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うちと友達とUFO4

 駅前のカラオケにやって来たあたしたち。

 何故か引率は二胡先生で、せっかくの休日にあんなとんでもないものを見せられて、しかもその当事者とカラオケなんて……。


 と思ったけどすっごい盛り上がってる。

 ぺんちゃんはネットの動画で歌を覚えるみたいだけど、よっちゃんはなんか歌が古い気がする……!


「あっはっは、なつかしー! それ、私が小学生のころのだー」


 二胡先生が盛り上がっているし。

 あたしはあたしで、ちょっと前の洋楽とか。あとはアニソンとか。

 お父さんとお兄ちゃんがガンガンかけるので、なんとなく耳で覚えてしまったものだ。


「相変わらず、つばつばってあれよね。ボカロみたいにかっちり音程合わせてくる」

「上手いはずなんだけど、なんかデジタルだよね」


 なにいっ。


「完璧超人の銀城さんにも苦手なものがあったかあー。歌とか」


 ううー、なんだろう。

 二胡先生に弱点を知られてしまった!

 あたしは、音楽全般が得意ではないのだ。いや、教われば楽器とか割とすぐに出来るようになるんだけど……これだけは、いつまでも機械的な演奏だって言われる。

 歌もそうだなあ。

 絶対音程は外さない自信はあるけど、上手いって言われたことないぞ。

 っていうか、完璧超人ってなんだー!?


「うーん、最後、歌ってるんだか考えてるんだか分からなくなった……」


 どっかりと座ったあたしを、まあまあ、と二胡先生が慰める。

 そして、あたしの目線は先生の胸元に目が行く。

 それは、カメラのお兄さんをぼんやりさせた、あの万年筆。

 この部屋に入る前にも、あたしたちの前でピカッとさせたなあ。だけど、ぺんちゃんもよっちゃんも全然反応は無かった。

 うーん、なんだろう。

 なんだろうなあ。


 ぺんちゃんがマイクを持って、よっちゃんと二人で歌ってる。

 知らない歌だなあ。

 あたし、動画とかあんま見ないからなあ。


「おっ? 銀城さん、私のこれ、気になる?」


 万年筆をスッと抜き取る、二胡先生。


「フィルマさんの腕時計見たでしょ?」

「あ、はい」


 いきなり聞かれて、あたしは思い出した。

 フィルマ先輩の腕時計って、あれを使ったら周りの人たちが、こっちを認識できなくなるやつだよね?

 この万年筆って、あれと同類なわけ?


「ご想像の通り。それにおかしいと思わなかった? 汐見さんはよく駅前で写真を撮ってるのに、他にフィルムカメラを使ってる人、いないでしょ? ずうっとあそこにUFOがあるんだから、あれを撮影する手段くらい知れ渡っててもおかしくないと思わない?」

「そう言われてみると……」


 確かにおかしい。

 フィルムを使う銀塩カメラを知らなかったあたしはともかく、さっきの男の人みたいに、カメラに詳しい人はいくらでもいそうなのに。


「もしかして、先生たちがああいう人たちを、万年筆でエイッと?」

「そう。結構大事なのよー。それも彼らとの約束でね。それで、ほら」


 万年筆を取り出すと、先生はそれをピカッと光らせる。


「うわっ、まぶしっ」

「銀城さんにはもう効かないんだよね。あの子達はさっきの記憶を忘れちゃってるのに」

「ええ……」


 歌ってる二人を見ても、とても記憶を操作されたようには見えない。


「ちょっと……うちの友達の記憶とかサクッといじられると困るんですけどぉ」

「ごめんごめん! でも、国と彼らでそう決まってるの。私は一介の国家公務員だからさ……」


 国家公務……?

 あれ?

 北崎女子高校は私立だったはず……。

 ともかく、二胡先生も大変みたいだ。

 ぺんちゃんもよっちゃんも、記憶が一部飛んだ以外は普通っぽいし、ここは大目に見てあげましょう……。


 結局に、二時間くらい歌ったところで先生は帰っていった。

 よく考えたら、あの人、土曜日も仕事してるんだなあ。いつ休めてるんだろう。

 ちょっと心配になった。


「いやー、つばつばの先生、美人さんだねえ! しかも超歌上手いの! 声出てるし!」

「だね。何の先生なの?」

「……そう言えば、二胡先生の担当教科知らない……」

「ええ……」


 二人に呆れられてしまった。

 

「まっ、つばつばは細かいことを気にしないのがらしいしね! さ、カラオケの後はどこ行く? 私ねえ、その北高の上着を脱いだらゲーセン行けると思うんだよね……!!」

「ぺんめ、チャレンジャー……!」

「あれっ、ぺんちゃんに上着きせたら良くない? そうしたらあたしノーダメでしょ」


 あたしの妙案を聞いて、ぺんちゃんは青くなってガタガタ震えだした。


「あ、悪魔的発想すぎる!! つばつば、恐ろしい子……!!」


 ということで、ぺんちゃんに上着を被せて、あたしたちは一路、通りを一つ隔てたゲームセンターへ行くことにしたのだった。

 記憶のことは……うん、気にしないことにしよう。

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