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蒼い狼  作者: 三条 楓
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無知、ようやく綻ぶ

蒼司は稽古試合全て勝ち抜いた。

どれだけ蒼司は自分の力を抑えていたのだろうか。

斎藤はふと気になった。



防具をとる蒼司の傍らに斎藤は立つ。


すると蒼司は後ろ指をさされはじめた。



「慣れてますから。」


蒼司は言った。

斎藤からはその時の表情は見えない。蒼司は丁度しゃがみ込んで防具をしまっていた。


慣れるもんじゃないだろ、斎藤は思った。



蒼司の圧倒的強さ。独特の構え。そして壬生浪の子供との噂。

全てが蒼司を追い込む。



「人斬りの子だからあんなにも強いのね。」


なんて声が聞こえた。



斎藤はその目鋭く睨みつける。


「私が強いから仕方ない。」


笑った蒼司。


しかし斎藤は笑えなかった。



帰り道互いに黙る。



「ねえ、斎藤さん。」


ふいに口を開いたのは蒼司の方。


前にむけていた視線を右下の蒼司に移す。



「父さんは強かったんですか?」


「ああ。」


斎藤は頷いた。



「父について何も知らないんです。」


蒼司は続けた。


「知りたくても誰にも聞けない。

正直、斎藤さんに似ていると言われても良いのか悪いのか分からないんです。」


成る程。

だから蒼司はいつも反応が薄いのか、気付いてみればいつもそうである。



「中途半端な人は嫌だな。

人斬りだと言われるなら下っ端とかよりどうせなら強い人がいいです。」


蒼司は足元の石を蹴飛ばした。

二、三度跳ねてまた止まる。



「確かに今は新撰組は悪と言われる。

だが新撰組は忠義に熱い奴らだった。

理由もなしに斬ったりしてない。

ただの人斬りじゃねえ。信じたもののために刃を振るった。

ただ、それだけだ。」



蒼司は斎藤の目を見て聞く。

斎藤もしっかりと蒼司の目をとらえた。



「お前の父親の沖田さんもだ。

確かに斬った数は並大抵じゃない。

それだけ熱い心があった。

誇っていい。寧ろ誇れ。」


そう言って頭を撫でた。



「下っ端なんかじゃなく何かと直ぐに出動させられた中枢的な隊の組長だ。

重要な仕事には欠かさずに沖田さんがいた。」


目を細め前を見据えた斎藤。


だからこそ休養できず病状は悪化したのだが。

斎藤にとっては苦い思い出である。



「斎藤さん?」


眉間に皺をよせた斎藤を呼ぶ蒼司。

記憶をこちらに戻し続けた。



「お前は立派な武士の子だ。

沖田さんをしっかり継いでる。」


「はいっ」



蒼司は笑って荷物をしょい直した。



荷物は背負い直して。

邪魔なしがらみは捨て置いて。

前を見れば蹴った石は何処かへ消えた。




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