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皇紀2701年の零式  作者: SHOーDA
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幕間4 二人の大臣

幕間4 二人の大臣


 駒泉勝軍。皇島国の最大勢力、陸軍の頂点にいる男である。総理大臣になることも容易いと言われている。武内は珍しく駒泉の会談要請に応じた。同席は駒泉の秘書のみ。

 東都府の国会議事堂内、陸軍大臣室は、少々広い上に調度品が武内の趣味に合わない。

 駒泉は日中にもかかわらず、秘書に秘蔵のスコッチ・・・ヴァランタインの30年・・・を持って来させることにした。

 武内は平然と酒杯を奪い、飲み始める。

「武内くん。神野くんの消息を知らないかね。」

 関白閣下を「くん」づけだが、武内は気にする様子はない。

「先日以来、少々体調が悪い。知っているだろう?」

 外見だけなら20歳以上年下に見える、これも違和感のある言葉遣いであるが、当然誰も気にしない。

「本当なのか?あの神野くんが体調不良とは、この100年で初めてではないのかね。」

「こちらこそ、貴様に聞こうと思っていたのだが・・・本当に知らんようだ。」

「私が知っている?何を?」

「・・・。本題を言え。」

 駒泉は相変わらずの短気に呆れつつ、腹芸なしで交渉することにした。

「例の件だが、なぜ鉄神を出さん。」

「本人に断られた。今さら六一式で出るのも乗り換えるのもイヤだ、と。」

「さすがは鉄神と言いたいところだが・・・その代わりが問題侯爵騎士の零式?どういう魂胆かと聞いている?」

 上質の葉巻に火をつけ、煙を吐き出す駒泉と、それを見る武内。

「魂胆?特にないが。まあそれで勝てば、俺の要求も通りやすい。」

「・・・零式の採用はありえんぞ。あれは制式採用できる代物ではない。」

「俺が造ったものではないが・・・まあそうだろうな。通常の単座なら乙型、複座式なら壱甲・・・霊力融合が可能とする場合でも操縦士を選びすぎる。特に今回のトライアルでは条件がひどく悪い。」

「だから、なぜだ?」

「褒美だ・・・先日の、攻撃衛星への無傷の勝利。あれほどのことをしてもらった。ヤツが勝ち続ける限り、そのささやかな要求は聞いてやろうと思う。ま、俺と利害が一致するうちは。」

 駒泉はチーズをつまみに酒は一口ずつゆっくり舐めるように飲んでいる。まだ一杯目である。

 武内は、ひたすら杯をあおる。ほとんど一人で飲んでいる。

「あれはまぐれだろう?」

「続くうちはまぐれではない・・・運もよかったが、それも込みだ。」

「武内くんらしくもないが・・・では、武内くん。」

「乗ることはできん。」

「できんかね?」

「条件が合えば、考えるかもしれんが。」

「神野くんもそれでいいのかな?」

「やつも、だ。・・・終わったか。なら帰る。酒はうまかった。」

 スコッチの瓶はちょうど空になっていた。

「貴様、最近目立ち過ぎではないか?」

 そう言い捨てて武内は去った。

 東都の梅雨はとっくに明けている。明るい陽射しの中、駒泉は窓際に立った。

「・・・わたしは、あと20年くらいしか、こうしていられない。急ぐのは当たり前ですよ。」

 駒泉は秘書に聞こえない声で、そうつぶやいた。



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