オマケ:作戦報告書
作戦報告書:完了
「イルフート卿、それは流石に……。」
「?、なにも問題ないだろう。」
ベインの書いた作戦報告書をチラ見したヴァーノンはついツッコんでしまった。
「いやいや、いくらなんでも簡潔に過ぎる。」
「長々と書き連ねるのは好かん。」
ヴァーノンは頭を抱えそうになった。
自分がベインと一緒に参加した作戦では無いので、本来なら口を挟む謂れもない事ではあったのだが……。
さりとて、これはあまりにも酷い。
一切、報告書の体をなしていないのだから、酷過ぎる。
「好き嫌いの問題じゃ無いでしょうに。このまま提出したらコーデリア女史に殴られるよ、確実に。」
「むぅ。」
コーデリア女史……暗黒騎士カトリーヌ・コーデリア卿 (51)は帝国統括騎士會の現役代表の一人で、その見た目や立ち振る舞いは淑女そのものであり、女性暗黒騎士全ての見本とも言えるほど、優れた婦人である。
ただ、現在では年齢ゆえに第一線に姿を現す事は無いものの、数々の伝説や異名を賜った、言い方は悪いが怪物と言っても差し支えない女傑なのだ。
あのクリストフ・シークヴァルド卿の師匠であり、唯一頭の上がらない人物でもある。
「イルフート卿、仮にも報告書なんだから、せめて作戦の日時と所要時間、戦果と被害くらいは書いとかないと報告書にならないよ。」
「面倒だな、代わってくれ。」
「私が参加した作戦じゃ無いんだから、どうしたのか知りようが無いでしょうが。」
その後もベインはぶつぶつと文句を垂れていたが、ヴァーノンが隣であれよこれよと手伝って、どうにか最低限は要件を満たした報告書を作成出来たのである。
「ふぅ、悪かったな。詫びに一杯奢らせてくれ。」
「やれやれ、まぁ良いでしょ。ちょっと行ってみたい店を見つけたんですよ。」
そのまま男二人で連れ立って、酒場へと繰り出した。
報告書の提出を忘れて……。




