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レスクヴァ奪還作戦発動

 聖華暦835年3月8日 3時25分


 作戦開始5分前、俺たちは暗黒騎士三名と一緒に、緊張の面持ちでカリギュラ級重巡航艦の艦橋にいる。

 いよいよ大きな作戦が始まる。

 否が応でも緊張感と高揚感が高まってゆく。


『作戦開始を前に、総司令官ガンギーン・フォン・ラズール上級大将のお言葉を伝える。』


 出撃準備を終えて号令を待つばかりの艦橋に、旗艦プラチナム・ラズールからの通信が響き渡る。


『我ら帝国に忠誠を誓う同士諸君、諸君らはこの神聖にして崇高なる任務の為に選ばれた精鋭である。諸君らはこの任務にその全身全霊を持って臨んで欲しい。この任務はただの任務では無い。これは崇高なる使命である! 我が帝国へ挑戦を続ける悪き聖王国への断罪の鉄槌である! かの罪人どもを正々堂々討ち果たし、捻じ伏せ、ひれ伏させよ! 諸君ら一人一人の死力を尽くし、必ずやかの罪人どもを追い払い、レスクヴァ要塞を奪還するのだ! 我らにはそれが出来る! 今作戦総司令官たるガンギーン・フォン・ラズールが宣言しよう、我らは必ず勝利する! 我が旗について来るが良い! 以上、総司令官からの御言葉である、皆、肝に銘じよ!』


 ブツリ、と通信が切れる。


「長々と御託を並べおって、作戦開始が2分遅れたぞ。」


「まあまあ。」


 またもイルフート卿が苛立ちを吐き出す。


「これより発艦します。微速前進。」

「了解、微速前進。」


 ガーランド艦長の号令のもと、俺たちの搭乗するカリギュラ級重巡航艦が動き出す。

 ここから先は死地である戦場。

 取り戻すべき失地。

 敵たる聖王国軍が待ち受けるレスクヴァ要塞だ。


 もはや後戻りは出来ない。

 もとよりそんな選択肢は無い。


 師匠と共に幾多の戦場に赴いた事はある。

 聖王国との国境での小競り合いも経験した。

 けれど、この戦いはこれまでのどの戦いよりも遥かに規模が大きい。


 果たして生きて帰る事が出来るか?

 敵に勝利し、失ったレスクヴァ要塞を奪還出来るか?


 今からそれを心配しても詮無い事だ。

 俺は俺の使命を果たすのみ。

 そして本物の暗黒騎士になる為に、この戦いで更なる高みへ昇る為に、死力を尽くし、敵を討つ。


 城塞都市アミデューラから続々と陸上艦が発艦して行き、ほどなくして大艦隊が形成された。

 参加艦艇総勢81隻、機兵総勢234機、従機総勢208台、参加人員15000人。


 世界の端から光が滲み出て、少しずつ空が白じんで来るほどに、集結した部隊の全貌が浮かび上がって来る。

 これほどに帝国軍が集結した様を、俺はこれまで見た事が無い。


 言いようのない感動が込み上げる。

 これほどの大部隊、これほどの大艦隊、これほどの大作戦、今この場に居合わせる事が出来た俺はとても幸せだ。


 ああ、ワクワクして来た。

 自分が昂っているのがわかる。


 俺だけでは無かった。

 素顔を見せないフギン卿も、イラついた態度しか見せなかったイルフート卿も、普段は柔和に微笑んでいるハーティス卿も、ガーランド艦長も、ハンフリーとキンバリーも、この壮大で勇壮な光景に興奮を禁じ得ない。


 ここに集まった者達は英雄だ。

 彼らは皆帝国の為、故郷の為、家族の為、愛する者を守る為、一つの目的の為に集結した勇士達。


 俺も、その一人だ。


 どうだリコス、羨ましいか?

 俺はこの戦いで戦果を上げて生き残り、今とは比べ物にならないくらいに経験を積んで強くなる。


 お前がどんなに努力しても追いつけない場所へ俺は進む。


 精々取り残されないように、しっかり追い掛けて来い。


 高みへ昇って、待っているぞ。


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