予定通りの呼び出し
「影の薄いあなたたち、裏委員会に入らない?」
その声は聴いた途端に、上質な羽毛に全身を埋めたのかと錯覚するほどに優しく、暖かみを孕んだものだったが、残念ながら、その余韻に浸っている暇は、彼には無い。彼というのは、今ここ、生徒会室で生徒会長より直々に委員会へ誘われた、いや、「裏委員会」に誘われた二人の男子高校生の内の一人のことである。その一人が、間の空いた空気に堪えられなくなって、何故か鷹揚に構えているもう一人に小声で話しかけた。
「おい、どーすんだよ。ってかそもそも俺らはここで何してんだよ?まず俺たちは新学期一日目の学校に来てて、今日は昼までだから昼飯は真理ん家で済ませようかなって思って、帰りの準備をしていたところで新学期早々に二人揃って生徒会室に呼び出されるという稀なケースに遭遇してて、その上、よくわかんねぇ委員会に入らねぇかって誘われてる、これまた稀なケースに遭遇してるんだったか?」
「ごめん、もう一回言って?」
「聞いてなかったの!?どっから!?」
口速に捲し立てた一人とは対照的に、もう一人の方はあはは、と破顔した。
そんなやり取りを見兼ねたのか、生徒会長の傍らに佇んでいた副会長が口を開いた。
「会長。唐突すぎます。絶望的に要領を得ていません。」
その声は、低く腹底に響くような声であり、冷静知的な印象を受ける。はっとした生徒会長だが、相変わらず落ち着いた声で
「そうね。ごめんなさい。強制じゃ決してないのよ。でもやっぱり入って欲しいな~って私は思ってるの。やってもらえるかしら?」
「話聞いてましたか!?」
少しも話が前に進まない、この二対二の構図は意外にもあっけなく決着がついた。誘われた二人のうちの一人、そのゆったりとした声によって。
「裏委員会、入ります」
「「えええぇぇぇぇ!?」」
双方のツッコミ役から飛び出た驚声と共に。