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魔法学園の情報屋  作者: 高橋太郎
第一章 時計塔にまつわる七不思議
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久々に時間がとれたから、アレウスの話を書こうと思って書けないからリハビリに書いてみたいもの書いてみるかと書いていたら、「これだったら、アレウスの続き書いても問題ないのでは」というジャンルだったのでアレウスの続きを書き始めるとゴタゴタしてきて忙しくなったので一時休止。

また暇が少し出来たから、アレウス書こうとしたらやっぱりちょっと書けない感じだったので、リハビリがてらに軽いもの書いてみるかと書いていたら、「あれ、長くても一週間程度で書き終えるはずだったのに?」と、そこそこ長い話になってしまったとさ。

リハビリのリハビリなんですよ、これ。

 さて、目覚めたら別の自分だったりする経験は皆様お持ちだろうか?

 いや、あっても困るのだが。

 起きたら、なぜか前世の記憶を連続的な自分として認識する等という経験は困惑しか残らない。

 むしろ、生まれてから今日までの記憶があやふやになる方が本当に困る。

 だってさ、昨日までの自分が何が好きで何が嫌いで、自分に何ができて何ができないが全部分からなくなるんですよ?

 ぶっちゃけ、頭打っていなかったら、記憶無くしましたって言い訳すらできなかったんですから、もうちょっと昨日までの僕はちゃんとしていて欲しい。

 まあ、五歳児にそこまで厳しいことをおっさんが言うのは申し訳ないんで、何かあった時の申し送り事項として日記に愚痴として書いておく程度で赦しますが。

 どうせ、昨日までの僕も自分ですからね。自分が自分に対して説教とか怒るなど無駄なことです。

 とは言え、冗談抜きにこの世界がどんな世界で、自分の家がどの様な家なのかも分からないのは危険が危ないとしか言い様がないので、本当に勘弁して欲しいですけどね。

 そういうワケで、明日からは情報収集の日々です。

 何事も正しい情報が無ければ判断もできなければ、生き残ることもできない。

 剣の魔法の世界と思わせた、“十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない”って奴の可能性が多大ですからね。

 それに、もし仮に本当の剣と魔法の世界だったら、僕の持っている知識が正しく作用するか分からない。大地は丸くないかも知れないし、天が動いている世界で、現代科学で人を出し抜こうとすることが、逆作用して特大死亡フラグになる場合もある。

 僕は、死にたくないんですよ、特に無駄死にって奴だけは御免だ。

 ですから、先ずは情報です。世界の森羅万象を知り、自分の知識と摺り合わせ、何ができて何ができないかを知らない限り……動かない方が得策、でしょうねえ。



 王都にある魔法学園、そこには七不思議と呼ばれる怪奇話が代々伝わっている。

 ただ、時代によってその話の内容は少しずつ変わる。

 現在、久々に真新しい七不思議が加わった。

 図書館棟の閲覧室最奥にある個室の一つに学園のことならば全てを知る男が平日の授業終了後から日暮れまで滞在し、代償を支払うならば知りたいことを何でも教えてくれるというものだ。

 在り来たりの噂話だが、七不思議と言うには余りにも具体的すぎる。

 ならば何が不思議なのか。

 まるで心を読んだかのように、知りたいことを口にする前に当ててくるのだ。

 今、一番自分の欲しい情報をさらりと提示する。

 そして、その情報と等価値の代償を差し出すように求めてくる。

 軽めの情報には軽めの代償を、重大な情報には命を賭すような代償を。

 覚悟を示す者にのみその力を貸す、最新の七不思議。

 それが、学園の一回生であることを知る者は少ない。



「よお、相棒。生きているかー?」

 僕が読んでいた本から目を上げると、勝手知ったるとばかりに友人が部屋に入ってきた。

「お陰様で」

 再び本へと目を落とし、「とりあえず、これ読み切るまで待って貰えます? 今日しか読めない禁帯出の本なんで」と、生返事をした。

「いやあ、悪い。お前に用がある人を連れてきたんでな。相手してくれると助かるわ」

 悪びれるところなく、朗らかな声で我が心友殿は僕にお願いしてくる。

 大きく一つ溜息を付いてから、

「貸しですからね」

 と、僕は次は何時読めるか分からない貴重な本を閉じて顔を上げた。

 図体のでかい心友殿の後ろを見てみれば、見覚えのない女性が所在なさそげに隠れていた。

 制服の装飾その他諸々から三回生と見極め、最近の噂、心友殿の交友関係、その他諸々を換算し、一つの結論に至る。

「どうも初めまして、ウインザルフ先輩。ミルディン・バーキルと申します」

 立ち上がり、ウインザルフ先輩の側まで歩み寄ってから跪く。

 学園内では互いに一介の生徒同士という建前がありますが、だからと言って実家の権威を完全無視などと言う莫迦な真似はできません。

 所謂上司が無礼講だからと言うので本気にしたら次の日首になった案件のもっと闇の深い何かを見せ付けられることになりますからね、卒業後。

 うちは役料で子爵級の扱いを受けていますが、それがないと良くて准男爵、悪く見積もると世襲が特別に赦されている騎士爵持ち程度の家柄です。ウインザルフ先輩の家が伯爵、若しくは方伯と見なせる大所領持ちですから家格の違いよりも権力や武力の違いの方が怖いですね。

 ちなみに、我が心友殿の実家は辺境伯ですのでガチガチの武門の家柄、絶対に喧嘩を売りたくない相手です。

 本人がそういうものをチラつかせるのが嫌だとしても、家の方の名誉がありますからね。何かあったら、周りの方が勝手に動きます、本当に怖い。

 そう考えると、初めて会った時に心友殿に喧嘩を売っていた莫迦たちは何を考えていたのか未だに意味が分かりませんねえ。

 一方の先輩は、僕の動きを理解できなかったのか、困惑している御様子なので、助けを求めるように親友に視線を向けます。

「飛ばしすぎだ。慣れている俺と違って、ラヴィ姉はお前のことを噂程度でしか知らないのだぞ?」

「十分なのでは?」

 心友の答えに僕は思わず首を傾げます。

 だってねえ、腹立たしくはありますが、大体噂通りなんですよね、僕。

 逆を言えば、僕の噂を知らなければ僕の基に辿り着くことはないと断言できるレベルです。

「……そう、なるのか?」

 僕の発言にある種の正しさを見出した様子の心友殿は反駁せずに困惑していた。

 本当に、僕の発言が詭弁だったら良かったのにね。

 なまじ、僕と行動を共にし続けていたものだから、噂通りだと知っているせいで、自分が紹介するために連れてきた相手がその噂を知らない可能性をすぽーんと頭から飛んで行ってしまったのだから困ったものです。

 まあ、このまま放置しても話が進まないので、

「それで、今日は如何なる御用件でしょうか、ウインザルフ先輩。現在学園で話題沸騰中の駆け落ちの話でしょうか?」

 と、話を振ることにした。

「な、何でそのことを……?!」

 僕に相談事を当てられて驚く先輩に対し、

「簡単な話です。貴女が駆け落ちしたという先輩と同室であったと云う事、その駆け落ちに対して不審を抱いているという話、駆け落ちした二人の間に何かあったのではないかと聞き込みをしているという噂、見兼ねた我が心友殿が僕を紹介するべくここに連れてきたと云う事が全て正しいと仮定して推測すれば誰だって思い至る結論だからです」

 と、軽く種明かしをしておく。

 これ以上不審に思われても困りますし、先ずはそれっぽい話をして信用を稼ぎませんと。

 実際のところは、心友殿が妙にあの駆け落ち事件に対して気にしていた節がありましたからね。僕もそれなりに本腰を入れて噂を仕入れていたからこそ、推理するだけの情報を集められたと言うだけの話です。

 当然、種は明かしませんよ?

 心友殿の秘やかな働きを無駄にするのは気が引けますからね。

「何はともあれ、お座り下さい。残念ながら、図書館棟の閲覧室故に大したお構いはできませんが、相談に乗ることぐらいは容易い話です」

 僕はなるべく胡散臭くなさそうな爽やかな笑みを浮かべ、面倒事に手を突っ込む覚悟を決めるのでした。

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