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公園と先輩とUFO3

「うおおお、足が、足がパンパンで……」


 蘭子さんがフラフラしている。

 足漕ぎボートで頑張ったので、足がだるくなっちゃったみたいだ。


「蘭子さん、あたしおんぶしよっか?」


「いや、それはさすがに遠慮しとく……」


 よたよた歩いた彼女は、ボート乗り場横のベンチに倒れ込むように座った。

 すぐ近くには、池を臨めるレストランがある。

 割と混んでるみたい。

 だらーっとしていた蘭子さん。

 ちらっとあたしを見ると、


「お腹へった?」


「少し……いや、結構」


「そんなに食べて、また育つ気か……。いや、いいでしょう。ソフトクリームを奢ってあげよう」


「おおー!! 蘭子さん、太っ腹ー!!」


 レストランのテイクアウトコーナーで、二人並んでメニューを見る。


「あっ、さくらソフトだって。春季限定……」


「はいはい。さくらソフト二つー」


 ということで。

 またベンチに戻ったあたしたちは、並んでソフトクリームを食べることになった。


「ンマー! 美味しいー!」


 空きっ腹に、ソフトクリームが直撃!

 うーん、育ち盛りには堪りませんなあ。

 これ以上身長は伸びてほしくないけど。

 ギリギリまだ174センチなんだから、ここでストップして欲しい……。

 だけど、恨めしいかなあたしの食欲はとどまるところを知らないのだ。


「よく食べるねえ……」


 チロチロとソフトクリームを舐めてた蘭子さん。

 あたしを見て、感心したみたい。


「なんか、見てるだけでお腹いっぱいになってくるよ」


「ごちそうさまでした! 美味しかったあ。あ、蘭子さんが食べ終わるまで待ってます!」


「うん。……私のも食べる?」


「いいんですか!?」


 あたしの目は、キラキラしてたかもしれない。

 もう一本のさくらソフトクリームも受け取って、ぱくり。

 んまーい!

 蘭子さん、表の方をちょっと舐めただけだもんなあ。

 少食なのかな?


「あー」


「んむ?」


「間接キス」


「むっ」


 蘭子さんが変なことを言うので、あたしは一瞬止まった。

 だけど、あたしの食欲はそんなことではひるまないのだ。

 もりもりもりもりーっと一気にソフトクリームを平らげていく。

 カリッカリの分厚いコーンまで食べちゃって、ポケットからハンカチを取り出して口をふきふき。


「ごちそうさまでした」


「平然と平らげたねー。ハートが強い」


「ありがとうございます。色気より食い気です」


「また育つわよー」


「ええ……勘弁してくださいよー」


「そんだけ食べて育たない訳無いでしょ……。ほら、次々」


 蘭子さんに誘われて、あたしは公園をてくてく歩く。

 おっ、なんだか左手に見えてきました。


「あれね、プール。夏場になると開放されるの」


「へえー! 蘭子さん、夏に来ましょうよ!」


「ええ……。私泳げない」


「じゃあ、あたしが浮き輪になるんで掴まってれば」


「どういう絵だ! いや、絵的には面白いかも……。でも私が写るのはやだなあ」


 おや?

 ちょっと顔が曇った蘭子さん。

 そう言えばこの人、部室に遭った写真に一枚も写ってないんだよね。

 ずーっと撮る側みたい。

 なんか、撮られたくない事情があるのかな……? 


「ああ、ほらほら、つばさちゃん! こっちこっち! プールは開いてないって言ったでしょ」


 おっとっと、考え事してたら、プールの方に近づいてしまっていた。


「もみじ……橋?」


「そう。秋に来たら紅葉とかすっごいんだよー」


「はえー。じゃあ、公園は秋が一番旬……!」


「いやいや。春の公園もオツなものよ。こっちこっち」


 左手にバーベキュー広場を見ながら、あたしたちは直進。

 公園の前をぶらぶらと歩いてずうっと行くと……。

 目の前に一面の花畑が広がっていた。


「うおわー!」


 あたしは変な声を出していた。

 これは、ネモフィラ? あとは、知らない花かな? それこそ、見渡す限りいっぱいに色とりどりの花畑。

 青、白、オレンジ、紫、黄色……。


「ほらほらつばさちゃん、何やってるの。撮るよ撮るよー!」


「あ、はい!!」


 ポケットから、スパッとレンズ付きフィルムを取り出して撮影開始!

 周りにもたくさん人がいて、みんな撮影をしているみたい。

 そうだよねえ。

 昭和記念公園って、シャッタースポットの宝庫みたい。

 パシャパシャやっていたら、あっという間に残りのフィルムが少なくなってしまった。


「あー」


「ほらほら。フィルムの量は限られてるんだから。……でも、桜の吹雪と違って、シャッターのタイミングはずーっとだからね。思わずやりすぎちゃうのは分かる」


「あ、そ、そうですそうです」


「花畑は逃げないけど、一枚ごとにちょこちょこ移動して撮ってもいいかも? そろそろ、構図を工夫してみてもいいし」


「なるほどー」


 残り枚数僅かなあたし。

 蘭子さんに連れられて、あちこちの位置から花畑を眺めてみる。

 ほえー。

 ほおー。

 見る角度で、目に映る花が違う。

 だから、花畑は全然違う表情を見せてくれるのだ。

 これ、一箇所に立ち止まって撮ってたんじゃ、もったいないぞ。


「むっふっふ、つばさちゃん、カメラマンの目になってきてるね」


「そういう蘭子さんも、テンション上がってますね!」


「そりゃそうだよ。私、カメラを手にしてる時が本体だもの!」


「本体……!!」


 凄い話を聞いてしまった。

 つまり、写真部外の蘭子さんは、世を忍ぶ仮の姿……なんてね。


「そしてつばさちゃん、ここを半周すると向こうにも花畑が! 行くよ!」


「はいっ、お供します!」


 ということで、あたしたちは夕方迫る公園を走るのだった。

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