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顧問と秘密とUFO4

「あれ? もう開いてる……」


 ガラッと扉を開けて入ってきたのは、アリちゃん先輩。そして蘭子さんにフィルマ先輩。


「二胡一尉さん!」

「違いまーすー。今の私は二胡先生ですー」


 いきなりフィルマ先輩に呼びかけられて、先生は面白い顔をして否定した。

 それを横目に、アリちゃん先輩がこっちに気づいた。


「ああ、二人とももう来てたんだ。どう? ニコちゃん先生可愛いでしょ。ちょっと怖いけど」

「怖いです」


 相生さん真顔だなあ。


「色々聞いたんですけど、元々のお仕事とか任務とか考えると怖くなるのは仕方ないんじゃないですかね」

「おっ、つばさちゃん強心臓」


 アリちゃん先輩、それどういう意味ですかっ。

 そんなやり取りをしていたら、スーッと蘭子さんがあたしのところに走ってきた。


「なにっ! もうカラーフィルムの現像始めるんじゃない! やろうやろう! ほらつばさちゃん暗室作るわよ! ゴーゴー!」

「は、はい!」


 きらーんと光る蘭子さんの目には、現像セットしか写ってない。

 あたしを従えて、テキパキと準備をしていく。


「ぶっちゃけ暗室はいらないって言うけど、そこは雰囲気だからね。心構えって言うかなんて言うか、暗くなると気持ちが引き締まるから」

「はい!」


 蘭子さんが指示をして、あたしが体を動かす。

 あっという間に理科室は、暗室みたいになっていった。

 これってなかなかいいコンビネーションじゃない?


「銀城さんしか働いてなくない……?」

「蘭子さんは司令塔だから! 蘭子さんはちっちゃいから力仕事する時大変なの!」

「ち、ち、小さくないから」


 相生さんのツッコミに、あたしは蘭子さんをフォロー……したつもりなのに、彼女はなぜかプルプル震えている。

 ちっちゃいこと気にしてたんだなあ……。

 でも、あたしは小さい蘭子さんは可愛いし、カメラのことなら頼りになるし、好きだけどなあ。


「よっ……と」


 背伸びして、理科室の真ん中に暗室のカーテンを取り付ける。

 対面では、やっぱり長身の二胡先生。

 あたしたちは脚立いらずだ。


「ほらほら、つばさちゃん、現像するんでしょ。現像。お姉さんが教えてあげるから」


 あっ、蘭子さんがお姉さんぶっている。


「はい! あたし、こないだ撮った写真を見たくて仕方なかったんです! 教えて下さい蘭子先輩!」

「うん、よろしい!!」


 蘭子さんの機嫌がすごく良くなった。

 アリちゃん先輩とフィルマ先輩が、これを見て二人でニコニコしてるけど気にしない。


「現像、先生はされないんですか?」

「んー、私はカメラのことが全く分からないので、いるだけなのだー」


 相生さんが、二胡先生に聞いている。

 まさかのお飾り顧問!

 全くということは無いと思うけれど、二胡先生はフィルマ先輩がいるから、ここにいるんだもんね。


「ということで、やって行こうか。一応、やり方はモノクロフィルムの現像と変わらないんだ。だけど、撮影してる数が多いからね。薬品を多く使うの。薬品は下水に流せないから、タンクにきちんと貯めてうちで契約してる業者に引き取ってもらう。それで監督者が必要になるってわけ」

「なるほどー。でも、作業をするのは蘭子さんたちなんですよね?」

「そ。でも私達はまだ未成年だし、責任を取ってくれる大人が必要ということ。さあやっていくよー!」


 バリバリと動き始める蘭子さん。

 まず用意したバットにお湯出しして、これを人肌よりぬるいくらいの温度になるまで冷まして……。

 やることは、以前の現像作業と一緒。

 フィルムをタンクに入れて、現像液。

 この現像液が、発色現像液なので、ちょっと違うんだ。

 二回目ともなると、あたしも相生さんもちょっとは勝手が分かる。

 アリちゃん先輩とフィルマ先輩のフォローもあって、サクサクと現像は進んだ。

 その間、二胡先生って本当にぼーっと見てるだけなのだ。


「あ、ニコちゃんジュース飲んでる」

「いいじゃんー。現像中は暇なんだもん」


 なんか二胡先生、先輩たちが来てから、急にリラックスしたような……。


「ニコちゃんの雰囲気変わった気がする?」


 そうしたら、そんなあたしの気持を読んだみたいに、アリちゃん先輩が囁いた。


「ニコちゃんね、人見知りなの。だから初めての人の前だと、ちょっとキリッとして見えるでしょ。興奮して我を忘れると変になるけど」

「あの不穏な感じ、緊張してたのかあ……」


 なんだか困った先生だ。


「もちろん、元々は硬いお仕事だから、締めるところは締めるよ? それに話は聞いたと思うけど、ニコちゃんが負ってる責任って重大だからね。それだけの能力があるし、プレッシャーだってあるでしょ。ある意味ああやってだらだらできるの、凄いとは思うんだよね」

「た、確かに……」


 教卓に顎を乗せて、ジュースの缶を咥えてカタカタ言わせてる。

 何やってるんだろうあの人。


「ほい、つばさちゃん、フィルム干してー!」

「あっ、はい!」


 二胡先生を観察していたあたしは、蘭子さんの呼びかけで現実に引き戻された。

 フィルムをクリップに引っ掛けて……。

 おお、おおおお!

 なんか、ちょっと色が付いてる気がする……!!

 これを準備室に持っていって、埃が付かないように干すんだよね。

 多分、今日はこれでおしまい。


「はあー。なんかこう、ドッと疲れたあ」

「おつかれおつかれ。銀城さん、注目の的だったもんね」


 相生さんがあたしの肩を揉んでくれた。

 いや、全然凝ってないから。

 くすぐったいくすぐったい!

 じゃれてけらけら笑っていると、二胡先生がじいっと見つめてくる。


「先生、肩揉んで欲しい?」

「教え子に強制はできないナー」


 わざとらしい!


「ニコちゃん先生はお疲れだぞ! みんなで揉めー!!」

「な、なんだって!? 私の肩は二つしか無いのに、一度に来るなー!」


 ということで、みんなで二胡先生を揉みほぐすことになったのだった。

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