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大蜈蚣を討つもの

決着がつき、荒れた大地に立っているのは僕達のみとなった。

 防御陣地の方はこちらの戦闘が終結したと見るや、陸上艦が動き出した。


 こちらに向かって来るかと思いきや、全滅した味方に目もくれず一目散に撤退して行く。


『終わったな。』


 ベインさんがそう呟いた。


 この戦いは、僕が着任してから4時間で終結した。


「なんだか呆気なかったですね。」


『フッ、それはお前が全て片付けてしまったからな。』


 ベインさんが大声で笑う。

 僕は暗黒騎士としての初陣を、あまり実感の無いまま終わらせてしまったようだ。


『まぁ良い、全機帰投だ。野戦陣地を片付けて前線基地まで戻るぞ。』


『了解です。ユミア卿、おかげで楽に終わりました。ありがとうございます。』


 カローク小隊長にお礼を言われたけど、僕は頭を掻くしかなかった。



「ふぅ、これで帝都に帰還出来るな。」


 野戦陣地の物資を軽巡航艦に積み終わり、一息ついてからベインさんがそう言った。


「そう言えば、ベインさんはガーランド卿とご婚約されてるんでしたね。」


「ん? ああそうだが。それがどうした?」


「いえ、なんだか帰還出来るのが嬉しそうだったので、それが理由かなと。」


 そう言うと、ベインさんは後頭部に手を置いて上を見上げた。

 なんとなく照れているのかもしれない。


「参ったな、態度に出ていたか。まぁその通りだ。今の俺は愛の為に生き、愛の為に戦っている。愛する女性とこの帝国を護る為なら、俺は何処まででも強くなれる。」


 思いっきり惚気ているけれど、彼が掲げる握り拳は素晴らしく力強かった。


 そして、彼の言葉には共感出来た。

 僕にも愛する女性(ひと)がいるのだから。


「そうですね。愛の為ならどこまでも戦えますね。」


「リコス、お前にも理解(わか)るか。ならば俺が教えるまでもなく、もう立派に一廉の暗黒騎士だ。」


「ありがとうございます。」


 ベインさんが突き出した拳に僕も拳を合わせ、2人して笑った。


 軽巡航艦に乗り込み、動き出した窓の外の風景をぼんやりと眺めてたら、ベインさんとガーランド卿の事を考えていた。


 結局、どんな相手とどんな戦いをしても、ベインさんを討ち取れたのはガーランド卿だけなんだろうな。

 あのベインさんが首ったけになったのだから、2人の間にどんなドラマがあったのだろうか。


 そんな益もない事を思いながら、僕自身も彼女に討ち取れたんだと、これまた益もない事を考えた。


 あぁ、早く帝都に戻ってエミリさんに会いたいな。

 僕も彼女との愛と約束の為に、もっともっと強くなろう。


 帝国を護る事が、僕の贖罪の道でもあるのだから。

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