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魔法学園の情報屋  作者: 高橋太郎
第一章 時計塔にまつわる七不思議
6/8

「で、こっちからで良いのか?」

 不完全燃焼で機嫌悪いのを隠そうともしない心友殿が、確認してきます。

「まあ、本来の入り口でも良いんですけど、そっちには殿下の手の者が地上で見張っている筈ですからね。そっちに逃がす分には問題ありません。抜け道は推測できる辺りに警邏(けいら)の者を回して貰っていますし、だったら、当初案通りにここから侵入するのが良いでしょう」

 むしろ、心友殿を囮に僕が侵入して情報を確保するのが計画なので、相手がちゃんと待ち構えているところで大暴れして貰わないと困ります。

 とは言え、相手方が気が付いていてくれないとこの計画も無意味。

 ならば、確実に気が付いて貰うことにしましょう。

「では、そろそろ“甲冑”を起動させましょう」

 僕はにっこりと笑い、心友殿に開戦の狼煙を上げるように促します。

「……良いのか?」

「まあ、この搬入路に侵入した時点で何者かが入り込んできたのはバレバレでしょうし、だったら最初から派手にやるとしましょう。何、たった一人の騎士が入り込んだだけと思わせれば、初手から逃亡を選ぶ連中も減るでしょうしね」

「了解した。“覚醒(アウェイクン)”」

 心友殿は力ある言葉を発し、金属塊に宿る魔法生物を目覚めさせます。

 この金属塊こそが騎士を騎士たる者として認めさせる存在、即ち、甲冑となります。

 甲冑という名から分かる通り、本来の姿は全身鎧であり、常日頃は懐に入れて持ち歩ける核が本体を異空間に仕舞い込み管理しています。

 甲冑自体の性能は、所謂パワードスーツですね。各部位に己の肉体を強化する魔術を刻み込まれており、(まと)えば一騎当千の力を発揮できます。甲冑自身の自重も軽減化する魔術で見た目よりは軽くなっているため、自重で動けなくなると言ったことも適正のものを使えばまずありません。

 その上、核には甲冑を制御し管理するための自我、魔法生物が宿っています。主の思考を察知し、常に最適な動きを補助してくれる優れもの。正に、決戦兵器と言っても過言ではありません。

 ただし、魔力を莫迦食いします。

 ええ、常時起動していたら干からびて死ぬ程です。

 ですから、平時は半覚醒状態にして、起動時に消費する魔力を溜めさせます。

 持ち主の魔力量が多ければ多いほど、半覚醒時により多くの魔力を溜め込ますことができ、魔力量が少なければ、十分な魔力を溜めることができません。これが何を意味するかというと、性能が良い甲冑であればあるほど魔力の消費も激しくなり、魔力量が少ない者は優秀な甲冑を身に纏えないという世知辛い事実が待っているのです。

 騎士が纏う甲冑で言えば、敏捷(びんしょう)に動けるように強化魔術や軽減化の魔術を嫌と言う程刻み込んだ重装甲のものが当然魔力量を莫迦食いし、刻まれた魔術が少なく、軽量化の魔術を減らすために装甲を軽くした甲冑ほど魔力量が少ない者でも(あやつ)れるものとなります。

 当然、自分の身体能力が優れていれば優れているほど甲冑の動きも滑らかになるので、肉体的にも魔力的にも優れている者こそが最強の騎士になるという当たり前の結論に至るのですが、そんな完璧超人に見合う甲冑がこの世に一体いくつあるのかという悲しい事実が襲い掛かってくるのです。

 まあ、当然、世の中には例外がいます。

 王家伝来の甲冑を受け継いでいる殿下や、辺境伯として最前線で代々戦い続けるために名工の一品をかき集めていた家の次男坊である心友殿みたいな例外がね。

 僕? 僕ですか。

 残念ながら文官系のなんちゃって子爵家には良くて伝来の甲冑など当主が後生大事に引き継いだ一領ぐらい。跡取りのための甲冑なんて普通は存在しません。

 うん、なぜか知らないけど、父上が学生時代に使っていたという軽装甲冑を入学祝いとして貰えたんですけどね。

 性能自体はお察し、学園から借りることができる甲冑よりは優秀かな、程度です。

 当然無いよりはマシなのでありがたいことには違いありませんが。

 ああ、一つだけ借り物よりも圧倒的に優れている点が有りました。

 核に宿る魔法生物の経験の差です。

 名工が組み上げた魔法生物は、ものによっては最初から意識だけではなく魂が宿ると言います。文字通り、生きているのです。所謂、知性を持った武具インテリジェンスウェポンというやつでしょうか。

 そこら辺にある数打ちの魔法生物も丁寧に扱えば、付喪神(つくもがみ)のように魂を宿すとも言われています。先祖伝来の甲冑が自分の意思で主人が気が付いていない攻撃を()けたとか、身に付けていない技を最適な動きで放てたなどといった逸話(いつわ)数多(あまた)残っています。

 ですから、誰が着ても良いように調整されている核と親族が丁寧に使い続けていた核とでは雲泥の差があるわけです。

 これらのことから分かるように、甲冑を持つ者こそが騎士でそれを国が認定した証こそが本来の騎士爵となります。貴族のことを騎士呼びするのはその点から言えば間違いはないのです。

 学園の役目の一つがこの本来の騎士の育成にあり、甲冑に対する魔力の制御を重んじるのも、故あってのことなのです。

 従って、学園卒業生が甲冑手に入れて、国から認められる働きさえすれば即座に騎士爵を授与されるなんて話はそこら中にごろごろしているわけです。

 甲冑持っていない者が甲冑を手に入れるだけでも大変なのですが、その苦労には見合うというお話ですな。

「……相棒、敵さんも気が付いたようだぞ?」

 甲冑を完全展開させた心友殿が低く(ささや)きます。「核の覚醒反応を察知。重装甲が三、標準が少なくとも四以上、軽装甲は現状追い切れん。相当金持ちが出入りしているらしい」

「それで、ヴァルター君でも叶いそうにない相手は居そうですか?」

「さて、この程度の相手ならば戦場で何度も出会った程度だからな。敵ではないな」

 心友殿は気負うところもなく、平然と言って退ける。

 それもその筈、入学前に初陣をすませ、陛下直々の騎士爵授与の栄誉に(よく)した今日日(きょうび)珍しい本物の騎士です。

 騎士の平均的魔力を五十とすれば、限りなく百に近い九十代後半の魔力保持量、見た目の通り膂力(りょりょく)に優れ、動きも俊敏(しゅんびん)、学課の成績はそこまで振るわずとも戦働(いくさばたら)きに必要な頭の冴えは充分にある冷静な判断力。正に、騎士として活躍するために生まれてきた男が我が心友殿です。敵はないと彼が判断したのならそれは間違いないことでしょう。

「それよりもお前の方は問題ないか? 支援がいるなら、そっちの守りにつくが?」

「大丈夫ですよ。僕はこれで潜入は得意ですからね」

 心友殿の心配を余所に、僕は気軽に答えます。

 確かに、核を覚醒させると魔力の波動が洩れて相手に察知されるようになりますが、逆を言えば、覚醒させていなければ気が付かれることはまずないんですよね。後は、潜入に必要な隠密(おんみつ)の技術さえあれば割と何とかなります。

 ぶっちゃけ、この世界、魔術に固執(こしつ)し過ぎた所為で、僕みたいに技で対応するタイプに対しての守りが甘いんですよね。

 心友殿の心配は杞憂(きゆう)とまで言うと言い過ぎですが、割とどうとでもなる話なのです。

「ただ、僕が甲冑を起動したと察知したら援護に来てくれると助かります。多分、その時は余裕ぶっていられないと思うので」

「分かった、任せろ、相棒」

 (かぶと)越しで表情は見て取れませんが、自信満々に笑いながらサムズアップしていることは分かります。

 僕も同じ様に笑みを浮かべて、静かに頷き返しました。

 それが合図だったかのように、心友殿は全力で突進を開始、通路の先にいた見張りを勢いのまま()ぎ倒し、中に突入します。

 発せられる魔力は(けた)違い、一瞬の内に他の魔力発生源がこちらの魔力探知の範囲から失われました。

 我が心友殿ながら、本気で何者なんだろうと悩んでしまいますよ。

 そうこう考え込みながらも、気配を殺し、必要な資料がありそうな部屋を求めてスニーキングミッション開始です。

 残念ながら、この世界には段ボールはないので自力で物陰(ものかげ)に隠れながら進んでいかなければならないのですが、相棒が魔力全開で大暴れしてくれている御陰で本当に誰もいない。

 楽勝過ぎて笑っちゃうレベルですよ。

 まあ、油断して捕まるまでがセットになりかねないですし、用心して進みますけどね。

 問題は、どこに何があるか分からない施設だから、変な部屋を開けて人に見つかることなんですよねえ。

 ただ、特殊な売春組織の地下施設ということは、人の気配がする部屋はまず外れという些か逆説的な山を張れるわけでして、後は見つけられたくない書類ならば隠し部屋か奥まったありきたりの部屋辺りが定番でしょうか。

 大穴は、この地下にはないなんですけど、その場合は殿下に関係した連中の取り調べを厳しくして貰うしかないから、そうなると僕の出番はないんですよねえ。

 それも楽で良いなあ、と思いながら、とある一角に着た時、明らかにおかしな動きをしている人物を見つけました。

 逃げるにしても、暴れている心友殿を迎撃するにしても違う方向に目的を持って進んでいる男です。

 内心、当たりだな、と確信を持ちながら、気が付かれないように跡をつけます。

 案の定、どう考えても人が余り寄りつきそうもない主要どころから外れた通路を通り、何もない袋小路に達します。息を潜めてじっと観察していると、予測通り、何かしらの呪文を唱えて隠し扉を開けました。

 ここで執れる手段は二つ。

 出てきたところを抑えるか、今抑えるかです。

 出てきたところを抑えた場合、上手くやればほぼこちらの奇襲で完勝できるでしょう。問題があるとしたら、中で証拠隠滅(いんめつ)をされた場合止められないことです。

 一方、今すぐに抑えに言った場合、中にある資料を証拠隠滅で消される前に確保できる可能性が多大です。その代わり、中に何らかの資料がある場合は、それを傷付けずに目の前の男を無力化する必要があります。

 どちらにしろ、利点と欠点があるわけですが、僕がこの場で選べるのは最初から一つしかありません。

 中にあるだろう資料を完全な形で接収した上で、なるべくならばその部屋のことを知っていたこの男を生きたまま手に入れること、です。

 そうしなければ、殿下の名に傷を負わせる可能性が残ってしまいます。

 うん、駄目だな、それは。

 覚悟を決め、

「“覚醒”」

 僕は甲冑を起動します。

 当然相手もこの時になって僕の存在に気が付きますが、もう、遅い。

 今から甲冑を装備しようにも僕の一撃の方が先です。

 その上、僕の存在に気が付いていなかったせいで反応が一つ遅れています。

 例え僕の甲冑が軽装備のものであろうと、丸腰の相手に不覚をとる理由がありません。

 順当にそのまま男を昏倒させ、隠し部屋に入り込みます。

「……ビンゴ!」

 思わず力強く呟いちゃいましたよ。

 壁にある棚には明らかに書類の山。中央には執務用の机があり、今も何枚かの書類が放置されっぱなしです。

 手早く男を拘束し、隠し部屋の中に引き込み、入り口からは死角になる場所で用心しながら書類に目を通します。

 (いささ)か、頭がクラクラしてくるような内容が書かれていましたが、どうやら僕の推理は全面的に当たっていたようです。違っている点は、人間の悪意というか、そういうものを読み違えた程度。前提を知らなければ分からないことだから、是非も無し、ですね。

 重要な証拠になり得る書類を懐にしまい、棚にある書類が想定通りのものかどうかを数枚斜め読みで鑑定、当たりと目星を付けた時点で殿下に無事渡せるようにちょっとした仕込みを施します。

 次なる問題は、こちらに向かってくる魔力反応、即ち甲冑を装備した何者かです。

 ありがたいことに、一番分かり易い心友殿もこちらに向かってきてくれていますが、道知らないでしょうから直ぐには来られないでしょう。

 心友殿との安全な合流を考えれば、再び魔力反応を消して隠密行動に戻るのもありですが、この場合悪手でしょう。

 隠密したところで、次来る何者かにこの資料を燃やされたら負けなのですから、心友殿が到着するまで(しの)ぎきらないと不味い。

 近づいてくる存在は魔力反応から標準装甲以上の騎士、軽装甲の僕からするとかなりきついです。これが標準装甲の中でも重装甲よりならさらにきつい。

 基本的にこの世界の甲冑は重装甲が最良です。

 刻み込める術式、装甲の厚さ、自重による突撃、どれをとっても他の装甲では(かな)わないアドバンテージを有します。

 これを(くつがえ)せるとしたら、余程特殊な特化型の甲冑のみ、同系統の甲冑では逆転の目はほぼありません。

 まあ、例え話であり得ない話ですが、重装甲の甲冑をそこそこの騎士が装備している状態と心友殿クラスの化け物騎士が標準装甲以下を装着していた状況下で戦った場合は流石に重装甲も負けるでしょう。流石に使い手がヘボかったらどうにもなりません。

 ちなみに、僕も重装甲の甲冑を動かすことはできます。

 ですが、生来の体力のなさや重装甲の甲冑を動かすにはぎりぎり程度の魔力量から数分動かしたら限界を迎えます。

 まあ、動かすことすらできない方々が大半の中、動かせると言うだけでも実は優秀とみられるんですけどね。

 ちなみに標準装甲の方が刻まれる術式の少なさもあり、身体能力のへっぽこさ故に動かせないという非常に意味の分からない状況を生み出したためか、僕の甲冑技巧の授業評価は複雑怪奇なものになっていたりします。

 困ったものだ。

 何が言いたいかと言えば、普通にやっていたら、僕の甲冑でこれから来る敵の相手は非常に難しいというか、まずどうにもならないという話です。

 悲しいね、本当に。

 一頻(ひとしき)り状況を(なげ)いてから、向かってくる敵の数を冷静に数える。

 ……ん?

 おかしいな、先程まで相当数がこちらに向かってきていたのに、今はかなり強めの魔力反応一つきりだぞ?

 他の者は……ああ、そうか。心友殿が潰したり、心友殿を足止めしようと全部あっちに向かっているのか。

 それを何事もないかの様に片付けている心友殿の方が異常なのですが、今は援軍に来るのが遅れるという意味になるから悲報ととるべきでしょうねえ。

 なる様にしかなりませんか。

 資料を傷付けさせたくないので、部屋の外に出て、敵の到着を待ちます。

 幸いなことに、心友殿の猛追を気付いている以上、短期決戦を選んでくるでしょうから、そこを逆手にとった立ち回りをすれば勝機が見えるかも知れません。

 あとは敵の標準装甲が重装甲よりじゃないのを祈るだけですかね。

 多分、(はかな)く散る祈りでしょうけどねえ。

 ええ、(あん)(じょう)そうでしたよ。

 魔力量から推定していましたが、ぎりぎり重装甲と言い張るには足りない標準装甲詐欺(さぎ)の甲冑が。

 御陰で相手の力量もある程度推定できます。

 重装甲を扱うには魔力が足りないが、重装甲並みの重量を軽々と操れる膂力を有する完全前衛タイプの騎士です。

 言ってしまえば、騎士らしい騎士というやつでしょうか。

 あらゆる意味で変則型の僕とは対称的なタイプでしょう。

 時間はこちらの味方ですし、多分、あの勢いのまま突っ込んできて勝負を仕掛けてくるでしょうから、先ずは機先を制すとしましょう。

 僕は魔力を練り上げると、

土遁(どとん)(たたみ)(がえ)し!」

 地面に手を置き、術式を発動させます。

 突っ込んでくる男の前に床の石畳が(まく)れ上がり、相手の進路を妨害します。

 そのままぶつかればただではすまない質量を前に、避けるか、止まるか、それとも破壊するか。

 どちらにしろ、僕への速度が乗った突撃はほぼ不可能になりました。

 うん、目の前の相手が心友殿クラスなら、障害を歯牙にも掛けずに打ち()いてくるからね。まだ、油断はできない。

 こっちが次にどう出るか考えている間に、相手は立ち上がった石畳を視認、咄嗟(とっさ)に手にした得物で破壊を試みますが、一応僕の魔力でコーティング強化されていますから上手く行くわけがありません。

 この時点で、心友殿より実力が何枚か(おと)るのを確信します。ヴァルター君なら、武器でも破壊できるし、そのまま体当たりで何事もなかったかの様に突っ切ってきますからね。

 当然、そこまで非常識な動きはできないので、叩き付けた獲物を支点に使い、速度を殺さぬように石畳を今日に避けて僕への突進を続行してきました。

 成程、腕は良いようです。

金遁(きんとん)粉塵(ふんじん)爆破(ばくは)!」

 懐から細かい金属片をばら撒き、魔力により着火、狙った範囲を粉塵爆発で空間を封鎖、そのまま突っ込んできたら手痛いダメージを狙った足止めを仕掛けます。

「クソッ!」

 敵は罵り声を上げ、そのまま一度間合いを取り直し、仕切り直しを図ってきました。

 まあ、悪くはありませんが、実戦経験がないようですね。

 あれだけの装甲があれば、爆破をごり押しで突破、その勢いで僕を仕留めに来る方が良かったでしょう。と言うか、ヴァルター君なら間違いなくそうしました。

 まあ、御陰でこっちは優位に時間稼ぎをできそうですので、容赦なく行きます。

()ッ!」

 気合声と共に様々な術式を予め()めておいた棒手裏剣を大盤振る舞いとばかりに続けざまに投げつけます。

 今までの僕の動きから、明らかに何か仕込んでいると思った敵は避けきれないものは得物で叩き落とし、それ以外を素早い動きで回避します。悪くない判断です。

 当然叩き落とした瞬間に電撃やら氷結やら爆発やらを撒き散らしますが、先程の粉塵爆発に比べれば可愛いもの、装甲を抜くことなく牽制で終わります。

 時間稼ぎと考えれば十分仕事してくれましたね、コストで考えると大損ですが。

 同じ軽装甲相手なら、アレで大打撃を与えられたんですけどね。

 やはり、格上の甲冑を相手にするのは正直きつい。

 実際、本気で相手を落としに行くなら、イニシアティブを取っている内に次の仕掛けをするべきなんですが、確実に落とすには決め手を欠いている状況なので、こちらも時間稼ぎ目的の立ち回りとなってしまいます。

 まあ、あちらはそうとも言っていられませんからね。

 体勢を立て直すと即座に突っ込んできます。

 やれやれ、こちらの手の内は初見殺しばかり、一度見せたものは間違いなく対応されてしまうでしょう。

 正攻法で立ち向かえば重量差で押し切られるとこちらもあちらも理解していますから、時間稼ぎするにも限界はあります。

 多分、口撃には乗ってこないでしょうし、心友殿が駆け付けてくれるまで必死に時間稼ぎするしかないみたいですね。

 やだやだ、本当に世の中、面倒事ばかりです。

 僕は静かに前世と今生の違いを検討したいだけなのに、何でこんなに面倒事ばかりやって来るのか。

 心中で愚痴りまくりながらも、脳内では現状を分析し、心友殿が駆け付けるまで如何に凌ぐかを必死に計算します。

 やれやれ、しんどい時間は今暫く続きそうです。

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