表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/39

うちと友達とUFO2

「あら、つばさ。土曜日だってのに制服着てどこ行くのー?」

「むっふっふ、二人からのリクエストなの」


 あたしは、北崎女子の制服を着ていた。

 まだ半分寝ているような目をしたお母さんは、首を傾げた。

 寝癖だらけの髪がさらさら揺れる。

 お父さんと並ぶと、大人と子供みたいなサイズ差がある。

 こんなちっちゃい人だけど、昼を過ぎると凄くパワフルになるんだよなあ。


「んじゃ、行ってきます!」

「行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃーい」


 お母さんはまだまだ夢の中みたいで、特製のフレンチトーストを頬張りながら、こてんとお父さんに寄りかかった。

 うーん、いつまでも仲のいい人達だ。


「おっ」


 スカートのポケットで、スマホがぶるぶる震える。

 インストールしてる、トークアプリのPINEから、『新しいメッセージがあります』と連絡があった。


ぺん『やっほー、今どこ? 超早くついちゃった』

よしよし『ぺんちゃん早すぎ!? 私は布団から出たところだよ( ˘ω˘)スヤァ』


 二人とも、相変わらずだなあ。

 あたしはサクサクと返事を返す。


つばば『うっへっへ、ご期待通りの北高の制服ですよん』


 自撮りして、送りつけた。


ぺん『おほー! ええのう、北高の女子高生はええのう!』

よしよし『あばばばば、トラウマが蘇る・・・! 無理だったのだ、わしらには北高は偏差値が高すぎたのだ・・。。。』

つばば『テンションたっか!? んじゃ、あたし電車に乗りますので!!』

よしよし『おっ小金井? んじゃ、私もそちらに参りますぞ』

ぺん『よしよし起きたばっかでしょ。時間かかるんじゃないの。』

よしよし『んだとーこの音無佳子のマルチタスクを舐めんなよぉ』


 おっとっと。

 PINEやってると時間が経つのを忘れちゃう。

 あたしは慌てて、JR武蔵小金井駅に駆け込んだ。

 中央線に乗って、一路、立川へ!


 あたしの中学時代からの親友である、音無佳子と辺見花純。

 今朝、フレンチトーストを食べた後、あたしは二人に連絡を取った。立川で遊ぼう? と。

 そうしたら、ちょうど暇だったらしい二人は即座にOK。

 その代りのリクエストが、この制服姿というわけ。

 スマホを見ていたら、ぺんちゃんこと花純が延々と一人で喋っていて、よっちゃんこと佳子は既読もつけていない。

 これは、よっちゃん全力で準備モードだな?


 武蔵小金井駅から立川駅までは、快速と言う名の各駅停車に乗って、四駅目。

 あっという間に到着する。

 待ち合わせは立川の北改札前だ。

 ここは新しい出口で、モノレールが通る真下に出てくるんだ。

 向かいにあるカフェの前で、見覚えのある娘が待っていた。

 すらっと足が長くて、ブルーのキャップに黒いシャツ。まだ四月で肌寒いのに、二の腕をむき出しにしてニットのカーディガンの袖を、腰で縛ってかっこつけている。

 新調したっぽい黒縁眼鏡の下から、やたらと強い目力のある顔が覗いていた。


「や、ややややや!!」


 彼女はあたしを見て、ぴょんと跳ねる。

 本当に跳ねた。


「北高の制服!! あひゃああああああ! 尊い! すごい! ああああつばつばが北高の制服着てるう! やっぱ制服カワイ……かわ……?」

「おい」


 あたしは歩み寄りざま、彼女のキャップ越しにチョップを叩き込んだ。


「ぐわーっ!?」


 頭を押さえて悲鳴をあげる、辺見花純こと、ぺんちゃん。

 うん、結構いい音したね。

 久々で加減を誤った……。


「額が割れるかと……! これ以上私の頭が悪くなったら責任を取って、つばつばは私を嫁にするべき!!」

「やーだよ! ぺんちゃん料理も掃除もできない系女子じゃん? あたしは生活力のある女子が好きだなあ」

「ぐぬぬ、贅沢を言いおって! 北高生めえ。つばつばをそんな子に育てた覚えはないわよ!?」

「育てられてないっつーの!」

「うおーっ! またチョップは勘弁!! ぬおおおおー!」


 あたしのチョップを、両手で受け止めるぺんちゃん。

 だが甘い。

 両手程度であたしのパワーに対抗できると思われては困るのだ。

 あたしはぐんぐんとチョップを押し込んでいく。

 ぺんちゃんは両手をぷるぷる震わせながら、近づくチョップに絶望の悲鳴を上げた。


「お、おのればけものめえ!!」

「何をしてんだ、あんたたちは」


 そこへ、あたしの脇腹をつつつんっと突く指先。


「ひゃあっ」


 くすぐったさに、あたしは仰け反った。

 ぺんちゃんがその隙に、驚くほどの速さであたしの前から消える。

 流石、元シューティングガード。

 彼氏との約束がなければ、あの日レギュラーになっていたかもしれない女だ。

 その彼氏とはすぐに別れたらしいけど。

 そして、あたしに気づかれずに背後を取ったのは、予想よりも遥かに早くやってきた、もうひとりの親友。


「よっちゃーん!」


 振り返ったあたしは、バッと手を広げた。

 すると、サラサラの髪をロングにした、切れ長の目の女の子が飛び込んでくる。


「つばつばー!! 会いたかったー! うんうん、また育った?」

「育ってないわ!」

「あっはっは、相変わらずでかいー。つばつばに抱っこされていると、昔に帰ったみたいだよー」


 辺見佳子はそう言いながら、あたしの背中をばしばし叩いた。

 ストライプのシャツに、紺色のジャケットを羽織ってる。大人っぽい格好だ!

 彼女は元ポイントガードで、あたしたち三人のリーダー格みたいな娘だった。

 んで、あたしは元センターね。

 久方ぶりに集まった……と言っても十日ぶりくらいなんだけど、今日はこの三人で立川を遊んでしまおうという訳なのだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ