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公園と先輩とUFO2

 西立川駅で降りたら、二階からいきなり公園に入れるんだって。

 まるで動物園みたいな入り口でびっくり。

 入場料は450円……!

 部費で落ちるからいいけど、なかなか大きな出費だ。


「電車代もあるし、入場料もなかなか……こ、これはお金がかかる……」


「まあぶっちゃけ、高松町側の入り口があるからそっちから入れるんだけどね」


 今、アリちゃん先輩が聞き捨てならない事を言ったっ!

 立川市高松町って、北崎女子がある町。

 つまり、徒歩で昭和記念公園なんて簡単に来れるんじゃない!


「どうして電車に……」


「ここの入り口、大好きなの」


 さっさと入り口のゲートをくぐった蘭子さん、ニコニコしながら言う。


「ま、そう言うこと。部長が出てこない今、副部長様の権限は絶対なのよー」


 アリちゃん先輩、あたしの肩をぽんぽん叩きながら先へ先へ。


「そ、そうかー。副部長の権限なら……って、えっ!? 蘭子さん副部長だったの!?」


「そうデスヨー。言ってませんでしタッケ?」


 聞いてないです、フィルマ先輩。

 それに、部長が出てこないって……。


「部長はデスネ。受験勉強中デス」


 あー、そうなんですねえ。

 それにしても、新学期早々から一度も顔を出さない部長ってどうなんだ。


「銀城さん、難しい顔してないで行こう? ほら、汐見先輩、どんどん先に行っちゃう」


「えっ!? うわ、急がなきゃ! 行こう、相生さん!」


 あたしたち、一年組は遅れてゲートをくぐっったのだった。




 さて、どこに行くんだろう。

 入り口でもらってきた、地図といかパンフレットを広げてみる。

 公園の全図が書かれていて、それがマスで区切られている。

 ひとつのマスが200メートルだって。それが横に5つ並んで、……一キロ……?

 ひえー、でかい!


「さて、ではワタシ、盆栽苑に行ってきマス!!」


 入るや否や、フィルマ先輩がすっごく決意に満ちた表情で宣言した。

 いつもふんわりふわふわしてる人なのに、こんな真面目な顔初めて見る!

 そして、みんなに見送られながら、フィルマ先輩はすごい勢いで走って行ってしまった。

 その後を、慌ててスーツ姿の男女が追いかけていく。

 ……お仕事ご苦労さまです。


「フィルマはね、毎回盆栽苑見に行くのよ。それでね『時間と生命がこの小さな枠組みの中におさまってイマス! これが人類の精神! 美学というものなのデスネ!!』って必ず言うの」


 アリちゃん先輩、さては毎回聞かされてるんだな。

 入り口から進んでいったあたしたち四人。

 すぐのところに、大きな池があった。

 ぼうぼうに生えてるのは、あれは(あし)かな……?


「あ、ボートがいる!」


 池には、オールで漕ぐ普通のボートと、二人で乗り込んでキコキコ漕ぐ可愛いボートが二種類浮かんでいたのだ。

 む、むむむ。

 これは……乗りたい。


「乗る?」


 蘭子さんがニヤリと笑った。

 あたし、頷く。


「乗る」


 そう言う事になった。


「じゃあ、私達はみんなの原っぱの花畑行くねー」


「じゃあね、銀城さん!」


 アリちゃん先輩、相生さん組は、公園の奥にいくらしい。

 あたしと蘭子さんは彼女たちを見送ると、ボート乗り場にやって来たのだった。


「普通のボートにする?」


「普通のボート、明らかにあたしがオールで漕ぎまくるやつですよね。蘭子さんも一緒に漕ぎましょうよ」


「……じゃあ、ペダル漕ぐ方……? 私、体力に自信ないんだけどなあ……」


 あたしに漕がせる気満々だった蘭子さんなのだった。

 そうは問屋がおろさない。

 ということで、あたしと蘭子さん、可愛い足漕ぎボートに乗り込んだ。

 うわ、プカプカする!


「じゃーん」


「蘭子さん、ボートの中でそんな大きいカメラを取り出して!?」


「外から池を撮ったりはするけど、池の中から外を撮ったりはなかなかしないでしょ? これねえ、フィルマはカナヅチで水が苦手だし、アリは漕ぐの嫌がるしでなかなか実現しなかったの」


「そこで、あたしを漕手に使おうとしてたんですね……」


「つばさちゃんの豪腕なら行けると思って。仕方ないなあ」


 ぶうぶう言いながら、蘭子さんは漕ぎ始めた。

 よーし、あたしも頑張るぞ。


「とりゃー!」


「うわっ! 急にペダルが高速回転し始めた!! ストップ! つばさちゃん手加減して! 私の足がもげるうー!?」


 蘭子さんが悲鳴を上げたので、慌てて速度を落とすあたし。

 むむむ、これは蘭子さんのペースに合わせないとだぞ。

 水の中を、ちょこちょこと進んでいく足漕ぎボート。

 ぜーはー言ってる蘭子さんだけど、あたしはこの隙に、写真を撮らせてもらっちゃう。


「じゃーん」


「じゃーんって。あっ、それつばさちゃんのレンズ付きフィルム?」


「ですです! お父さんが買ってくれて。じゃあ撮りますねー」


「つばさちゃん、その足漕ぎのペースしながら、なんで上半身そんなに安定してるの……」


「鍛えてますからねえ。あ、いい感じ! えいっ」


 ぱしゃり。

 水草の間から、向こうの公園が見えるところを撮る。


「ふう、はあ、あそこは、公園、じゃなくて、ハーブ園で、ね」


「えー、そうなんですか! なんか色々あるんですねえ」


「つばさちゃん、戻ろう……。漕ぐのこんなに大変だと思わなかった……」


「ええー!」


 せっかく、二人で楽しく足漕ぎボートなのに。

 これは、蘭子さんの体を鍛えなくちゃいけないな、なんて思うあたしなのだった。

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