第15話 マギーは実はガチだったようです
エアツェールングの町に戻ってから、一週間が過ぎた。
その間、私は料理ギルドの仕事を、マギーから学んでいたのである。
まあ、元のマスターは脳筋なので、サブマスターの彼女が規則を作っていたのだが。
私は職員の教育に力を注いでいた。整理整頓はもちろんの事、私の世界に伝わる料理を教えたのだ。
ギルドにとって職員は家の土台である。きちんと設計しなければ、数年も経たないうちに、崩壊してしまうからだ。
特に来客には丁寧に扱い、クレーマーなどは感情的にならず、相手の心の隙を突くよう教育する。
難しい知識ではなく、道徳こそが重要だと思っている。なぜならそれこそが人として大切なことだからだ。
計算や小難しいことは後で学べても、道徳のない人間は破滅に陥る場合が多い。
あと料理ギルドには数十名の回収人がいる。彼らは元騎士見習いで、騎士にならずに前のマスターについてきたという。
役職は解体人といい、魔物の身体を解体するのが仕事だ。構造を知っているので、簡単に弱点を探り、巨大な魔物すら倒せるのである。
他にも魔物の皮などをなめす、裁縫人や、土を鑑定する土鑑定人。
薬を調合する薬剤師や、補佐をする補佐師というものがあるという。
そして回収人たちは他のギルドとも連携を取っているそうだ。
なにせ料理ギルドの場合、肉を解体するけど、皮や骨などは使わない。
それらは別のギルドに売り渡せばいいのだ。土鑑定人は陶芸に必要な粘土に、武具に鍛冶などに必要な鉱石を鑑定できる。一見関係なく見えても、同行させることが基本だというのだ。
補佐師は戦闘に参加せず、仲間の寝床や料理を担当し、風船魔法で獲物を軽くして運搬する仕事である。これがいないとろくなことにならないので、パーティには必要な存在だそうな。
ふと思ったが、この世界にはゲームのように、戦士や魔法使いなどの冒険者はいないようである。
いるのはギルドのために必要な素材を回収する、回収人だけという話だ。
オンラインゲームをプレイした人が見たら、首を傾げるかもしれない。
「神様、神様。なぜこの世界には冒険者がいないのでしょうか?」
『それはいないだろう。わざわざ危険な場所に赴く人間はおるまい。回収人だけが必要な素材を得るために、危険を承知で向かうのだからな』
「いや、神様は某コンピューターゲームの三作目を知っているでしょう? それを参考にしなかったのですか?」
『話は聞いているが、実際に触れたことはない。それに戦士だの魔法使いだの、世界が平和になれば用済みであろうが。それなら回収人という職業の方が、まだましだと思うがね』
どうやらうっすら話は聞いていても、詳しくは知らないらしい。よく考えれば戦士や魔法使いなども、世界が平和になれば用済みだからな。
某少年誌に連載されていた、とある大冒険も平和な世界に勇者は無用の長物扱いされるとあったからね。
回収人には魔物を飼いならす魔物使いもいるそうだ。飼いならした魔物を利用して獲物を探したり、囮に使ったりするらしい。
こちらは5作目では魔物を仲間にできるシステムだが、神様は知らなかったようだ。
4作目ではNPCの魔物がいたから、それを参考に神託で伝えたらしい。素人の思い付きで偶然生まれたのだ。
料理ギルドの回収人たちはかなりの実力者で、ニードルボアやカワハギ熊など敵ではないという。
彼らはマッケンゼン氏の命令で様々な魔物を解体し、皮や骨などを裁縫ギルドに売り、見つけた粘土や鉱石を他のギルドに売ることで生計を立てていたそうだ。
まあ、手に入れた肉や野菜はマッケンゼン氏が無駄に火を通しまくって、台無しにしたそうである。
彼らは相当な凄腕であり、品格と良識の持ち主だった。元のマスターは料理が下手だったが、回収人たちの教育は優秀だったようである。
言い忘れたが、ヴォルケの面会も忘れない。マギー曰く、「マスターが走っていった方が、手っ取り早い」ということで、走っていった。数時間ほど彼女に勉強を教え、ギルドの支店長にも顔を出す。
村にも回収人はおり、育成の真っ最中だという。時間が経てば領地を荒す魔物は対処できるということだ。
ヴォルケは結構楽しそうである。どうやらまぼろしネズミは何日かおきに顔を出しているようだ。結構面倒見がよいようである。
☆
「マスター、裁縫ギルドからの贈り物です」
その晩、私の屋敷でマギーと二人きりになった。
彼女は大きな箱を見せる。衣服を治める箱のようだ。
中は私が望んだバニースーツが入っていた。うさ耳バンドに網タイツ、ハイヒールも入っている。
もっとも、これらは試作品であり、私が予測したものより、質がよくなかった。
私は試しに身に付けることにする。まず網タイツ、というより、パンストに近い。こいつは丸呑み花の花びらから作られたそうだ。丸呑み花は人を丸呑みする巨大な花の魔物である。
ちなみに部屋にはマギーだけだ。私は素っ裸になったが、マギーは瞬きにひとつしない。まるでマネキンに見られているようだ。
ちょっと気になるが、とりあえず履いてみる。
花びらとは思えないほど、なかなかの履き心地だ。脚にフィットして、歩きやすい。試作品でもこれほどのものかと感動した。
次にバニースーツだ。こちらはキラキラと表面が光っている。なんでもスカイサーモンという、空飛ぶサーモンの魔物の皮から作った物らしい。
魚の皮でも服は作れるという話は聞いたことがあるが、バニースーツにするとは思わなかった。なんでもブラックローズの葉っぱに近いという。
私はバニースーツを着た。うむ、股間が引き締まる思いだ。ハイレグなので尻の方もきゅっとなる。肩が出ているから、結構寒い。本職のバニーガールたちはこんな苦労をしているのだなと、しみじみする。
ちなみにカフスと蝶ネクタイは完成品だ。比較的手に入りやすい素材だったという。
バニーガールに、これらは必需品だ。あるとないとじゃ、えらい違いがある。私はエロDVDでカフスと蝶ネクタイを身に付けない物を見たとき、憤慨したものだ。
最後にうさ耳バンドだ。こちらはスカイサーモンの尾びれだという。確かによく見れば細かい線が見えた。それをうさ耳にするとはなんともすごい。
「どうですかマギー。これが私の望んだバニーガールというものですよ」
私はマギーの前に立ち、くるりと回った。試作品だが、なかなかの出来栄えである。
そう、私はついにバニーガールになれたのだ! バニーガールを眺めるのもいいが、バニー好きとしては、バニーさんになるのも夢のひとつである。
試作品でもかなりのクオリティだから、完成品はもっとすごいのだろうな。
私はわくわくが止まらなかった。
するとマギーが私の両肩を掴んだ。とても痛い。
さらに目付きが妖しい。私に対する視線が危ないものを感じた。
「……マスター。なんて美しいのでしょうか。そのバニースーツというものは最初理解できませんでしたが、今ではマスターの気持ちに納得がいきます」
「そっ、そうなの? ありがとう」
「……まさに私の理想にぴったりです」
そう言って彼女は私に口づけをしたのだ。とても熱く、舌まで入れてきよった!!
とても興奮しており、チートな力を持つ私ですら振り切れないのだ!
「ふふふ。裸を見てもなんとも思いませんでしたが、そのバニーガールとやらの衣装は、私の劣情を大きく刺激しました。今夜はともにベッドで過ごしましょう!」
マギーのとんでも発言に、私は断ろうとした。
「だめです、そんなことできません!」
「……そんな、ひどい」
「ですから、できないと言っているのです!!」
「……そんな、ひどい」
「……だめです」
「……そんな、ひどい」
無限ループかよ! なんか某ゲームのお姫様みたいなことをするね!
なら私は逃げ出すまでだ!!
わたしは、にげだした!
しかし、まわりこまれてしまった!
チートを持つ私でも逃げられないというのか!?
「知らなかったのですか? 私からは逃げられません」
まるでマギーが大魔王のようである。心なしか威厳がある態度だ。
「ふふふ。女同士は初めてですか? 私も初めてです。ですができるだけ丁寧に、優しくするつもりです。さあ、未知なる世界へようこそ……」
こうして私はマギーの虜にされたのだった。
マギーのエピソードは最初考えてなかった。彼女が女性好きになるとは予測しませんでした。
あとド〇クエネタをぶっこんだのは、なんとなくです。




