔します!」」

「今日は人がいっぺんに増えたからご馳走だそー!」

「そうなの?」

「美味しそう!」



 実さんの言う通り、長テーブルの上には溢れんばかりの料理が並んでいた。

 さっき調理場で見た時は普通の量だと思ってたけど、テーブルに並べると多いのが良く分かるな。


 ん?あっ、あれは!



「お寿司だ!」

「ケーキもある!」

「ふふっ、お2人が食べたいと仰っていたので、料理長に作って頂きました」

「ふぁ〜!瑞生お兄ちゃんありがと!」

「ありがとう!」

「いえいえ、お礼なら料理長に言ってあげて下さい」

「「うん!いただきます!」」


 私と雛菊はお腹がはち切れそうになるまで食べた。



「飯食ったら風呂入れよ?」

「「はーい!」」



 お風呂は大浴場になっており、男湯女湯で分かれていた。

 ヤクザ組織は男除隊ということもあり女湯は施設の女性しか居なかった。



「柊ちゃん、お薬ちゃんと持って来た?」

「クルミさん!うん!持って来たよ?いつもみたいに塗るの手伝ってくれる?」

「勿論!むしろ手伝わせて欲しい!」

「雛菊も手伝う!」

「2人ともありがとう!」



 お風呂から出ると誰が用意してくれたのか、新品の動物が書かれた寝巻きが置いてあり、元々着ていた真っ白なワンピースの施設着は回収されていた。



「このパジャマ柔らかくて気持ちいい!」

「本当にね!安眠出来そう」

「私達のも新しいのに変わってるよ」

「本当だ。何から何まで至れり尽くせりね〜」



 クルミさん達の施設着も回収されていて大人用の落ち着いた雰囲気の寝巻きに変わっていた。





「ご飯おいしかったね」

「いっぱい食べたね!ケーキも美味しくて、お風呂も最高だった!」

「ここは天国だね

「お母さんにも食べさせてあげたいな」

「そうだね、雛菊はお母さんに会いたい?」

「もちろん、会いたいよ!」

「明日、保弘さん達にお願いしてみよっか」

「それ良いね!探してくれると良いなぁ〜」

「探してくれるよ。今日はもう遅いし寝よ!」

「そうだね!柊おやすみ〜」

「おやすみ」



 今日は濃い1日だったな、色んな人に出会って、こんなに気疲れしたのは久しぶりかも。

 屋根のしっかりした家で、新品の寝巻き着て、ふかふかの柔らかい布団に包まれて寝れるなんて幸せ。

 何より雛菊が嬉しそうに寝てるのが私も嬉しい。

 この幸せが出来るだけ長く続くと良いな。





「どういうことだよ!?アイツの組織が壊滅?俺の金はどうなんだよ!!あのガキが売れたら、俺にも分け前くれるって言うから、今まで何言われても我慢してやったのに!!!……俺にとってあのガキは金の卵なんだ!多少傷ついてもお釣りが来るガキだ、どんな手を使ってでも取り戻す!待ってろ!あはははははははは!!!!」


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