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月光
まぶたに降り注ぐ月の光は、ベルベットを撫でつけたような漆黒の闇を煌々と照らしだす。
その夜の空間を通過すると、柔らかくユキの元に届いた。
目を閉じたまま深く呼吸をする。
日が沈むと途端に日中の熱気は収まり、涼しさを越えて少し肌寒くも感じる。空気は乾燥していてとても軽い。ジトジトとした湿気をはらむ日本の夏とは比べものにならない。
ここが自分の故郷で無い事は、頭で理解するよりも素早く、毛穴が、鼻腔が、肺が感じ取る。
目を開き、夜を照らし出す月を見上げる。するとそれは日本で見る景色とあまり変わらない気がした。
他の感覚を失い、視覚だけが生きているとすれば、この場所を日本だとさえ思える。
月だけは何もかわらずにぽっかりとユキの頭上に浮かんでいるのだ。
その月の模様の中に、見慣れたウサギを探してみる。左の曲線に沿ってウサギの背が続き上部には長い耳が見える。
やっぱり月は同じだ――――――
食い入るように月を見つめた。
ユキの渇望している答えがそこから降りてくるような気がした……。