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ダンジョン&ダメガールズ -岩の中にいる-  作者: 仲田悠
第一話「やま」
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おおっと!

こんにちは、仲田悠です。

懲りずに新しい物語を出してみました。一先ず三話。

今回も発展物となり、出来るだけ今までの物語と被らない様に気をつけております。

ちょっとずつ上達してると良いな、なんてびくびくしながら投稿しました。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。


ご意見ご感想バッシングも大歓迎。つまんねーよクソ作家くずれが、の一言でも残して頂けると励みになります。

あ、決してMじゃないですから。多分。いやきっと。

 何で真っ白な空間に居るんだろう。

 どこまでも真っ白で、地面と空の区別すら付かない。地面は有るんじゃないかと思う。一応私はこの場に立ってる様だし。

 でも、違和感。私の手が無い。ううん、体が丸ごと無い。見渡せるけど体を動かせない。完全に意識だけの状態。これは夢? それとも――

「はい。悪い予想の方です。ちょっと良い場所でも有りますね」

 ただでさえ真っ白な空間なのに明るくなって声が聞こえた。金髪ショートの美人なお姉さん登場。豪華な装飾品をキラキラ光らせ、神聖さを感じるドレスをフワフワさせながら浮いてる。確かに悪い予想の方みたい。ちょっと良い場所って言うと、やっぱりアレかしら。

 私が好きなラノベのジャンルのアレ。

「先ずは自己紹介を。私は知の女神アテナ」

「わ。実在したのね。私はユキ。ユキ・ナカタ」

「実在と言うより、貴女の知識の中で適した名前に聞こえているが正解ですね。姿も貴女の知識や理想の姿に見えているはず。何にせよ、宜しくお願いします」

 こちらこそ。

 どうやら本物の女神様みたいね。ギリシャ神話のアテナ様は確かに知恵の女神様だし。他にも芸術とか工芸とか。勝利の女神でもあったはず。

 理想の姿って言うのも納得。ナイスバディな超美人。ボインでバイン。うへへ。美人を見るのは好き。私も女だけど。

「お察しがついている様ですが」

「ええ。何でかは知らないけど、私は死んだんでしょう? ちょっと良い場所って事は、転生させて貰えるってところかしら」

「はい、その通りです。貴女が好きな異世界転生物な展開ですよ」

 ……やっぱり心の声が聞こえてるっぽい。そうでなければ私の私生活を覗いていたとしか考えられない。だとしたら超恥ずかしい。死にたい。あ、死んでた。消滅したい。

「実は、その。貴女の作品のファンでして」

「ぐふっ」

 覗かれてた!

 経歴くらいならまだ神様らしく知られてても不思議じゃないけど、作品を見てたとなれば確実に覗いてる! 黒歴史なのに! ……はっ!

 趣味とか全部筒抜けって事じゃない!?

「辛い思いをなさっていたのも見ていました。また作品をとまでは言いません。第二の人生で幸せに過ごして頂ければと」

「ありがたくて涙が出る話だわ。こんな駄目女には勿体無いわよ」

「駄目女だなんて」

「見てたなら解るでしょ? 私はうつ持ち行き遅れ三十路ニート女。私なんかよりまともなヒトを助けてあげてよ」

 ついでに言えば三流以下な元同人作家で、漫画描いたりラノベ書いたり。ファンが居てくれる事自体が信じられない様な雑魚作家。

 だから消えたい。転生したいと思わない。気に掛けてくれるのは嬉しいけど、もう生きるの面倒い。例え好きなラノベと同じシチュエーションに置かれても嫌。

 死に方も碌なものじゃないんだろうなぁ。最後の記憶はなんだったっけ。

「私は何で死んだの?」

「圧死です。同人誌の棚が倒れて」

「昇天したい」

「ま、待って下さい!」

 思い出した。ムフフな時間を過ごそうと思ってお気に入りの同人誌を取ろうとしたら棚が倒れて来たんだった。やだ、もう、ほんと消えたい。死因が恥ずかしすぎる。実家暮らしだからまだマシ? 家族には趣味を知られてるし。と言うか筋金入りなオタ家族だから、独り暮らしで同じ死に方をするよりはまだマシに思える。

 穀潰しが死んだ上に、プレミア付きとか資料とかを山分け出来るからって大喜びしてそうな家族だし。死んだ以上は好きにして良いけどね。姉さんとかよだれ垂らしてるんだろうなぁ。私の趣味は全部姉さん譲りだから。

 ああ、うつだ。死んだら解放されるなんて嘘。こんな自分に付き合っていくと決めて生きてきたけど無理。こんな私のまま転生とか良い事なんて何も無い。

「それに、貴女の知恵を借りたいんです。作家として様々な知識を集めていたじゃないですか」

「ええ、まあ。結局デビューしないまま精神的に潰れたし、今は物理的にも潰されて死んだ訳だけど。でも、それはそれで問題じゃない? 私程度の知恵が必要な異世界って、剣と魔法のファンタジー世界でしょ?」

「そうですけど、問題ですか?」

 好きなジャンルの展開だけど、だからこそ気になる事が有ると言うか。転生先は所謂中世な文明水準のはず。でなきゃ同人作家程度の知識なんか欲しがらない。魔法は完全に専門外として、産業なんかの情報が欲しいんだろうし、作家生活の役に立つだろうから無駄に手広く知識を集めてきたから多少は役に立てると思う。

 でも、それを簡単に持ち込んで良いのかしら。逆にそれで異世界が滅茶苦茶になったりとか。

「何か凄い力とか貰えたりするのかしら」

「そうですね。身体能力や魔力が普通のヒトより凄い程度ですけど。完全な生まれ変わりか、若返って送り込むかも選べます」

「見事なまでの"チート賢者に転生して俺様最高"な展開ね」

 異世界転生物の醍醐味みたいなものだけど。落ち着いて考えて欲しい。産業の発展は良い事かもしれないけど、私が知っているのはあくまで方法と結果がどうなるかって事。何でそこまでに至ったかまでは知らない。

 そりゃ誰かに喜ばれたりちやほやされるのは悪い気はしないわよ? でも、それで異世界のヒト達が頑張って研究してきた事を横から簡単に広められるってどうなのかしら。思い付きもしなかった事をぽいと投げられるのってどうなの?

 自分達で生み出した物と、横から出された答えって言うのは決定的に重みが違う。実績の積み重ねが有るか無いかじゃ未来が繋がらない。どんな事でもそう。方法と結果が解れば良いなんて簡単な話はどこにも無いのよ。それを解った上で言ってるのかしら。

「……成る程。貴女の言う通りかもしれません」

「拾ってくれようとしてるのは本当にありがたいし、嬉しいんだけどね。本当にその世界の事を考えるなら止めた方が良いと思うのよ」

「うぅん。私としては聡明な女賢者として素敵な殿方から引く手数多と言う第二の人生を送って欲しいのですが……」

「チート賢者に異世界転生して逆ハーレムかい。嫌いじゃないけど。何だってそんなあざとい狙いをピンポイントで――」

 ……はっ!

 ま さ か。

 哀れみなの!? 哀れみなのね!?

「喪女って辛くないですか?」

「リア充爆発しろ」

「私は非リアです! 交際歴無しです!」

「それでアテナかっ」

 元の世界の皮肉が通用する上にまさかの喪女神カミングアウトっ。

 知の女神って言えばミネルヴァとかサラスヴァティーでも良かったのに、アテナと認識したのはそれが理由かっ。アテナは処女神だからねっ。それに私の作品のファンってだけあって、きっと腐ってるんだわ。更に思い当たったわよ。カマ掛けてやる。

「まあ、神様って言うと大抵青年から老人よね」

「そうなんです。神は生まれた時から大人なので対象外ばかり……はっ」

「このショタコン女神めっ」

 やっぱり少年趣味だった。アテナと言えば少年達の逆ハーレムとか言う間違った上に爛れた認識も持ってた。むしろこれこそアテナと認識した理由だ。絶対そう。私もショタ物好きだし。正確にはストライクゾーンがだだっ広いだけなんだけども。腐り物とか気にならないし。

 そうよね、私の作品を楽しんでくれたって事はそういう事なのよね。殆ど成年向けしか出してないのに。お淑やかさんに見えて内面はケダモノかも。

「むしろショタの魂を拾い集めて女神様が逆ハーレムを作った方が良いんじゃない?」

「ここでは体を与えられませんから。触れ合えないのはちょっと」

 うん、ケダモノだわ。間違いなくケダモノ。さらっと体目当てらしい事を言ったわよ、この喪女神。どんだけ餓えてんの。ああ、でも、何だか面白いと言うか親近感が湧く。類友との会話って楽しい。

「何にせよ、転生は良いわ。こうして最期に女神様と話せただけで満足」

「そう言わないで下さいよ。私との交信もオマケしますし、転生後の要望も出来る限り応えますから」

 破格な好待遇ぶり。でもその真意は見えた。親しみ易すぎて、逆に苦笑いする。面白い女神様に拾って貰えたものだわ。

「暇なのね」

「暇なんです」

 やっぱり。

 そもそも知の女神様が作家くずれなんかの知恵を借りようって時点でお察しじゃない。私の事を慮ってくれているだろうってのは解るけど、結局のところは暇潰しの対象とか話し相手が欲しい訳ね。

 うーん、どうしよう。娯楽を生む生業に足を突っ込んでた身としては暇潰しのネタになるのは問題無いんだけど。生きるの面倒い。もう疲れた。

 でも、かなり長く見守ってくれてたのも解る。うつになってから長いし、漫画を描いてたのはその前。うつになってからは細々とラノベ書きに手を出してたくらい。ショタ物は漫画のみだったから、事情を殆ど知ってるって事になると思うし。

 その点はありがたいから何かお返し出来ればって思う。そうだなー。んー。

「何にでも転生させて貰えるの?」

「ええ。転生する気になってくれましたか」

「これになら転生しても良いってのが一つ」

「なんでしょう」

 生きるのが面倒い。でもお返ししたい。だから妥協案を出してみよう。

 通ったら転生。駄目なら昇天。

「身体能力の強化は要らないから、その代わり魔力を好きに操れる力って無理かしら」

「大丈夫ですよ。魔力の増加も諦めて貰う事になりますけど」

 全然問題無し。私が考えた最強のチート能力。後は何に転生するか。

「その世界で一番大きな山脈に転生させて」

「……はい? え、山脈?」

「山脈」

「山脈」

 繰り返さなくて良いから、そう言う事でお願いします。

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