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転生令嬢は愛を捧ぐ  作者: ニノハラ リョウ
第一章 学苑編
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10.夜会にて その2

「色々誤解があるようですが、一つ一つ確認してまいりましょうか。まず、聖女様を不当に虐げていた件ですわね。酷い叱責とおっしゃいましたが、どのような内容でしたでしょうか?」


「大きな身振り手振りで話してはいけないとか、廊下は走らないとかですわ!」


 ……他者から改めて聞くと、前世の小学生にする注意ですわね。

 聖女様もそれに気づいたのか、目を泳がせている。


「……それは、恐らく淑女教育の一環ですわね。もちろん聖女様は異世界からお越しいただいた方ですので、こちらのマナーに合わせる必要はないのですが、郷に入ってはと申しますか…変に目立たない為にもわたくしの方で淑女のマナーをお伝えしているだけですわ。もちろん聖女様に無理強いしたことはございません」


「ごう……?」


「あ、アシュリーの言う通りです!確かに私は異世界から来たので、こちらのマナーを知りません!ですが、マナーとは本来他の方々を不快にさせないために必要なものです!郷に従えってことで、アシュリーに淑女教育をお願いしてました!間違いありません!」


「ごうって何だい?」


 セルジュ様が耳元でつぶやかれたので、返事をしようとするが、レイラ様が立ち直る方が早かった。


「訓練場で聖女様に剣や魔術を向けていたのは淑女教育ではございませんよね!淑女に剣は必要ありませんわ!」


「何言ってるんですか?一応私聖女らしいんで、今度魔域とやらに行くかもしれないんですよ?元の世界で武術とかの経験ないんで、剣術とか体術を教わってただけじゃないですか。必要ですよね?なんの備えもなく魔獣がうろうろしているところに行ったら、単なる足手まといじゃないですか!」


 うんうんとヘリオンと、会場を警備している騎士たちが頷くのが見えた。


「確かに護衛としては、護衛対象の方々を傷一つつけることなくお守りするのが使命ではありますが、お守りさせていただく方もある程度の技術を持っていらっしゃると生き残る確率が上がります。現に、国王陛下を始めとした尊き方々も一定以上の武術を修めていらっしゃる。その辺り聖女様はよくご理解いただいているので、お守りする甲斐もあり、嬉しく思います」


 唐突に表れたのはヘリオンの御父上で現騎士団長だった。


「それに淑女が剣技必要ないって本気で言ってます?私殿下から、高位貴族は男女関係なく魔獣討伐に参加するものだって聞いてますけど。それが貴族たる務めだと。なんでしたっけノブさんとオーベルジュ…?」


「ノブレス・オブリージュですわ聖女様」


 ノブさんとオーベルジュ行ってどうするつもりですか……というか、ノブさんてどなた?


「そうそれ!力のない無辜の民を守るのが貴族の役目だって言ってましたよ!淑女に剣は必要ないとか、殿下のお志と反してますよね!そもそもそのお志を理解して、戦うアシュリーだから、殿下はアシュリーが大好きなんですよ!」


 ぐふぅ。変なところでこちらに流れ弾が……すすすっと扇を持ち上げ、顔を隠すが、セルジュ様がゴキゲンでこちらを見ているのがわかる。


「ふふっ。聖女殿は私の気持ちを理解しているようだ。さて、レイラ嬢はどうかな?」


 一転して冷たい表情でレイラ様を見つめる。その視線に一瞬気圧されたが、素早く立て直したようだ。

 セルジュ様の冷凍視線を受けて立て直せるとは、なかなか根性がある。その根性、別の方向に生かせれば大成しただろうに。つくづく残念である。


「そ、それでは魔獣討伐に無理やり参加させたことはいかがですか?!泣きながら戦場を歩かれる聖女様を何人もの騎士達討伐参加者が目撃しているのよ!!」


「それも私がお願いしたことです!私まだ大した魔術も使えないんで、練習が必要なんですよ!ホントは足手まといになるのでついていかない方がいいんでしょうが、魔術の練習も兼ねて、討伐で怪我した人たちに治癒魔術の実験台になってもらってたんです!そりゃ、スプラッタとか苦手なんで、魔獣のグロいのとか見て涙目になりましたけど、それだって皆さんを守るため、アシュリーを始め騎士団の方たちが身体を張ってくれてるんだから、私だって!!グロいけど!!ホントグロいけど!!!」


 聖女様既に思い出し涙目。


「すぷらった?ぐろい?すぷらったって何だい?」


 再び、セルジュ様に問いかけられたので、答えようと口を開く。

 それにしてもセルジュ様。いちいち耳元でささやかないでほしい。耳が赤くなるのが自分でもわかる。


「スプラッタは…」


「聖女様のおっしゃる通りだ。聖女様はご自身の研鑽を積まれるため、魔獣討伐に参加されている。

 その甲斐あって、当初魔術は全くと言っていいほど使えなかったが、既に中級治癒魔術の使い手になられた。その結果、致命的な重傷を負うものが減り、皆感謝している。

 しかも聖女様の魔力量は膨大で、ほぼお一人で戦場の怪我人を癒すことが出来るのだ。それ故、魔術師団の魔術師達が、今まで治癒魔術の為に温存していた魔力を攻撃に転換することが出来、今までより早く魔獣を討伐できるようになったのだよ。さらに、聖女様は『浄化』のお力に目覚めつつある。その戦場での行い、まさに『聖女』の名にふさわしい」


 あの方はテオの御父上、現魔術師団長ですわね。ひねくれ者なので、あんなに全面で人をほめるのは珍しい事だ。よっぽど聖女様はお気に入りらしい。

 それにしても、騎士団長も魔術師団長もいつの間にいらしたのか。今日はヘリオンも卒業するため、御父上の騎士団長がいっらしゃることは可能性としてあるが、お二人とも長を務めているため、お忙しい。普段は優秀な部下に任せ、このような場所にいらっしゃることはあまりないのだが……はてさて。


「ぐぅ……」


 聖女様の窮地をお救いせんと、わたくしの糾弾を始めたのに、ほぼほぼ聖女様に論破されているレイラ様。

 今回レイラ様に流した情報は全部で6つ。マナーの件、訓練場の件、魔獣討伐の件、セルジュ様とのご関係、わたくしに関するとある噂、そしてこの夜会でセルジュ様から重大な発表がある件だ。

 既に3つ出てしまったが、残りにもうまく食いついてくれるか…そして、更なる大物が釣れれば、こちらの勝ちだ。


 そんなことを扇の影で考えていると、レイラ様に御父上であるナイトレイ侯爵が近づくのが見えた。そしてそっと何かをレイラ様に告げると、レイラ様は己を立て直したようだ。きっとこちらを見つめてくる。


「そ、それでは聖女様と殿下のご関係についてはどうなのですか!学苑のティールーム等で、殿下と聖女様が見つめ合っていたり、微笑みあっているのを見た方は一人や二人ではないですのよ!それは、殿下と聖女様が思い合っているからではないですか!なのに貴女は邪魔ばかり!今夜だって聖女様をエスコートしたかった殿下に無理言ってエスコートさせたのではないですか?!聖女様を殿下の護衛騎士に押し付けて!間近で思い合うお二人を引き離すことに罪悪感はないのですか!?」


 ……この方、セルジュ様の妃の座を狙っていたのではなかったかしら?

 中々見事な手の平返しっぷりに久しぶりのチベスナ顔になってしまう。

 さて、たまにはわたくしも反撃しないと。


「それは……」


「殿下と見つめ合ってるとかキモい事言うのやめてくれません!?」


 ……聖女様、キモいは流石に不敬罪。そしてわたくし先ほどから殆ど話すタイミングがないのですが。


「……きもいって?」


 三度セルジュ様に尋ねられますが、これはさすがに答えにくいので微妙な表情になってしまった。


「……アシュの顔を見る限り、あまりいい意味ではなさそうだね」


 こっそり話している間も聖女様のお言葉は続く。


「そもそも!どっからどう見たって殿下はアシュリーにメロメロのデロンデロンのフニャンフニャンじゃないですか!お二人でいるところなんて砂吐くどころか、角砂糖吐けますよ!それを見てわからないとか脳内お花畑すぎやしませんか?!

 それに、トーマ様のエスコートはこちらからお願いしたんです!トーマ様の滲みだす腹黒さ、肉体を包む程よい筋肉!これぞ策士系細マッチョの神髄!!この手につかまれるとかご褒美でしかない!!!」


 ……聖女様煩悩が駄々洩れです。


「……策士系はわかるけど、まっちょって何だい?」


「えーっと、鍛え上げられた筋肉をお持ちの殿方の事です」


 やっとまともにお答えすることが出来た。聖女様、興奮しているからか、元の世界のお言葉がちょこちょこ挟まる。


「ふぅん。聖女様はそういうのがお好みなのかな?そしたらヘリオンとかもおススメなんだけど」


「多分、ヘリオンは聖女様のお好みではないかと……」


「何故だい?筋肉ならヘリオンもなかなかだろう?」


「ヘリオンはちょっとのうき……いえ、策士系ではない…ので?」


 うっかり脳筋と言いそうになってしまい、聖女様のお言葉に釣られているのが自分でもよく分かる。


「ふーん、微妙な違いがあるんだねぇ。で、アシュは?私の身体、どう?」


 耳元から色を含んだ声色で吹き込まれる台詞に真っ赤になるのが自分でもよく分かった。


「ちょっとそこ!人が頑張ってるのに後ろでイチャイチャしない!!そもそもここはアシュリーの為に殿下がざまぁ返しする場面では!?あとヘリオン様は脳筋なので却下!!」


 ……聖女様、せっかくのわたくしの努力、水に流されましたね。脳筋て口に出さなかったのに。

 流れ弾に被弾した形のヘリオンが頭垂れるのが視界の端に移った。どうやら彼の方は地道な鍛錬を文句言わずこなす聖女様に、少なからず思いを寄せていたらしい。


「まぁ、どのような誤解があったかは知りませんし、知りたくもありませんが、殿下が我が妹に惚れているのは周知の事実ですね。えぇ、鬱陶しいほどに」


「……なんだか、カインの言葉に含みを感じるんだが…」


「我が妹が大事にされているのは見ていてよくわかるのですが、たまに行き過ぎているのを見ると、思うところあるのですよ。身内だけにね」


 ふん、と鼻を鳴らすお兄様。とりあえず、何だかごめんなさいお兄様。


「アシュが可愛いのが悪い!さて、アシュの可愛さは私が知っていればいいので良いとして。レイラ嬢、どうやらそなたの訴えは事実に反しているようだが、どうしようか?学苑内の行事とは言え、このような公の場でそのような世迷事を申したこと、どう始末をつけるつもりだ?」


 セルジュ様の冷たいまなざしが、レイラ様に、ひいては後ろにいるナイトレイ侯爵に向けられる。

 レイラ様は既に戦意を喪失されたのか、青ざめた顔で立っているのもやっとの体だ。

 それとは逆にナイトレイ侯爵にはまだ余裕が見える。さて、夜会が終わる頃その表情はどうなっているのだろうか。


 その時ナイトレイ侯爵が前へ出るのが見えた。


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― 新着の感想 ―
[一言] アシュカ様の頑張りざまぁ返しにスタンディングオベーションです アシュリーの脳内実況も面白い!
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