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心友殿無双から王太子親衛隊に不埒者を引き渡すまでが僕たちの仕事、後は殿下と王宮に投げつけて依頼者に話せる内容だけ話して幕引きにできる、そう思っていた時期が僕にもありました。
想定通りに動いたのは、王太子殿下の親衛隊に心友殿が打ちのめした相手を引き渡した時と、僕が破壊した瓦礫を協力して取り除き、隠し部屋を引き渡したまででした。
親衛隊以外は一度解散し、親衛隊も次の日に来ることになっている近衛に引き継ぎをしてこの事件は我々学生の手から離れるはずだったのです。
ジョン兄が総責任者として赴任してくるまではな!
殿下が卒業した後、王太子親衛隊を差配するために近衛で修行していると聞いてはいましたが、これだけの事件の後始末をできるほどの権限を与えられるとは聞いていなかったんですが?
その上、必要とあれば学生まで徴用できる権限を態々王宮から許可を貰ってきているとか想定外にも程があるんですけど?
ねえ、ジョン兄。何でそんな情報を拡散するようなことするの? これ、相当闇の深い案件よ? 僕、本格的には関わりたくなかったんですけど?
僕の心の声を平然と無視し、王太子殿下の指揮の下という大義名分をあっさり作り出し、王太子親衛隊を連れてきた近衛に交えて警邏で鍛え上げたり、既に騎士の称号を持っていることを盾に取って、我が心友殿を事情徴収のために外の施設に連れ去る相手の護送役として扱き使ったり、押収した資料を纏め上げる仕事を僕に放り投げたりしたのはどういったことでしょうか?
いや、有り難いんですよ。御陰で、依頼人にちゃんと真相を話せるだけの情報を解析できたのですから。
でもね、その作業を必死に終わらせるために学園の授業を全部公休して、一週間フルに使った結果というのは流石にきつすぎると思うんですよ? どこのブラック企業でしょうか。
で、それで僕の仕事終わったかなあ、と油断したら、ジョン兄が纏めていた資料を渡されて、総合的な索引作るようにと仕事のおかわりですわ。確かに、ジョン兄が資料を纏めるだけですまない仕事量を持っているのは理解していますが、一介の学生に押し付ける仕事じゃないでしょう、これ。国家の重要機密ですよ?
まあ、そんな抗議したところで意味の無い相手ですし、僕を巻き込んで後から抜け出せないようにしているのは分かりきったことなので、大急ぎで任された仕事終わらせましたよ。ええ、結局、もう一週間公休で潰すことになったから、出席日数は兎も角、授業内容で相当後れを取ること確定ですわ。単位幾つか落としかねない、落としたらジョン兄に説教喰らう、そうならないためにも受けられなかった授業をどうやってかして学ぶしかない。
ちょっと、理不尽にも程がありませんかね?
同じく仕事に追われて疲れ切った表情の心友殿に依頼者への伝言をお願いし、約束の真相を説明する日となりました。
何で、数日で終わらす仕事が延び延びになって二週間ちょっと過ぎているんでしょうね?
「長らくお待たせしました」
心友殿に連れられてやって来た依頼者に僕は頭を下げます。
正直、この閲覧室にやって来るのも久々なんですけど、掃除は行き届いていたので一安心ですよ。
読まれて困るものはここに置きっぱなしにはしませんしね。
「何か大事に巻き込んでしまったみたいでごめんなさいね」
「いえいえ。どうせ巻き込まれていましたから、早いか遅いかですよ」
真剣に謝ってくる先輩に、僕は思わず苦笑しながら宥めます。
ええ、実際、あれだけ素早くジョン兄が動いたと言うことは、最後の一欠片だけ足りていなくて動けなかっただけでしょう。だから、その一欠片を探し出すようにと僕に指令が下るのは時間の問題だった、そう言う話です。
逆を言えば、この先輩の御陰で、ジョン兄からの評価が上がったので万々歳だったわけです。まあ、上がりすぎると困るものなので、痛し痒しでもあるんですけどね。
「さて、あらましは既に噂話で耳にされているでしょうが、どこまで知りたいですか?」
僕としては確認しておかないと拙いことを尋ねます。
実際、何から何まで知ってしまったため、無制限に話すと非常に面倒なことになりかねなく、先輩の知りたいことの中でも問題ない範囲内で先輩の満足いくように話さねばなりません。
そのためには、先輩がどこまで何を知りたいかを把握しておく必要があります。
「私に関わり合いのあること全て、で問題ないかしら?」
「……んー、可能ではありますが、聞くに堪えない話もありますよ?」
先輩の答えを聞き、僕は正直なところを答えます。
実際、真面目に話すとゲス過ぎて僕の方が吐き気を覚えるレベルですからねえ。
「関係ある話なら聞く義務があると思うわ」
いやはや大した高貴なる者の精神をお持ちの方です。
皮肉などではなく、本気で感心致します。
「それでは、先ずは学園ができた当初の話から──」
「まて、相棒。本当にそこから関係しているのか?」
流石にいきなり話が余所に飛びすぎたと思ったのか、僕の説明を遮り、心友殿が疑問を投げかけてきました。
「残念ながら、件の組織の由来から話さないと意味が無いのですよ」
本当に、話さずにすむなら話したくないんですけどね。
もう一度言いますが、僕にとっても胸くそなのです。
「気を取り直して。この学園は騎士を育てるために作られたとされていますが、もう一つ大きなテーマがありまして。在学した者に国への忠誠を刻み込むというものです」
「そうなのか?」
「考えてみれば分かるんですけどね、君の実家みたいな王都より離れた諸侯が王国に帰属しているのは何故ですか?」
「その方が家を保てるからだな」
「では、独立していても家が保てる場合は王国の臣下の儘でいると思いますか?」
「余程のメリットがない限りないだろうなあ」
「そのメリットがあると教え込むのと、王国に愛着を持たせる事で精神的に裏切りを忌避させる、そんな心を育むワケです」
「理屈は分かった。効果はあったのか?」
「なければ今頃僕たちはここで一堂に会していませんよ。ヴァルター君も先輩も、王国に愛着あるでしょう。しかも、学園に来る前から。親子代々王国に忠義を尽くす事が誉れと思っている、違いますか?」
「それが作られた物だと?」
「いえ。学園ができた当初はそうでしょうが、今となっては常識となっています。要するに、学園の目的の一つは達成されたのですよ。まあ、当然、学園がなくなればその価値観も少しずつ薄れるでしょうから、継続する必要がありますね」
「それが今でも学園が存在する理由という事かしら?」
「それも理由の一つです。他の理由は今回の件と間接的にしか関係ないので今は説明しません。無駄に時間が過ぎますからね」
僕は苦笑しながら、「要するに、本来ならば会う筈のなかった中央の貴族と地方の諸侯の公子や公女達が出会う場ができてしまった、と云う事が今回の面倒事の発端になったと考えて戴ければ宜しいかと」と、ざっくり説明した。
「どういう事?」
「ここからは僕が前々から持っていた情報と、かの組織の記録を組み合わせた推理というよりも妄想というかそうではないかなあ、と云う想像を基にした話だと云う事を御了承下さい」
僕は些か長くなった前置きの終わりを告げる。
二人の表情を確認してから、
「さて、始まりは学園に入学した一人の王族だったようです。資料から、学園創立当初、若しくはそこから数年以内に入学した人物ですね。彼がとある諸侯傘下の陪臣の娘に横恋慕したことが始まりだそうです。ちなみに、彼女には将来を約束した許婚がいました。ええ、仲はとても良かったようで、どの様な相手の誘いにも乗らなかったとか」
と、僕は調べたことをそのまま話します。
「どこかで聞いたような話だな」
「ええ、どこかで聞いた話ですね。違うのは、許婚は決して彼女を裏切らなかった事と、彼女が駆け落ちした事にする為に他の諸侯の陪臣が犠牲になっている事ぐらいですね。この偽られた駆け落ち騒動が、時計塔の前で愛を誓うと永遠の幸せが訪れると云う伝説の元になったらしいですねえ」
「七不思議ではなく?」
前に七不思議と教えた事を覚えていたのか、心友殿は不思議そうに首を傾げた。
「伝説だよ。最初はね」
僕は肩を竦めてから、「ただし、それが何度も何度も続けば不気味に思う者も出る。それだけの話さ」と、真顔で言った。
「学園創立からの話となると、百年以上、毎年一件でも百件以上はあったという事になりますわ。不審に思う者も出るでしょうね」
「若しくは、何らかの理由で真相を知ったものの公表するわけにはいかず、七不思議という形を借りて警告をしたかったのかも知れません。今となっては調べようのない事ですが、何らかの意図はあったのでしょうね」
資料を読みあさった結果、いくつかの仮説は組み上がっていましたが、結局のところは反吐が出るような話に繋がるのでこの場では言及を避けることにしました。
全く、これだから七不思議絡みは本当に嫌になる。
「それで、今の話が今回の事に繋がってくるのか?」
「ええ。まあ、察しては居ると思いますが、その件の王族が偽装駆け落ちを演出してまでも手に入れようとした者、それを維持するために作り出された組織。それこそが今回の話の肝です。一部の大貴族の間で噂されていた学園の闇。幾度となく手入れの話が浮かび上がっては握り潰されていった謎多き高級売春組織。資料が正しければ、ほぼ学園創立当初から存在していた秘密組織ですね」
「その割にはあっさり見つけて、あっさりと潰したよな?」
「潰すための根回しはしていましたから。戦とはね、結果を確認しに行くためのもの、即ち儀式ですよ? その場で勝ち負けを決めようとするなんて阿呆らしい話です。それまでにどれだけ勝ちという結果を得るために積み上げてきたか、それが全てです。まあ、偶にそれを戦場で引っ繰り返す存在がいるから油断はなりませんが、今回は僕の方に力押しで全てを解決する手段が揃っていましたからね。楽な仕事でした」
まあ、実際はそこまで楽な仕事ではありませんでしたが、依頼人である先輩が気後れしないようにするための方便です。まあ、組織の内容や大きさを考えれば、想定よりは楽な仕事だったのかも知れませんがねえ。
「私が話を持ってきた時には既に全てが分かっていらしたの?」
「いえ、そこまでは分かっていません。概略を推理できた程度です。確証はありませんでしたが、一刻を争うのは理解していました。ですから、最短で解決する力押しを選んだのです」
少しばかり不審を抱き始めていた先輩に僕は種を明かした。
ちなみに、今回ばかりは嘘を言っていません。
そして、本当のことしか言ってもいないのです。
騙す気も誤魔化す気も全くありませんからね。
依頼人に真相を話す場面ですから。
「だから、あんなに急いでいたのか」
心友殿はそれを聞いてあっさりと納得します。
ええ、殆ど強行軍でしたからね。最初から最後まで同行していた心友殿も些か疑問を持ったことでしょう。普段の僕ならば、もっと慎重に動いていますから。
「証拠隠滅されたら話になりませんでしたし、商品以外の取り扱いがどうなっているかを僕は窺い知れなかったものでして。明らかに、モンビーゾ侯爵家公子殿は何かを知っていた。口封じに何をされるか分からない状況、今回の案件で絶対に確保しないと行けない方でしたからね。襲撃する事で人質に取られる可能性も考えましたが、殿下の手の者が各所の出入り口付近を警邏している中、商品搬入口から侵入者が襲撃してきたらどう考えるか……些か博打めいていましたが、賭けには勝てたようです」
「無事でしたの?」
「命は。拷問による傷その他諸々に関しては流石に僕では分かりかねます」
さらりと僕は嘘をつきます。
公子殿にはジョン兄に付き添って面会しています。
重要な証人でしたので、王族でも受けられるか分からないほどの手厚い看護でした。
ジョン兄の言うことが本当ならば、価値を付けられない霊薬まで使ったとか言う話ですからね。いやはや、吃驚。
「何でそこまでして口を割らそうとしていたんだ?」
「公子殿が先輩の同室の方が許婚により売り飛ばされたのをどのルートで知ったのか、連中にとっては致命傷となりかねないリーク元を探したかったみたいですね」
「居なくなった日からずっと隠し通していたのか」
「口を最後まで割らなかったみたいですね。ですから、酷い目に遭ってしまった。殿下は褒め称えておられたから、悪いようにはされないでしょう」
「それで、何を隠していたんだ?」
「さて? 殿下には話したかも知れませんが、僕では窺い知れませんねえ」
これも嘘です。
彼の方の事情聴取には僕も臨席していました。
ジョン兄がどうして助けられたのかをお前が話すようにと指示してきたので、話せる内容を全て話しました。
結果、僕を信じてくれたのか、他言は無用との念を押されましたが、公子殿の情報源が誰だったのかを知りました。
そして、どれほどかの売春組織が悪辣なのかも知ってしまいましたよ。
家の借金で縛り、家族を人質にして売春を強要、事情を決して話さないようにと普段通りの生活をさせた上での二重生活。今までよく発覚しなかったものだと関心しましたよ。まあ、王族やら公爵やらが牛耳る組織に反抗できる木っ端貴族はいないでしょうけどねえ。
よくもまあ、そんな風に雁字搦めに縛られた女性が公子殿に伝える勇気があったものです。
そして、その信頼に応えて決して口を割らなかったのだから、情報源の女性は男を見る目はあったんですねえ。家族運には恵まれていなかったようですけれど。
流石に、この件は心友殿にも話せない事柄ですから、僕は墓場まで持って行くことに決めています。
何で、ジョン兄に関わるとそう言う話が増えるんですかね、本当に。
「まあ、先輩の同室の方の危機を知った公子殿は必死に説得を続け、それが横恋慕のように見えたというのが真相です。ただ、無事に見つけ出すという依頼は果たせなかった事を謝罪させて戴きます」
僕は深々と先輩に頭を下げました。
最初から分かっていたこととは言え、それでもそれを理解した上で引き受けた以上、僕の落ち度でしょう。何せ、最初から五体無事を保証できませんと言えたわけですし。
だからと言って、最悪の場合はきずものになって帰ってきますとも先輩の精神衛生上のことを考えれば言えるわけなかったですし、本当に世知辛い話ですよ。
「それは私の考えが甘かったことが原因ですわ。何でそこまで彼が駆り立てられていたのかを見極められなかった私達の罪。貴方が気にすることではありませんわ」
「そうですか。まだ直接お聞きになりたいことはありますか? 報告書の方に今話したこと以外も書き記してはありますが」
流石にここから詳しい事情は心友殿にも話せないので、事前に用意していた報告書を先輩の前に置きます。
実のところ、話せる内容は何だったかと事前に纏めていた資料がそのまま報告書に転用できると気が付きましてね。転用できるものを清書して渡す準備はしていたのです。
「そうね、でしたら一つだけ。貴方なら、私の依頼がなくとも今回の件、解決出来たのではなくて?」
「否定はしません」
先輩の問い掛けに僕は頷く。「ですが、大義名分もなくしゃしゃり出るのは色々と問題がありましてね。もう御存知かも知れませんが、僕が勝手に動くと王太子殿下の不利益となりかねないのです。そして、それを決して赦さない方が居ましてね。依頼という分かり易い形で動けるのならば兎も角、僕個人の気に入らないなどといった感情で好き勝手に動いた結果、思いも掛けぬとばっちりを殿下が蒙った場合、僕の命が危ないのでしてね」
「己の命惜しさに動かないという事?」
「ええ、そうですよ。僕は俗物ですからね。まあ、確かに今回の件みたいに勝手に他人に己の命運を奪われて好き勝手される事態は大嫌いですけどね、だからと云って、それを理由に動くわけにもいかないのですよ、毎回、依頼人の方々からは不思議と思われるようなのですけどね。僕からしてみれば、その様な自由が僕にあろう筈がないんですよ。一見何でも出来そうなこの位置は殿下の保証によって生まれているものです。故に、殿下にとって不利益となるもの全て排除する義務が生じている。生じてはいるが、それを排除する際に、殿下の不都合が生じてはならない。今回の場合は、ハッキリとした証拠、それを手に入れられない場合、殿下への風当たりが強くなったでしょう。御婦人の憂いを消し去るという騎士らしい行動だったり、王国法を逸脱した行動への対処だったり、解決する事が殿下の功績になるだけでは世の中納得して貰えないという事です」
「学園で教わっている建前に対して全て喧嘩を売っているような話ね」
「ええ、そうですよ。御陰で僕は学園で本当に習うべき事柄は如何に本音と建て前の折り合いを付けるかではないかと疑って掛かっていますから」
「でしたら、何故、私の依頼は受けたのかしら? あまりメリットもなかったでしょうに」
「いえ、大いにありましたよ。気に食わない連中を破滅させるという大義名分を得ると云う極めて重要なものです」
「あら、先程とは意見が違うようだけれど?」
「変わっていませんよ。重要なのは僕の気分よりもその前提条件です。依頼を受ける、と云うね。その上、重要な証言を戴きました。これが大きい」
「証言一つで変わるの?」
「ええ。先程も云いました通り、僕は大体の推理は終わっていましたが、裏付けする何かがない以上、ただの妄想に等しいワケです。それを理由に突っ走れば、あまり宜しくないオチに到達するのは目に見えていました。ところが、僕の推理を裏付ける証言が一つでもあったらどうなるでしょう。ええ、誰もが無視できない仮説の完成です。王太子殿下ともなれば、それを無視して後で大事になったら廃嫡されても仕方のない失態でしょう。従って、それが真実かどうかを見極める必要が生じる。そこで容易な方法で解決出来るとしたら? 当然、それを採用するでしょうね。まあ、日頃の行いが悪ければ無視されるでしょうけど」
「あら、私は飛んで火に入る夏の虫だったのかしら?」
「介入したかった案件の一つに対する大義名分を持ってきてくれた、と云う事でしたら、そうでしょうね。ただ、どうにもジョン兄が虎視眈々と狙っていた案件のようなので、どちらにしろ、強制執行は直ぐ近くだったでしょうけどね。然う云う意味では、先輩は運が良かったのですよ。ヴァルター君と昔からの付き合いがあり、そのヴァルター君が僕と付き合いがあったからこそ、真実が闇に葬られる直前に真相に辿り着けたのですから」
「運が良かったのかしら?」
「親友達の消息を知れたという意味では」
先輩の問い掛けに僕は端的に答えます。
何せ、あのジョン兄が本気で動いたら、僕すら気が付かずに学園の中から一つの地下組織が消え去ったでしょうからね。その場合、犠牲者がどう扱われたかまでは僕も保証できません。ジョン兄の行動原理は殿下のためになるかどうか。ならないと判断した場合、証拠隠滅のため、犠牲者たちも闇に葬り去ることを決断しても驚きは覚えません。
「そうね、その点は間違いなく運が良かったのでしょうね。それで、私は何を支払えば良いのかしら?」
「既に戴いております。学園最強の騎士の貸与と貴女の貴重な証言です」
僕はにっこりと笑ってみせる。「ええ、貴女は実に運が良かった。何せ、僕が一番気に入らない連中を破滅させるために必要な代物を全て持っていたのですから」
これにて第一話終了で御座います。
本当はネウロ系推理物というタグでも作ろうかと思っていたんですが、ネウロほど面白い犯人が出て来ないですからね、流石に詐欺かな、と。
まあ、推理物ではありませんしね、これ。
僕の友人がシャーロック・ホームズは推理小説ではないと力説されています。
何故ならば、作中のヒントだけでは謎が解けず、読者が推理するためにはパーツが足りないために答えを導きだせないから、だそうです。
成程、言われてみればその通りですね。
そして、シャーロック・ホームズ系の作品として、僕はネウロを上げるわけです。
あれも、推理をするための作品ではないですからね。探偵ものだけど。
謎は既にネウロの中では全て解けているけど、人間からしてみると重要な動機が全然ないから謎が完成しないという構造から、確かに探偵は弥子の方なんだな、と感心します。
ん、この作品?
情報屋だから、どちらかというと、事件屋ヒルディみたいな感じなんだと思いますよ。
推理物としては絶対に破綻していますからね、情報出揃っていないし、最初からルディが持っているものは開示しないから。
まあ、リハビリのリハビリなんで、然う云う難しいことはポイーで。
次はとりあえず、アレウスを書きたいところまで書ければなあ、と思いますが、又微妙に忙しさがねえ。
書きたいという意思と時間との兼ね合いがねえ。
一応この作品も、第二話の骨子と第三話の登場人物予定ぐらいは終わっているので、思わぬ人気があれば、それらが先になる可能性もありますが、七不思議の方が決まらない罠。
だれだよ、七不思議を絡めたの。
僕か……。