オマケ2 作戦報告書その後
「おはようございます、ヴァーノン卿。コーデリア卿より、戦闘装備一式にて執務室へ出頭するようにと言付かっております。」
「そうかい、ありがとう。」
帝国統括騎士會に出署するなり、受付嬢からそう告げられた。
戦闘装備一式でとは妙ではあったが、さて、なにか勅命でも下ったのかとヴァレンタイン・ヴァーノンは、取り急ぎ装備を整えてカトリーヌ・コーデリアの執務室へと向かった。
コーデリアの執務室は三階にある。
扉の前で身なりをもう一度確認して、扉をノックする。
「ヴァレンタイン・ヴァーノン、参上しました。」
『開いています、お入りなさい。』
返事を聞いてから扉を開けて、飛び込んで来たのは執務机の前で正座しているフルプレートアーマーの大男の背中だった。
帝国統括騎士會でも全身フルプレートの大男はたったの二人だけ、ベイン・イルフート卿とフギン卿だ。
その内の一人であるベインが、正座している、床に。
その光景にヴァーノンは硬直してしまった。
「ヴァーノン卿、お入りなさい。」
「……失礼します。何事ですか?」
「まずは説明をする前に、貴方もそこへ正座をなさい。」
「……へ?」
「正座です。」
「え、いや…。」
「聞こえませんでしたか? 正座です。」
「………はい。」
訳も分からずベインの隣に正座させられたヴァーノン。
「さてイルフート卿、作戦報告書の提出期限は昨日まででしたが間に合いませんでしたね。」
「コーデリア卿、報告書ならちゃんと作成して……」
「作った作ってないかではなく、期限までに提出出来なかった事を問題にしています。」
ベインはグッと声を漏らす。
それでヴァーノンは察した。
「……なんで私まで……」
「それからヴァーノン卿、らしくないですね。手を出したのなら最後まで確認を怠ってはいけないと、師父から教わっていたでしょう。」
「確かに……面目無い。」
コーデリアの言葉にヴァーノンも納得する。
「申し訳ない、期限を遵守するよう努力する。」
ベインも反省の言葉を口にし、頭を垂れた。
「二人とも反省したのなら良いでしょう。あと3時間したら帰ってよろしい。」
このあと重装備のまま床に3時間正座させられた二人は、解放された後に酒場へと繰り出した。
……飲まなきゃやってられない気分になってしまったから。
なお、ヴァーノンはベインから、シルヴィアからも報告書の提出遅れについて叱責された事への愚痴を聞かされる羽目になり、尚の事やってられない気分に陥ったのである。




