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ダンジョン&ダメガールズ -岩の中にいる-  作者: 仲田悠
第二話「まち」
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電波的な幼女が現れました どうしますか?

 無事に農法の指南書が見つかってラビリンスがまた盛り上がってる。既にダンジョン帰りの騎士団員や冒険者達は英雄扱いで、何かしら見つける度に皆で喜ぶ様になってるわね。こう言う盛り上がりが続くと良いんだけど。

「ふむ? スノウや。あの幼女に見覚えはあるかや?」

「え。幼女どこ。可愛い?」

「ぷふっ。幼女も対象か……!」

 不意にニアから素敵な言葉が。ここでロリなんか見た事無いわよ。見たら絶対忘れないし。あ、ほんとだ居た。幼女よ。凄い小さくて、しかも可愛い。つまり正義。百三十にすら届かなそうな身長なのに大人用の大きいリュックを背負ってるから妙に目立つ。補給部隊か行商人の子供かしらね。キョロキョロしてる所を見ると親を探してるのかも。

「迷子かしら。今補給部隊か行商人は来てるっけ?」

「ふむ。その子供か。ん。こっちに来たぞ」

 あ、ほんとだ。ジロジロ見てたのに気付いたのかしら。って、走り始めた。私達を見据えながら、無表情で。やっぱり気付いて怒ってる?

「見つけた。ランシェの神様」

「「は?」」

 え、何? 神様? どう言う事? ニアが?

「妾は神などではないぞ」

「違う。その妖精の姿をした神様。そっちの妖精も神様っぽいけど。ランシェの神様はこっち」

「うお」

「まあ」

 うあ。私を指差した。無表情のまま。怒ってる訳じゃなさそうだけど、何なんだろう。

「私はスノウ。ただの妖精よ」

「ランシェを欺けると思うな神様。その魔力波はこの山脈の物だ」

 ちょ、精霊使いか何か? イヴみたいに気付かれたっぽいわね。周囲に誰も居ないかしら。……うん、大丈夫そう。

「皆には内緒ね。本当の名前はユキ。この山脈そのものよ」

「解った。名前はランシェ。ノームの行商人」

「おお、すまん。ノームじゃったか。幼子かと勘違いしてしまった。妾は悪魔族のニアラスゥナ。ニアと呼んでおくれ」

「宜しく。ニアは良い悪魔族。魔力波が優しい」

 へえ。性格なんかも見抜けるんだ。魔力波って言うの凄いじゃない。

 ノームって種族は前に女神様から教わってるわね。ドワーフみたいに小柄で器用だけど、ドワーフより非力で寿命が若干長いって種族。種族的にこんなに可愛いなんて凄く良い種族だわ。

「魔力波とは何じゃ?」

「え。魔法関係の力じゃないの?」

「魔力波は魔力波。色んな物から発信される。ランシェは受信出来る特別な存在。ぴぴぴ」

 つまり電波かっ。電波系幼女かっ。何もかも納得したっ。

「ノームとはそう言う種族じゃったか?」

「ううん。ランシェだから。嘘を見抜けて便利。だから行商人になった」

「良く解らんが、確かに便利じゃ」

 しかも本物の電波系よ。本当に受信しちゃってるわ。流石はファンタジー世界。凄い子に出会えちゃった。そんな子が私を神様って呼んでるって言うのも凄い。でも私は電波系じゃないから。多分。

「それで、私に何か用?」

「用? ユキ様はランシェの神様。だから来た」

 電波系だっ。話が微妙に噛み合わないっ。

「えーと、うん。じゃあ私の手伝いとして行商して貰おうかしらね」

「解った。作戦内容を要求する。極秘任務なら魔力波で」

 魔力波でって、交信すれば良いのかしら。

【聞こえる?】

【おお。いつもより良く聞こえる。流石神様。受信ぴぴぴ】

 大丈夫みたい。解ってくると面白い。私の計画やここの情報を纏めて送ってみよう。ついでに他のヒトが居る時はスノウと呼ぶ様にとも頼んでおかないと。

「作戦内容受信。必要そうな物を買い集めてくる。予算の提示も要求したい」

「ぬお。交信したにしては早くないか?」

「情報を纏めて送ったら受け取れたの」

「ランシェは受信特化型。大容量の情報でも一括受信可能」

「やけに高性能じゃな……」

 でも電波系だからで片付いちゃうのよね、きっと。だって電波系だもの。

 とにかく協力してくれる行商人が出来たのは凄く大きい。騎士団長に紹介しましょう。

「おお、ノームだったか。これは失礼した。誰かの子供かと思ったぞ」

「構わない。見た目も油断を誘う武器になる」

「ははは。成る程、どうやら優秀な行商人の様だな」

 見た目も武器かあ。確かに油断するかも。会話すると不思議の世界に突入するけど。

 それより予算の確認。騎士団長やギルド支部長の裁量で動かせる額を教えて貰う。

「了解。足りない物は?」

「ありがたい。そうだな……」

 確認したら注文。ここは出来れば作物の苗が欲しい。農法が見つかってるし、錬金術師も大分やる気を出す様になってるからアーティファクトを使った農業が可能になってるのよね。錬金術ギルドへの苦情も利いて良い資材が入ってくる様にもなってる。

「ん。集めてくる。必要そうな物も一緒に」

「頼む。他の行商人も色々と持ち込んではくれるが、必要な物を確かめてくれる者が出てくれなくてな」

「愚か者どもめ。ここがこの一帯の今後を左右する場だと解らんのか。無能は皆死ねば良い」

「「ぶふっ」」

 ほんとに、この子は……!

 電波系どころか毒舌電波系じゃない。賢いのも好印象だし。無表情のまま毒舌を吐くのも中々に萌える。

「スノウ。ここの案内を要請する。他に必要そうな物が無いか確かめたい」

「良いわ。じゃあ、ニア。ちょっと行ってくるわね」

「うむ。頼むぞ」

 私を指名って事は案内だけじゃないわね。交信してみましょうか。

【私に相談事かしら】

【うん。その体は増やせる?】

【増やせるわよ。必要?】

【必要。ユキ様の事も知りたいし】

 なら、後で妖精の分身を新しく作って同行させましょうか。私もランシェの事が知りたいしね。名前はランシェに決めて貰いましょう。

「無能ばかり来てるらしい。話にならない」

「ランシェもそう思う? 結構カツカツなのよ」

「町から始めるにしても足りない。ランシェの本気を出す時が来た」

 行商人から見ても足りないかあ。もうちょっと融通を利かせて貰えればって皆で話してたところなのよね。苗とか種とかもう少し欲しいし、家畜の数も少し足りない。このままだと外から定期的に仕入れないといけなくなる。周辺諸国が敢えてそれを狙ってるとも考えられるから、協力してくれる行商人が欲しかった。せめて自給自足は可能にしたい。冒険者が増えると耐えられないと思う。

 そうそう、私の為に頑張ってくれるんだからイヴも紹介しないとね。

「う。既にペット居た」

「はい?」

「あはは。人間関係的な事も見抜けるの?」

「うん。ランシェの目は誤魔化せない」

 そして会わせた途端にこれ。名乗る前に下僕だと見抜いたし、可愛い事に下僕志望らしいとも判明。遠慮無く頂きますとも。うへへ。

「イヴお姉様は先輩ペットで戦友。共に戦い抜こう」

「え、と、はい。宜しくお願いしますね。……何と戦うんですか?」

「ユキ様の退屈」

「「ぷふっ」」

 面白いっ。私の退屈と戦ってくれるのかっ。でもそれ裏を返せば構ってちゃん。構ってあげるけども。じわじわと愛らしさを感じる様になってきたし。何かの洗脳みたいに。これが電波系と言う言なのかしら。

「イヴお姉様、動ける?」

「手が空いていると言う事でしたら動けますよ」

「じゃあイヴお姉様も連行。ユキ様の飾りを集めに行く。今は殆ど下着状態」

「はい?」

 言葉選びが妙に面白いのよね。町を服装に見立てて下着状態って言うのも合ってるし。その下着ですら心許ないくらいだし。せめて良い下着にはしたい。ここは見た目より機能的に。ちゃんとした物を用意したいわ。

「ラビリンスに必要な物資を買い集めに行くの。護衛として同行してよ」

「あ、成る程。喜んで同行させて頂きますとも。確かに色々と足りませんものね」

 なら、妖精の分身を増やすんじゃなくて本来の分身を同行させましょうか。ラビリンスを出てから山脈沿いに進んで、少ししてから出せば良い。楽しい旅になりそうだわ。

「出る前に歓迎会も開きたいわね」

「賛成です。ご相伴に預かりたいです」

「え。良いの?」

 本来の分身を出す時に荷馬車ごと家に転送してニア達も別の場所から合流する形で歓迎会を開きましょう。折角の出会いなんだから、こう言う事は大事にしないと。

「ランシェ。デザート好き?」

「え。好き。有るの?」

「皆には内緒ね。私は山脈内なら何でも出来るのよ。デザートを生み出すのだって簡単」

「おおっ。楽しみっ」

 わ。いきなり可愛らしい期待顔になった。凄い可愛い。何このロリ。ペットになったとか最高。滅茶苦茶甘やかしそう。虐められるペットに甘やかせるペットも居るなら退屈なんて絶対しない。女神様に超感謝。私勝ち組。逆ハーレムでもなんて言ってくれてたけど、普通にハーレムが出来始めてるわね。でもそれが良い。うへへ。

「やる気出た。出発したら本気出す」

「期待させて貰うわよ」

「何をどれくらい仕入れるか等は考えているんですか?」

「うん。さっき騎士団長に確認した。今も確認して計算中」

 他にも必要な物が有ったのね。決められた予算の中でどこまで集められるか楽しみにしましょうか。頑張ってくれた分だけご褒美をあげるわよ。

「イヴお姉様。ついでに別の仕事も片付けるから手伝って」

「構いませんけれど、別の仕事とは?」

「草むしり。将来ラビリンスに植え替えられる雑草を今の内に根刮ぎ刈り取る」

「「はい?」」

 え、それどう言う意味?

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