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異世界転生してバニーガールを流行らせます  作者: 江保場狂壱
第一章 どうしてこうなってしまったのか?
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第2話 参上! まぼろしネズミ

「本当にもらっちゃってよろしいのですか?」


 私は今村人たちからいろいろな物をもらっていた。

 革の鎧に、革のサンダル。鉄の剣に革のカバンなどだ。


 朝起きたら食事を作り、すぐに出立しようとした。やたらと目覚めがいい。昨日見た夢は女性とエローなことをするものだった。息子をなくしたのに、気持ちよくなれるのは素晴らしい。

 それをゲッティンに見つかり、捕まったのである。

 あと、ツァールトは昨日の出来事を、村長に話しており、私は歓迎会を受けたのだ。


 一見、剣どころかスプーンすらモテなさそうに見えるお姫様が、雑魚とはいえマネギンを倒したのだから、村の評判を集めるのに十分だろう。

 ためしに村を襲撃してきたおばけでんでんという、巨大なカタツムリが現れた。

 そいつを3体ほど蹴とばしてやったら、村人はあんぐりと口を開けていたね。


「いやー、勇者さまは本当にお強いですな」

「しかも女神のような美しさだ。ぜひともうちの息子の嫁にしたいね」

「ずっとこの村にいてほしいです!」


 村人に催促されるが、私にはバニーガールにふさわしい店を作る目標があるのだ。

 なんとか振り払い、村を出ようとしたが、村長は私に旅装束を用意してくれた。

 そして小声でこう言ったのだ。


「悪いがあなたには早く出てってもらう。あなたのように強い人がいれば、村人は自分で戦うことを忘れてしまうからだ」


 なるほどごもっともだと、私は納得する。童話のような世界観でも、長老のような考えを持つ人はいるんだな。

 

「だがエアツェールングで落ち着いたら、時々来てほしい。ある程度訓練をさせたいからね」


 あくまで自分たちの村は自分たちで守るのが筋と思っているのだろう。そのために訓練するのは反対しないようだ。

 それとツァールトの家で披露した料理の事も知っていた。こちらはハンバーグの他にミートボールの作り方も教えてやった。あとミートソースの作り方も一緒だ。

 ツァールトは秘伝ではないのか、この村に伝えていいのかと心配そうだったが、私の料理の引き出しは能力のおかげで底なしなのだ。

 その料理のおかげで村を有名にしたい。その金で武器や防具を買い、訓練を行いたいそうだ。


 私はそれを約束する。だがひとつ長老に聞きたいことがあった。これは小声で訊いてみる。


「ツァールトさんの事ですが、彼女はこの村でどう思われているでしょうか? なかなか色っぽい女性ですから……」


 そうツァールトは色っぽいのだ。例えれば新東宝時代のセクシー女優、三原葉子みはら ようこを連想した。

 何? 例えがわからない? 60代なら理解できると思うので、お父さんたちに聞きなさい。


「そうですなぁ。実は彼女に言い寄る男は皆無なのですよ」


 長老は普通にしゃべっている。これは隠す必要がないと判断したのだろう。

 彼曰く、ツァールトは男たちから無視されていた。いや、仕事を頼まれたらやるが、それだけである。

 むしろ男たちは女房持ちだとハッスルするので、ツァールトの出番はないのだ。


「あれほどの美女なら男たちも放っておかないと思うのですがね。私も含めてその気が起きないのですよ。彼女が村に来たときはそれなりに男たちが集まりましたが、翌日はまったく無反応になりました」


 なので村の女たちは、ツァールトに対して何とも思わないようだ。頼まれごとも普通にこなし、家によってもお茶を飲めばすぐに帰る。浮いた話は全くないのだ。

 しかし彼女は村の人間ではないのか? 普通はよそ者を嫌うのではないだろうか。


「いえ、ツァールトはこの村の男と結婚しています。もう数年前に亡くなりましたが、夫の死後はあの家に住んでいるのですよ。両親はすでにいないから、ちょうどいいですがね」


 なるほどね。だが未亡人にしてはどうも不思議な雰囲気があるんだよね。

 これ以上彼女を詮索するつもりはない。


 こうして私はあらためてツァールトとゲッティンに別れを告げ、村を出た。


 ☆


 道なりを進めばエアツェールングに向かうという。今は魔物が多く、旅人の数も少ないという。

 そのためか、村人たちがぞろぞろと後ろについてきた。私を護衛代わりにするためだ。

 もちろん目的地に着けば報酬は払う。町に入るための税金は肩代わりし、ギルドの入会金も払うというのだ。


 それは長老の命令らしい。ちゃっかり者の彼に好感度があがりましたね。もちろん故意には至らないけど。


 途中でマネギンとおばけでんでんが襲ってきたが、一撃でのしてやった。

 あまりに景気よく倒すので、村人も恐怖より、呆れ顔であった。人間常識を超えた出来事に出会うと、無感情になるのである。


「フハハハハ! まてぇい!!」


 突如人の声がした。それは巨大なネズミであった。しかも二本足で立っている。

 それに赤い帽子に黒マスク、黄色いマフラーをなびかせていた。


「我が名はまぼろしネズミ!! この地域を支配する者だ!! ここを通りたければ、我にチーズをよこすがいい!!」


 まぼろしネズミは尊大な態度で迫ってきた。なぜだろう、ちっとも恐怖を感じないのだが。


 私はそいつにデコピンをしてやった。身体は数メートルほど吹っ飛び、地面に衝突する。

 しばらくは大の字で気絶していたが、すぐに起き上がった。なかなかタフである。


「フハハハハ!! なかなかやるな!! だが次はこうはいかないぞ、今度お前の家に忍び込んで、配達の牛乳を飲んでやる!! 楽しみにしていろ!!」


 そう言ってまぼろしネズミは脱兎の如く逃げ去った。ねずみだけど。


「……あれはなんですか?」

「あれはこの辺りで有名な魔物です。ですがあまりに弱いので相手にされません。むしろマネギンの方が手強いですよ」

「ツァールトもあいつが相手なら楽勝だったろう。いや、ゲッティンでも問題ないな」


 村人のひとりが呆れ顔で言った。他の人々も同じ感想である。

 しかし地味な嫌がらせをしようとするとは……。世の中にはいろいろなのがいるものだ。

 そう考えながら、一路町を目指すのであった。

まぼろしネズミのモデルは、某RPGの四コマ漫画です。

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