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ダンジョン&ダメガールズ -岩の中にいる-  作者: 仲田悠
第二話「まち」
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可哀想な生け贄が捧げられました どうしますか?

 何か、激動の瞬間を連続して見てる気分。ランシェがとにかく凄い。ランシェが出発してから一週間程でラビリンスの皆もランシェの凄さを実感出来たわ。

「だ、団長殿。本当にこれ等全てがランシェの手によるものなのかや……?」

「あ、ああ、信じられん……。我が国の伯爵家から親書が届いてな……」

「貴族を動かしたのか!?」

 動かしちゃいました。不審がられない様にって事でニアにはランシェ側の動向を伝えないでいたんだけど、それで正解だったと痛感する。この状況に驚かないヒトなんて居ないわよ。スノウな私も親書に含まれてた目録を見て改めてびっくり。

「え。これ村を一つ送ったって言わない?」

「正にそれだ。伯爵閣下のお力添えで国内から様々な物資や失業者を掻き集めてくれたらしい。しかもこちらの負担は一切無しだ」

「なんじゃとお!?」

「お金掛からないの!?」

 人材も家畜も物資も掻き集めるだけ掻き集め、村一つ分って規模の増援を伯爵からの援助って名目でタダに抑えちゃったのよ。

 人材は失業者ばかりだから優秀とは言い難いけど、一から始める場所なんだから全く気にならない。人海戦術が出来るだけで十分。家畜や作物の種とか苗は不足分や増援分をばっちり賄える量。果樹まで用意してくれてる。物資だって暫く補給は要らないんじゃないかってくらい。

 だから荷馬車や乗り合い馬車が物凄い行列を作ってラビリンスに入るのを待ってるの。

 ここでニアに交信して事情を話す。やっと話せる。ほんと凄いから。

【ランシェ凄いのよ。これでまだ始まりにしか過ぎないんだもの】

【ど、どう言う事じゃ?】

 間違いなく表情に出るくらい驚くから、材料を見に行くと伝えてニアを引っ張りだそう。一応周囲を気にしつつ、交信を続けたままで説明する。

【何か、大勢の貴族の弱みを握ってた】

「ぶふぅっ!?」

 ほら驚いた。普通に吹いたし。

【ほら、嘘は通用しないって話じゃない。何か裏で悪どい事をやってる場合も察知出来るみたいなの】

【何じゃその高性能過ぎる嘘発見器は!?】

【ね。で、中でもすぐ解るのが少女趣味の下衆男なんだって】

 つまり、ランシェを見てちょっかいを出そうと考えた瞬間にそいつはランシェのカモになる。幼女の外見を利用した身辺調査も軽くやって、何かしら掴んだ状態でキープ。そんな事を各国でやってたみたいで、私とイヴが同行する事によって脅す事まで出来る様になった。この為に妖精の分身が必要だったらしいから本来の分身と妖精の分身の二人を着けてる。

【自分には妖精の友達が大勢居て、その友達にお前の悪事を調べて貰った。王様に通報されたくなかったら言う事を聞け。ちなみに護衛の彼女はSランク冒険者だぞ。と、これで勝ち】

【うはぁ……!】

 大抵の手口は裏で手を回して娘持ちの親に多額の借金を負わせ、娘を奉公人として抱え込んで好き放題やるって形みたい。要するに幼女を監禁する為の裏工作。事実の広め方次第じゃ立ち直れないくらいの打撃を被るから、向こうも大人しくこっちの言う事を聞く。

【そこで取り引き。それを揉み消せるくらいの功績を立てさせてやるから、ラビリンスの為に金を使えと持ちかけた訳よ。秒で頷いたわ】

【頷くに決まっておろう。それで村一つ分を丸々援助か】

 そのついでに囲われた子、既に大きくなってた女性の借金もチャラ。解放されてラビリンスに来てくれてる。かなり前から握ってた情報みたい。

 この援助でラビリンスが安定すれば、ラビリンスで何か新しい発見が有った場合に先賢の目が有ると称えられる事になる。で、間違いなくそうなるとイヴからも援護を貰ったから大喜びで支援を決めてくれたわよ。

【そしてトドメがこれ。称えられ続けたかったらラビリンスに害を成そうとする者を全て排除しろ。それもまた功績になるから悪くないだろう、ってね】

【今後の安全まで確保された訳か。見事な仕事ぶりじゃぞ】

【ね。たった今、別の国で二人目を頷かせたわ。近隣諸国で一国につき一人は強請るって】

 草むしりって言葉は将来ラビリンスを狙う悪党を間接的にでも何とかしようって意味だった。ラビリンスの外に、それも貴族の監視を置けたのはかなり大きい。その貴族自身ももしかしたらラビリンスを狙ったかもしれないしね。

 本当に激動の瞬間の連続。イヴも最初は驚くのに我慢するので必死だったみたいだし、手腕を高く評価してる。面白がってもいて、今の交渉もノリノリで合いの手を入れてたわ。

 そのイヴも平行して動いてくれてる。

「お。あんたがニァラスゥナさんかい?」

「む。確かにそうじゃが、そなたは?」

「この行列の護衛をイヴさんに依頼された冒険者さ。面白えダンジョンが有るから、見に行く様なら護衛もやってくれってな。ニァラスゥナさんが友好的な魔族で、ポーション作ったり武器に魔法をエンチャントしたりで店を開くって聞いて顔を見せておこうと思ったんだ」

「ぬあ。そうか、イヴが話をしておいてくれたのか」

 冒険者達に護衛の依頼を出し、依頼内容の一部としてラビリンスの事を宣伝。ニアの事も補足してくれてて友好的だから襲わずに頼れと伝えて貰ったの。

 依頼内容の一部だから受けた冒険者達にしか伝わらず、無用な混乱を招かないで済んでるわ。

「妖精と一緒なら間違い無えな」

「安心して良いわよ。私はスノウ。宜しくね」

「パラスと言います。ここのダンジョンは面白いですよ」

 私達も居ればすぐ順応。

「ダンジョンの入り口に町ってなあ初めて聞いたぜ。ギルドから聞いた話じゃ特殊な結界で魔物がダンジョンの中から出て来ねえそうじゃねえか」

「うむ。しかも内部で面白い物も見つかっておってな。料理本や農法の指南書、薬草や素材の類が有ったのじゃ」

「かなり広いみたいだし、まだ別のダンジョンが有りそうなのよ。閉じてる入り口っぽいのが二つ有るの」

「おいおいおい。想像以上だぞ」

 後はダンジョンにハマってくれれば良し。ギルドまで案内して、前から頑張ってる冒険者達に紹介しましょう。

「歓迎するぜ。あんた等が連れて来てくれた増援のおかげで俺達も探索に専念出来るからな。今のところ地下三階まで探索が進んでるんだが、かなり広いもんだから冒険者の増援も大助かりだ」

「騎士団一件も込みで手一杯な広さでな」

「ひゅう。そいつあ凄え」

「そんな広えダンジョンなんて入った事無えよ」

 まだまだ余裕。女神様やニアが作ってくれたダンジョンだってかなりの広さだし。家じゃ女神様と二人でこつこつ増やしてるしね。同じコンセプトの階層を纏めて一つのエリアとし、それを幾つも用意して山脈内に点々と配置。エリア間は転送効果の魔法陣で移動させる。セーブポイントとはまた別ね。単純にフロア間を楽に繋げる為で、ダンジョン全体の構造を掴みにくくする為でもあるわ。

「見ての通り、ここのギルドはまだ工事中で営業もまだでな。地図情報も騎士団と共有してるから今ならロハで見せるぜ」

「そいつあありがてえ。悪いが頼む」

「ああ。……こいつだ」

「「うお……!」」

 あ、地図情報も売り物になるのね。大きな地図が広げられて新参者達がどよめいた。私も少しびっくり。これを持ち歩きながら書き足して行くって凄く大変そう。

「え、これいつも持ち歩いてるの?」

「ああ。探索中に書くのは別の紙だがな。帰ってからこいつに書き足してる」

 やっぱりそう言う工夫をしないと邪魔よね。作った本人でも呆れる広さだわ。探索中に見る時は折り畳んでるみたい。そうなるわよね。

「ここで家を買う事も考えた方が良さそうだな」

「ああ、それな。俺達も渡り鳥だったんだが、もう土地を予約しちまったよ。場所が有る今の内だぜ」

「「うんうん」」

 定住しなさい。歓迎するわよ。ギルド直轄の町なだけあってギルドが役所も兼ねてるから土地の予約もここで出来る。今なら確実に買えるし、後払いでも問題無いから予約すると良いわ。




 ランシェからにくい贈り物。贈り物と言うか加勢なんだけど、ランシェ個人から送り込んでくれたの。

「ら、ランシェお姉ちゃんの弟のラニですっ。宜しくお願いしますっ」

「うお。弟じゃったか。妾はニァラスゥナ。ニアと呼んでおくれ。宜しく頼むぞ」

「はいっ」

 ランシェと殆ど背丈が変わらない可愛らしい弟を手伝いに寄越してくれた。ニアが驚いた様に女の子と間違えるくらい可愛い。私の事情を全部話してあるし、ランシェから素敵な伝言まであるから到着を楽しみにしてたのよ。

「ランシェが好きに使って良いって」

「なん、じゃと……!?」

「きゃー……!」

 殺さなきゃ何をやらせても良いって。その一言に女神様もニアも目の色を変えた。変えると確信してた。と言うか、会わせて貰った時に私が女神様とニアが喜びそうって言ったのが原因。そう言った瞬間に好きに使ってくれと返してくれてる。

 何でも両親を早くに亡くしてランシェが女手一つで育ててきたらしく、ラニはランシェの命令に逆らえないらしいわ。もうね、一言で表せる。

「薄幸の美少年よ。幸せにしてあげて」

「はぅあっ!?」

「くはーっ! 任せよー!」

「ニアさんニアさん! 山分け! 山分けで!」

「うむ!」

 薄幸のショタとしか言えないから。ランシェなりにラニの事を色々と考えてあげてるみたいだけど、端目から見た扱いは結構酷い。まず、名前で呼ばない。弟と呼んでる。これは他意が有る訳じゃなくて、両親に対しても父とか母って呼んでたみたい。本人に対して父とか母とか。お父さんお母さんじゃないの。父母。面白い。

 ラニ自身も気弱みたいで押しにも弱い。だから男の娘に出来そうだと内心で狙ってるわ。多分ニアもそう考えてるから。って言うか、あの様子だと確実に押し倒す。むしろ押し倒せ。

「して、ラニ。そなた何が出来る?」

「えと、家事全般と料理なら……」

「ふむ。技能的な事は習得しておらぬか」

「は、はい。すみません……」

 こう、虐めて下さいオーラも発してて可愛いのよね。ランシェの教育と言うか接し方のおかげで精神的にタフではあるらしいんだけど。それだけに好きに弄れって事みたい。

「覚える気があるなら妾が錬金術を教えるぞ」

「えっ。ほ、ほんとですかっ?」

「うむ。正直、ここに来ている錬金術師はアテにならなくてな。妾が悪魔族と言う事もあって助手が欲しいと思っておった」

「覚えてみたいですっ。教えて下さいっ」

 それも手よね。

 道具屋兼家が出来たら私の家と繋げるつもりでもあるから、家事なんかはイヴがやってくれる事になってるし。家の事より店の手伝いの方がありがたい。町の機能的にも。

「後でお店の制服を用意するわ」

「うお。頼む」

「私もお願いします!」

 こうなると制服を用意しないと駄目。ニアは仕事着としてばっちり決めたいし、他は可愛いひらひらな制服で。メイドっぽくしても良いわね。イヴが家でも使える様に。男物は用意しない。ラニは男の娘にする。これは絶対。

 イヴが一緒に暮らすと伝えてある事や、魔法薬品以外にも取り扱うだろうからって事で工事中の店はかなり広いし、その広さで二階建てだから家になる二階もかなりの広さ。客間も用意してるし私の家とも繋げるからランシェも入居する事になったわ。当然ラニもね。生活がどんどん楽しくなっていって良い感じよ。

次話より更新時間をとさせて頂きます。

毎日12時更新から毎日22時更新となり、本日22時に次話を更新致します。どうかお楽しみ下さい。

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