4.祝賀会にて
「王家の皆様及び聖女様、ご入場です」
その声に促され、陛下と陛下にエスコートされている王妃様を先頭に王家のメンバーが粛々と会場入りする。陛下たちの後からわたくしが姿を現すと、会場の空気がざわりと揺れた気配がしたが、そこは貴族。すぐに元の静粛な空気が戻ってきたのだが、好奇の視線がさりげなくわたくしをエスコートする騎士団の正装に身を包んだ人物と、来賓エリアにいるリーナ王女をエスコートしている、これまた騎士団の正装に身を包んだ人物に交互に向けられている事が、扇の影から垣間見えた。ついでにドヤ顔のリーナ王女も。
その気持ちはわからないでもない。何故ならこのお二人はほぼ同じような背格好に金髪のよく似た男性だったからだ。
すっと陛下が前に出ると、さざ波の様に会場の人々が礼を取っていく。
「皆のもの、楽にせよ。あぁ、アシュリーは座って良いぞ」
礼から直った人々を前に、陛下のお言葉が続く。わたくしに着席許可を出した陛下のお言葉に、やはり一瞬会場が揺れるが、陛下のお言葉を聞く為会場は静寂に包まれた。
「今宵この良き日にこの場に集まれた事、嬉しく思う。既に聞き及んでいる者もいるかと思うが、今代の聖女殿が魔域の浄化に成功したことを我が名において報告しよう。今代聖女殿の尽力により、今後魔障や魔獣に悩まされずに済む日々を迎えられること、非常に嬉しく思う。
ついては、今代聖女殿及び『覚醒者』、聖女殿と浄化の旅を共にした者達に感謝を!」
そう力強く陛下が言い切られ、手を上げると、会場内は盛大な歓声と拍手に包まれた。
陛下が上げていた手をさっと一振りすると、歓声と拍手が止み静けさが訪れたが、先ほどまでとは異なり、どこか熱の入った雰囲気が会場内を包んでいる。
「では、皆のもの。このめでたき日、食事やダンスなど大いに夜会を楽しんでほしい。あぁ、王太子妃アシュリーは今宵着席したままで参加する。更に後程二つほど知らせることがある。では良い夜を過ごしてほしい」
そう改めて陛下が告げ着席すると、今度はざわりとした空気とぼそぼそとした話し声が聞こえてきた。内容としては、わたくしが着席している理由とわたくしをエスコートしている人物に関してだろうか。
「(王太子妃殿下はやはり体調が……。日中行われる予定だった婚礼の披露目も急遽取りやめたとか……)」
「(エスコートも……アシュリー妃の後ろに立たれている方は騎士服を召されている……?護衛騎士なのか?)」
「(それならセルジュ殿下はどちらに?)」
「(隣国の王女をエスコートされているあのお方は……。お二人が仲睦まじいと言う噂は……)」
「(今宵のアシュリー妃殿下のお召し物は普段とは雰囲気が異なりますのね)」
「(ですわね。胸元から流れるような碧の布地に胸元と裾に掛けて施された金糸の刺繍が素晴らしいですわ!)」
「(本当に素敵ですわねぇ。殿下の深いご寵愛を感じられますわね。それに先ほど着席される際ちらりと見えたお履き物は踵が低いものをお召しで……これはもしかして……)」
最後のご婦人、よく見てらっしゃる。みゃーちゃんと考えたエンパイアラインのドレスも好評のようだ。扇の影から読唇術で得た情報がこちらの思惑通りになっている事に概ね満足していると、どうやら茶番劇の準備が整ったらしい。
「……来たか」
背後に立っていた方の呟きに、会場の開けた部分、王族席と相対する場所に、騎士服を纏った金髪碧眼の男性にエスコートされたリーナ王女が進み出た。
「国王サマにおかれましてわぁ、お招きありがとうございます!」
あまりの所業にざわっと周囲に動揺が走った。
隣国の王族とは言え、あくまでも地位は王女。国王陛下に対して礼も取らずいきなり話しかけるなぞ、王女どころか淑女の風上にも置けない所業だ。
「ふむ。報告以上だな」
ぽつりと陛下が呆れたように呟くと、ふぅと一つため息をついてリーナ王女の相手をすることにしたようだ。面倒くさい役目を陛下にお任せしてしまって申し訳ない。
「……して、其方は?」
陛下からの最低限のお声がけにも満面の笑みを浮かべるリーナ王女に、周囲にはわかりやすく眉を顰める殿方や、扇を眼前まで広げ顔を隠すことによって不快感を表すご婦人の姿がちらほらと見える。
「ワタクシは隣国から来ました!第三王女のリーナです!今日は国王サマにお願いがあるのですわぁ」
わかりやすく胸の前で手を組んで、上目遣いを見せるリーナ王女に若干陛下が引き気味になるのがわかった。
リーナ王女の隣でエスコートを務めた騎士服の男性も微妙に正面の陛下から顔をずらし、無関係を装いたいのが見え見えだが、こちらは最後までお付き合いいただけなければならないのだ。
「……願いとは……?」
「はぁい!ワタクシをセルジュ殿下のお嫁さんにしてくださいませ!」
ぎしりと軋みを上げるほど、座っている椅子の背が握り締められるのがわかったが、ここはまだ序盤。落ち着かれるよう顔は前に向けたまま、そっと背後に己の手を伸ばし、椅子の背を握っている手を包み込むように重ねると、ふと力が抜けたのがわかった。
……が、それも一瞬の事であった。
「……生憎息子には最愛の妃がおってな。離縁してまで其方を迎える話は聞いた事がないのだが……」
「そんな!ワタクシとセルジュ殿下は愛し合っておりますの!それになんでもセルジュ殿下のお妃サマは浄化の旅でお身体を壊され、聖女サマでも癒せないとか……そんな方にはセルジュ殿下のお嫁さんは務まりませんわ!それに……言いたくはないのですが、ワタクシとセルジュ殿下が相思相愛なのを嫉妬して……ワタクシお妃サマから嫌がらせを受けましたの!!先日も『この泥棒猫!!』って罵られて……」
くすんと零れてもいない涙をぬぐう辺り、なかなか芸達者である。が、それよりわたくしは座っている椅子の背の悲鳴が先ほどから気になって仕方がない。ミシミシ言ってる。怖い……
それにしても彼女の人物像だと病弱なのに嫌がらせするとか、結構元気じゃないか?あと、彼女の発言、やっぱりどこか気になる……
「……ほぅ。其方とセルジュがそのような仲だったとは知らなんだ。そしてアシュリーは浄化の旅にて聖女殿でも癒せない不調を得たと思われているという事か。それは誠に……。
そこまで言うなら、其方に機会をやろう。其方の話が誠であると言うなら、この会場にいる相思相愛の相手とやらにこの場で問えばよかろう。さぁ、愛しい男に手を伸べてみよ」
ざわりと周囲の人間が揺れるが、リーナ王女は気づいているのかいないのか、満面の笑みを浮かべ、己をエスコートしていた人間と向き合い手を伸ばした。
「セルジュ殿下、ワタクシをお嫁さんにしてくださいませ!」
しーんとした空気が会場を包んだ。身じろぎ一つ出来ない程の静寂の中、周囲の人間はリーナ王女と手を差し伸ばされた男性へと注視する。
「ふっ」
ようやく硬直した空気を壊したのは、リーナ王女と相対していた男性の口から洩れた、嘲笑にも似たかすかな笑い声だった。
「なっ!」
「……国王陛下、この場でお時間をいただく事お許しいただけますか?」
「よかろう」
思っていた反応と異なる男性の答えにリーナ王女が焦る中、陛下への許可を取ると、騎士服姿の男性はリーナ王女からわずかに距離を取ると、口火を切った。
「まずは……、私の名はスレイ・カントール。伯爵家の者です。リーナ王女に置かれましては、名乗らせていただく機会もなかった為、ご挨拶が遅くなりましたこと、お詫び申し上げます」
「なっ?!アナタはセルジュ殿下ではないの?!騙したわね?!」
リーナ王女の頬が赤く染まり、わかりやすく怒気を示すが、自業自得なのだろう。スレイの台詞からも、立場上リーナ王女からのお声がけがなければ、名乗る事が出来なかったという最もな、でも嫌味を多分に含んだ、意図が見受けられた。
まぁ、本人に名乗る気があったのかという気もするが……
そう、普段はありきたりな茶髪に髪色を変え、厚めの前髪でその碧眼を隠し、トーマの横で気配を消し気味の護衛騎士スレイだが、その正体というか、主な仕事はセルジュ様の影武者である。
髪色を金髪の地毛に戻し、前髪を上げるとセルジュ様によく似た碧眼のイケメンが文字通り顔を出すのだ。
勿論セルジュ様の方がイケメンだが……これは惚れた欲目だけではないはずだ。うん。
何せスレイはセルジュ様のようなキラキラオーラを出せないし。
ちなみにスレイ、実はセルジュ様より十程年上なのだ。スレイが童顔なのかセルジュ様が老け……ゴホン。これ以上の思考は危険だと、茶番劇に意識を戻した。
「そんなまさか騙すなど……リーナ王女は隣国の王族であらせられる。一介の伯爵家出身の護衛騎士が図々しくも名乗りを上げるなど、とてもとても……。あ、あと求婚の件はお断りさせていただきます。私は護衛騎士として、セルジュ王太子殿下とアシュリー王太子妃殿下に忠誠を捧げておりますので……」
そう言ってにこりと微笑むスレイに、益々リーナ王女は顔を赤くした。多分怒りで。……怒りですわよね?スレイもなかなかのイケメンなので、うっかり微笑みにやられたわけでは無いですわよね?リーナ王女。
「アナタなんかと結婚なんてこっちから願い下げよ!ワタクシが結婚するのはセルジュ殿下よ!!国王サマ!そうですよね?!」
あ、良かった。怒りだったみたい。
「其方が求婚の為手を伸べた相手は間違いなく其方の目の前にいる男だったと思うのだがなぁ。なぁセルジュ」
最早飽きたのか、陛下が椅子に座って頬杖をついたまま、つまらなさそうにリーナ王女を眺めている。
「そのようですね。まぁ、私がアシュリーと離縁して、そちらの女性を娶るなんて言う事は世界がひっくり返ってもあり得ませんが。あ、あとスレイも優秀な護衛騎士ですので、手放す気もありませんね」
そうそっけなく答えるのは先ほどまでわたくしの椅子の背を粉砕しそうになっていたセルジュ様だ。
「そんな?!セルジュでんかぁ!ワタクシがこの国に来てから一緒に過ごした時間は偽りでしたの!?庭園でデートしたり、一緒にランチしたりしたではありませんか?!」
「……私が貴殿と過ごしたのは、一応隣国の王族としてアシュリーと招いた最初の茶会のみだが。まぁ、貴殿に媚薬を盛られそうになって、早々に退席したが……。それ以降貴殿のお相手は、全てそちらのスレイに任せていた。金髪碧眼の騎士がお好みだったのだろう?エスコート役としては良かったのではないか?……まさか、名乗らせる機会もないほど話が弾んでいるとは思わなかったが……」
媚薬発言に、固唾をのんで状況を見ていた方々がざわりと揺れる。
「(王太子殿下に媚薬を盛るなど……)」
「(なんと浅ましい……。隣国の陰謀か……?)」
「(それにしても、やはり殿下のご寵愛はアシュリー妃にありましたのね。今日も片時も離さず……)」
「(だが、アシュリー妃のご体調の件は……)」
ざわざわと揺れる会場に、陛下がすっと手を上げると、幾分ざわめきが小さくなった。
「さて、相思相愛とやらの件は其方の勘違いであったようだな。更に、我が国の王族に対して媚薬を盛った件、罪は重いぞ」
そう言ってリーナ王女を見つめる陛下の目は厳しい。
陛下の眼光に恐れをなしたのか、ぺたりと腰を落としたリーナ王女を支える者はもういない。
「そんな……そんな……。ここは乙……ムじゃないの?セル…殿下……攻…象じゃ……」
ぼそぼそとリーナ王女が何かを呟いているが、俯いているため何を言っているかまでは把握できない。だけど……もしかして……そこまで考えていると、トントンと肩を叩かれた。
振り返ると、みゃーちゃんが顔を近づけてきて囁いた。
みゃーちゃんが近づくと、会場側から強い視線を感じたが、今は無視する。
「(ねぇ、あーちゃん。彼女もしかしてさ……?さっきも泥棒猫って言ってたし。隣国の猫もこっちのと変わらないなら、猫は泥棒どころか山賊レベルだよね?)」
「(……猫についてはともかく、彼女もって言うのは確かでしょうね。ランチやデートって言葉も使ってらっしゃるし)」
リーナ王女との会話で感じた違和感。ちょくちょく挟まるこの世界の言葉ではなさそうなものに引っかかっていたようだ。『映え』とかこの国では聞いた事ないし。いや見た目はもちろん美味しく見えるように整えられているけど、それを『映え』とは表現しないのだ。
それに『泥棒猫』もこちらの言葉ではない。みゃーちゃんの言う通り、あの猫のサイズ感では泥棒というよりは強奪だろう。
みゃーちゃんと二人複雑な心境で顔を見合わせていると、陛下の厳しい声が響いた。
「しかも、其方は隣国の第三王女。これは我が国に対する宣戦布告とも取れるな……。今回こちらの好意で其方の滞在を許したが……かような事を企んでいた人間を滞在させたとは我が国の名折れ。この始末どうつけようか」
再び頬杖をつく姿勢に戻った陛下が思案に揺れる。
そこへ人波を割って出てくる女性が一人。言わずもがなルーイだ。
「それにつきましては、私ルイーサ・シュルツからご報告がございます故、お時間をいただきたく」
淑女の礼を取ると、ルーイのよく通る声が辺りに響いた。
「ふむ。其方は隣国の第二王女だったか。して、報告とは」
「まずは、我が兄バーレット・シュルツが新たに国王に即位した事、この場にてお知らせいたします。それに伴いまして、私も第二王女の地位を返上し、王妹としてこの場に立つことを合わせてご報告いたします」
ルーイの言葉に聴衆からは驚きの声があがる。
「ほう。それはめでたいな。バーレット国王とは良き隣人として過ごしたいものよ。しかしながら、バーレット殿が国王になったからと言って、其方らの妹ごの罪をなかったことには出来まい。恩赦をはかるにも限度がある故。それとも何か?リーナ王女の行動はそちらの意図すべきものであったというのか?」
陛下、事前に織り込み済みの茶番劇とはいえ、なかなか手厳しい。
「滅相もなく。しかしながら一つご報告させていただきますと、その者は第三王女を名乗っておりますが、我々王家の人間とは血のつながりの一切ない者でございます。私の目と、その者の目を見ていただければお分かりいただけるかと……」
「お、おねえさま!何を言ってますの!?ワタクシは!ワタクシは!」
腰を抜かしていたリーナ王女が、唖然とした表情でその碧の瞳をルーイに向けると、ルーイの紅眼が真っすぐリーナ王女を見つめた。
「我が国の王族の直系はね、リーナ。須らくして紅の瞳をもって生まれてくるのだよ。むしろこの瞳こそが王族としての証。それを持たない其方は……」
そこで言葉を切ると、再びルーイが陛下に向き直った。
「しかしながら、我が国の者がこちらの方々にご迷惑をおかけしたこともまた事実。彼の者には我が国で一番厳しい北の修道院にて己の罪を省みる機会をいただけますこと、お許しいただけますでしょうか?また、此度の件の賠償につきましては、我が国を通る際の関税の優遇にてご容赦いただきたく……」
そう言って深々と礼を取るルーイに、陛下は一つため息をつく。
「貴殿とバーレット殿のお気持ちは分かった。詳細は後程。一先ず、そちらの罪人は拘束するが、問題はないな?」
そう言って、陛下が手を振ると、控えていた騎士達がリーナ王女の両腕を拘束する。
ふうと息をついたルーイに寄り添うよう、お兄様が近づいていく。
「なんで?!なんで?!ここはワタクシの世界じゃないの?!ワタクシがヒロインじゃないの?!あっちには攻略対象っぽいイケメンがいなかったけど、この国にはいたから絶対そうだと思ってたのに!!やっぱり男爵令嬢じゃないとヒロインになれないの!?」
「そーじゃないと思うー」
ぼそりとみゃーちゃんのツッコミが冴えわたるが、激しく同意だ。というか、第三王女の地位で何故己がヒロインだと思い込めたのだろう。むしろそのポジション悪役令嬢ですわよね?
「大体おねえさまの後ろにいるイケメンも絶対攻略対象ぽいじゃない?!なんでワタクシの物にならないの?!ズルい!ズルいですわおねえさま!イケメンに腰を支えられるとか、そこはワタクシの場所よー!!!」
「ズルい妹キタコレ」
みゃーちゃんの台詞に、確かにWeb小説の流行りにあったなぁと、久しぶりに前世を思い出した。
だいぶ大騒ぎをしてたが、無事リーナ元王女が会場から退出していった。しかしながら、突然始まった寸劇のような展開に、周囲はまだざわめいている。
「祝賀の会でこのような余興は些か悪趣味であったな。本来の祝いの席に戻るためにも、ここは一つ、めでたい報告を二つほどいたそうか。まずは、ルイーサ王妹殿下、カルム公爵子息近くへ」
そう言って、陛下がルーイとお兄様を呼び寄せると、お二人は陛下に深く礼を取った後、会場の人々に向き合った。
「この度、隣国の王妹ルイーサ姫と、我が国の公爵家が子息カイン・カルムの婚約が成った事報告しよう。先のような騒ぎもあったが、仲睦まじい二人故、皆にも祝って欲しい」
そう陛下が告げると、会場は困惑に包まれたが、セルジュ様とわたくし、みゃーちゃんが率先して祝いの拍手を送ると、釣られたように拍手が鳴り響いた。そりゃまぁ、先ほどの茶番劇を見ていた人々からすると寝耳に水もいいところだろうから、困惑が強いのも致し方ないだろう。
しかしながら、ルーイは元々武姫として名高く、隣国からちょくちょく魔獣退治の応援にも来ていたので評判は良いのだ。恙なく受け入れられる事だろう。
さて、次はいよいよだ。
「さて、次であるが……。アシュリー少しなら大丈夫か?」
「もちろんでございます。少しは動きませんと……」
そう言って立ち上がるも、ひょいっとセルジュ様に抱きあげられた。
「……セルジュ様、聞いてらっしゃいます?少しは動かないと後々辛くなりますのよ?」
「今日は大人しく私の腕の中にいて」
そう言って頬を寄せてくるセルジュ様には逆らえない。
「あー、ごほん。見ての通り息子夫婦は人目を憚らず仲の良さを見せつけてくるが、それが結実してな。この度子に恵まれた。半年後には我が王家に新しい一員が増えるであろう。皆の者、この慶事を共に祝って欲しい!!」
呆れたような一瞥を陛下からいただくも、その後の陛下のお言葉に、わあっと会場内は歓声に包まれた。良かった。どうやら喜びをもって迎え入れられたらしい。
その後陛下と王妃様がファーストダンスを踊り、続いてルーイとお兄様、みゃーちゃんとトーマがダンスを踊っている。みゃーちゃんはダンスをこちらの世界に来てから習い始めたのだが、元々運動神経も良かったのですぐに踊れるようになり、今もトーマとくるくると楽しそうだ。
そして、そんな二人に強い視線を送る女性が一人。……どうやらトーマにはお仕置きが必要らしい。やれやれだ。
「没収七日というところでしょうか?」
扇の影でぽつりと呟くと、苦笑を浮かべたセルジュ様から返事が来た。
「使い物にならなくなると困るから、三日で勘弁してあげて」
「……向こうの出方次第ですわね。では、セルジュ様、わたくし少し離席いたしますわね」
「もちろん付いていくとも我が妃よ」
そう言って恭しく手を伸べるセルジュ様は、騎士服の正装と相まって物語に出てくる王子様のようだ。いや本当に王子様なのだけど。
それはともかく、わたくしのみゃーちゃんに手を出すこと、どれだけ罪深いのか、わかっていらっしゃるのかしら?ねぇ?マーガレット・コロンド伯爵令嬢?




