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第八話 1-S

俺が学生手帳について考えを浮かべていると、教職員棟の前に中年の男が立っているのを発見した。

髪はぼさぼさ、髭は伸びっぱなしとずぼらな姿をしているが、

スーツを着て胸元に新本学園の校章が描かれたバッジをしているのを見ると教職員なのだろう。

誰かを待っているようで腕時計を何回か確認している。


まさか俺達とか、な。


どうやらそのまさかだったらしく、その男はこちらを見つけると走り寄って確認してくる。


「お前ら、幸楽信也とアズール・シーカーだよな?」

「ああ」「はい」


俺達が答えると男は大きく溜息をついて歩き始める。


「やっときたか。ほら、行くぞ」

「遅刻したのは悪いがその前に説明をしてくれ。アンタは誰だ?」


歩き始めていた男は頭を掻きながら振り返る。


「あー俺は新本学園1-S、つまりお前らの担任の米原よねはらだ。

詳しい説明は後でしてやるからとりあえず急いでくれ。他の奴らの我慢の限界が近い」


それだけ言うと再び歩き始めた。

俺とアズは目を合わせて肩を竦めると堂本の後を付いて行った。



「えー待たせて悪かったな。これで全員揃ったし説明を始めよう」


付いて行った先はS棟一階、1-Sと書かれたプレートが下がった教室だった。


ここがしばらく、かはまだ分からないが世話になる教室か。


教壇から扇状に長机が三つ、それが六列並んでいた。

後ろに行けば行くほど高くなっており、最後列は天井に最も近くなっていた。

それでも5メートルはあるので最前列からすると天井がとても高く見える。

簡単に説明するなら大学の教室を思い浮かべればいいだろうか。

俺の行った場所だけかもしれないが、それが一番わかり易い。


俺とアズは米原の隣、つまり教壇の前に居るので目立っている。

いやそうではないか。

遅刻したのもそうだが、米原の発言からすると皆を待たせてしまっていたようだ。

それなら怒りが多分に含まれたこの視線も仕方ない。


「ん?お前らさっさと席に着け・・・・あーいや、先に自己紹介から始めるか」


自分の発言を訂正し、米原はきだるげそうな顔で咳払いをする。

俺達は待機という事か。


「俺がここ、1-S担任の米原だ。

一応国語を教えているが授業に関しての質問はもう一人の国語教諭に聞いてくれ。

あっちの方が優しいし詳しいからな。あと俺が面倒臭えし。

歳は36で趣味は賭博。これからよろしくな。

じゃあ次はお前らから適当に自己紹介しておいてくれ」


米原は俺とアズを指した後、壁にもたれかかり目を瞑っていた。

というか寝ていた。

教師として大丈夫なのだろうか?

新本学園に雇われている時点で実力は確かなのだろうが、やる気はなさそうだ。

そんな分析は置いておいて、米原の言動に対してざわめく生徒達へ俺は一歩前へ踏み出す。


「俺の名前は幸楽信也だ。

まずは遅刻した件だが、すまなかった。

俺は高校に行くつもりは無かったのだが、親が勝手に決めていてな。

教えられたのが急だった為、準備に手間取り遅刻してしまった。

趣味は散歩だ。これからよろしく頼む」


俺はお辞儀をして自己紹介を終えた。

顔を上げると一部は不満そうだが、大半は納得してくれた様で拍手をしていた。

気絶して遅刻しました、なんて言っても事実ではあるが信じてもらえるか分からない。

何よりアズにあまり知られたくはない。

という訳で事実ではあるが、一部嘘をついて誤魔化した。


俺が一歩下がると今度はアズが一歩前へ出る。


「私はアズール・シーカーと言います。

それで、遅刻した理由は私も同じく家庭の事情で入学の事を急に知らされまして。

私は海外に住んでいますので間に合いませんでした。

申し訳ありませんでした」


スカートの裾を掴んでお辞儀するアズに生徒の大半、というかほぼ男は興味を示していた。

まあアズは贔屓目なしに可愛いから仕方ない。


俺の弟子は最高だぜ!


そんな俺に一本の針が飛んでくる。

アズが生徒たちに見えないよう後ろ手で投げた物だ。


やれやれ、褒めたのにそれは無いだろう。


俺はそれを掴んで投げ返す。

アズはこちらを見ずに人差し指と中指で針を摘み、さり気なく裾の中へ仕舞って自己紹介を再開する。


「名前から分かる通り外国人ですが日本語は話せますので、仲良くしてくださいね。

では、皆さんこれからよろしくお願いします。

あ、後こう見えても私は皆さんと同じ歳ですから!」


最後の一文だけ強調していた。

シーカー家的にはアズの体型は素晴らしいのだが、本人はあまり喜んでいない。

別に小さくても良いと思うのだが、やはり大きいほうがいいのだろうか?

よく分からないな。


さて、俺とアズの自己紹介は終わった。

次は誰が言うのかと思っていたら、最前列の窓際に座っている赤髪の娘が立ち上がる。


「よーし、次はあたしが自己紹介するよ!」


燃えるような紅い目を持つ彼女は明るい声で言う。


「あたしの名前は葉尽秋はすが あきだよ。

趣味はウィンドウショッピング!見てるだけでも楽しいんだよ?

皆、よろしくねっ!」


「よし、次は俺だ!」


葉尽秋の元気良さに当てられたのか、次々と自己紹介が始まっていったのだった。


前話もそうですけど主人公のキャラ崩壊が凄まじい

(特にアズールに対して)

まあ(アズが可愛いから)仕方ないですよね(笑)

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