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帝都への帰路

 ヤークトフント隊が合流したおかげで鋼魔獣を掃討するペースは大幅に上がり、30分かからずにこの場の鋼魔獣は殲滅できた。


 周囲を警戒して安全が確認されると、僕達はようやく一息つく事ができた。


 僕とアンヴァーク卿はどちらも機兵から降り、直に顔を合わせた。


「さて、改めて久しぶりだね、リコス。……あぁ、今は我が同輩、ユミア卿と呼ぶべきであるな。」


「いえ、まだまだ新米ですから。」


「何を言う、君の初陣は聞き及んでいるよ。クルセイダー3騎と機兵1個中隊を単騎で壊滅させたのは、素晴らしい戦果だとも。君は誇って良い。」


「ありがとうございます。」


 面と向かってそう言われると、少しこそばゆい感じがする。


『アンヴァーク卿、我々の損害は軽微です。ヤークトフント隊も合流しましたし、まだまだイケますが。』


 ルクス隊の隊長機がアンヴァーク卿に指示を仰ぐ。


「そうだね、ではリコス、周囲を遠視の魔眼で確認してくれるかね?」


「判りました。」


 僕は魔眼によって視界を遠くへと飛ばし、周辺をグルリと確認する。

 半径20kmの範囲には、少数の魔獣が確認できたものの、鋼魔獣の姿は確認できなかった。


「鋼魔獣は……確認できませんね。」


「そうか。ならば無理をせずに戻るとしよう。長居をして無駄に消耗するのは得策では無い。」


『了解しました。全機帰投の準備を行います。』


 ルクス隊隊長機は僕達に向けて敬礼し、すぐに各機に指示を飛ばした。


「ではリコス、積もる話は駐屯地に帰ってからだ。」


「ええ。」


 お互いに敬礼をして、再び機兵に搭乗する。

 この後は魔獣からも襲われることは無く、そのまま駐屯地まで一直線に帰投できた。


 *


 まずは駐屯地での一ヶ月の間に、鋼魔獣の大群は4回現れた。


 3回はアクロイとスポッターばかりだっけれど、ゲフィートとシノオクリトばかりの群も、1回だけあった。


 もっとも、どういうわけか奴らは自慢の長射程砲を使った遠距離からの攻撃をせずに、数十mまで接近しないと砲撃して来なかった。


 おかげで暗黒魔法エクリプス・ウォールを盾にして砲撃を凌ぎ、すんなりと近接戦へと持ち込む事ができた。

 接近すれば後は拍子抜けするほど一方的に撃破できて、思ったほどの損害も出ることはなく、実にあっさりと片付いたのだ。


 後は警戒の為にもう一ヶ月は駐屯地に滞在したけれど、もう鋼魔獣は現れなかったので、アメルハウザー中佐は大量発生期を過ぎたと判断した。


「お二人共、この2ヶ月の間、ありがとうございました。隊の損耗も少なく出来たのは、二人の御尽力あってのことと、御礼申し上げます。」


「なに、礼には及ばないとも。我ら暗黒騎士は帝国防衛を行うが至上の責務、いかな相手でも帝国と臣民を脅かす者在れば、何処へでも馳せ参じ討ち取るが使命である。それよりも、帝国を護る為に日夜その生命を賭す貴官達こそを、私は誇りに思う。」


 アンヴァーク卿はそう言って、アメルハウザー中佐に敬礼をした。

 僕もそれに習い、敬礼をする。


「帝国防衛の要である暗黒騎士のお一人に、そう言って頂けて、光栄の極みです。」


 アメルハウザー中佐はアンヴァーク卿に最大限の敬意を持って、敬礼を返した。


「では、短い期間で済まないが、我等は帝都へと帰還させて頂く。」


「中佐、オルトロスの今後の健闘と無事を願っています。」


「ありがとう、ユミア卿。私達も御二人の活躍を願っていますよ。」


 改めて僕達は敬礼し、オルトロスの部隊員が見送る中で陸上輸送艦に搭乗し、甲板で彼等に敬礼を返した。


 *


「アンヴァーク卿、お疲れ様でした。」


「リコス、君もだ。それにしても君は以前よりはるかに強くなったね。先達としては楽しみであり、追い越されまいか心配でもある。」


「それは過大評価ですよ。まだ諸先輩達からは学ぶ事が多いです。」


 アンヴァーク卿が目を細め、笑った……ような気がする。

 完全に鴉にしか見えない為、表情が凄く読みづらい。


「そうとも、その姿勢が大事なのだよ。学び続ける者は成長し続ける。謙虚に、貪欲に、幾人もの先達から学び続け、力を伸ばしたまえ。」


 アンヴァーク卿が右手を差し出す。


「はい。」


 僕もその手を握り、固く握手をした。


「ところでアンヴァーク卿、師匠……イディエル卿から帰還する時に伝えるように言われた言伝があります。『帝都に戻ったら、久しぶりに一杯付き合え。』と。」


「ほぅ、そうか。それは楽しみであるな。リコス、君も付き合いたまえ。」


「僕はまだお酒はあまり……。」


「なに、心配は要らないとも。酒を飲めずとも料理の素晴らしい店を知っているのだ。」


 帰還の途の間、アンヴァーク卿とは取り留めのない話や、幾つかの戦技について、教えを受けたのである。

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