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あたしと連休前とUFO〆

 翌日の学校。

 大型連休を間近に控えて、みんな浮足立って見える。

 あたしだってウキウキだった。

 今年は三連休から、三日出ての四連休!

 すごい休みの連続だ。

 どうやって過ごそう?

 今から楽しみで仕方ない。

 ……で、なんで相生さんはさっきからガクガク震えてるのかな……?


「あわわわ……我ながらベストショット……! 銀城さんのお兄さん、かっこいい……」


「そんなばかな」


 何度もスマホの写真を見て、震えていたらしい。

 おかしい。

 あのお兄ちゃんがモテる……?


「このデータを物部先輩に見せるわけにはいかない……。ライバル増えちゃう」


「物部先輩? あっ、アリちゃん先輩のこと? そうかなあ。ていうかお兄ちゃん、現実の女の子に興味ないんじゃないかなあ」


「えぇっ!? あんな恵まれた立場でそんな事が……!?」


 彼女は一体、何を期待しているのか。

 だけど、相生さんがどんなに隠し立てしても、アリちゃん先輩からスマホの写真を守り通すことは出来ない気がする。

 あたしの予想は……的中した。




「ほうほう!! これがつばさちゃんのお兄さんとな!? ふふーん、思ったよりも若い感じだねえ」


「あーん、物部先輩、返してくださーい!」


 嘘をつくのが下手な相生さんは、アリちゃん先輩に昨日のミッションについて問われ、見事に誤魔化し大失敗。

 あっという間にスマホに保存したデータを探り当てられてしまったのだった。


「のぞみちゃん、大丈夫デス」


 ニコニコ微笑みながら、相生さんを後ろから優しくハグしたのはフィルマ先輩だった。


「フィルマ先輩……」


「見事にミッションを達成したノデ、宇宙旅行に招待しまショウ。今度の連休で、木星辺りまで」


「ひぃ」


 フィルマ先輩が言うと洒落になりません。

 あたしはスススーッと移動して、フィルマ先輩の手から相生さんを取り戻した。


「宇宙怖い」


「よしよし。フィルマ先輩、宇宙旅行は本人の希望があったら連れて行くべきだと思いまーす」


「そういうものデショウカ」


 かくんと首をかしげるフィルマ先輩。

 うーむ、言葉が通じてるのに通じてる気がしない!

 そうこうしている間に、相生さんのスマホからは写真データがコピーされ、部のパソコンへと転送されていた。

 これは、デジタル写真を印刷するためのパソコンなんだそうだ。


「ふーん、これがつばさちゃんのお兄さんねえ……」


 おっ、蘭子さんが腕組みしながらお兄ちゃんの写真を見ている。


「なんだろう。妙なシンパシーを感じる」


「あー、確かに蘭子さん、うちのお兄ちゃんに近いところがあるかもしれない」


 あたし、思わずポンと手を打つ。

 蘭子さんは何か、馴染むと言うか凄いなって思うところがあったけど、それってお兄ちゃんに似てたからなんだ。

 あたしって、割となんでもできるタイプ。

 手を付ければどれでもそれなりのレベルにはなる。

 だけど、一つの分野を徹底的にやりこんだ人には勝てないのだ。

 お兄ちゃんはまさにそう言うタイプで、ゲームに関してあたしはお兄ちゃんに一度も勝てたことはない。

 勝たせてもらったことはあるけど。


「つまり、蘭子さんも一つのことを深く深くやり込むタイプ!」


 結論を口に出したら、それを聞いてた蘭子さん、びっくりした顔でこっちを振り向いた。


「えっ、なに?」


「あーいや。蘭子さんは凄いなーって」


「何が凄いのよ。フツーよ、フツー」


「蘭子が普通なら世の中の普通って随分偏ったものになるよねえ」


 アリちゃん先輩が茶化した。

 とりあえず彼女は、お兄ちゃんに関しては保留することに決めたようだ。


「私はもっとこう、男臭い方が好みで」


 ははあ、そうですか。

 アリちゃん先輩の男性の趣味には興味はないので、あたしはスルーした。


「正しい。アリの語りは架空の彼氏に関するトークが多いからね! だがあの妄想力は凄い」


「やめろ蘭子!? 私の尊厳が!!」


 大人っぽい美人さんのアリちゃん先輩が、どうやらずっと彼氏いないガールだって言うのは意外かも。

 でも、考えてみたらここって女子校だし、放課後もずーっと部活で遊んでるし。

 男子と接触する機会がないかも知れない。


「うっ、つばさちゃん、その目は一体なに」


 たじたじとするアリちゃん先輩。

 

「がんばりましょう、アリちゃん先輩!」


「やめて! そのポジティブ、あまりうれしくないポジティブだよー!」


 部活の空気は、すっかりアリちゃん先輩いじりになった。

 果たして、アリちゃん先輩には彼氏ができるのか?

 色々選り好みしてる宣言をしたが、それは果たして本意なのか?

 などなど。

 これ、話題の中心であるアリちゃん先輩もそんなに嫌がってない風だ。

 この人、とにかくどんな事でも、みんなとワイワイ騒ぐのが好きなんだな。

 そんな騒ぎの最中、部室の扉がガラガラと開いた。

 あれ?

 二胡先生かな?

 ふと振り向いたあたしの目に写ったのは、見覚えのない女の人だった。

 同じ制服姿だけど……あれ。

 あのスカーフの色って、三年生……。


「皆のもの!! 連休は撮影旅行に行くぞ!!」


「あ、部長」


「部長だ」


「久しぶりデース!」


 写真部部長の登場である。

 コシのある黒髪を、腰までストレートに伸ばした彼女は、物凄い目力のある女の人だった。


「受験勉強ばかりしてたら気が滅入った!! いいか!? 撮影旅行にいくぞ!!」


 彼女は腹の底から響き渡る大声で、そう宣言したのだった。

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