第六話 吾妻皐(あづまさつき)
結局文字数は少ないですね・・・
「あぁ、そういえば自己紹介がまだだったね」
竹林の出入口に着いた時にふと思い出したと彼女は声を上げ、コホンと咳払いしてから彼女は俺を見る。
「私は新本学園三年生の吾妻皐と言うんだ。
あ、漢字はこう書くよ」
そう言ってポケットから学生手帳を出して見せてくる。
見た感じは特に俺の物と変わりないようだ。
吾妻皐、ね。聞き覚えのない名前だ。
「俺は幸楽信也、今日入学予定の一年生だ」
偽造かも知れない俺の学生手帳を見せるの戸惑ったが、相手が見せた以上見せないのは変だろうと見せることにした。
見た目は変わりないから中身は分からないと思っていたのだが、良い意味で期待は裏切られた様だ。
「おや、信也君もSクラスなんだね」
設定的に当然かも知れないが、偽名であれ年下の娘に名前で呼ばれることになるとは。
いや、そんなどうでもいいことは放っておこう。
「Sクラス?何だそれは」
「あれ、違ったかな。でもこの判子はSクラスにしか捺されない筈だけど・・・」
「いや、親が勝手に決めた入学でな。あまり新本学園の事は知らないんだ」
不審に思われるかも知れないがここで嘘をついても後でボロが出るだろう。
ならば誤魔化しやすい今の内に聞くのが一番だ。
吾妻皐は不思議に思っていたようだが俺の答えに納得したと頷くと歩きながら話し始めた。
「なるほど、親御さんが。それも仕方ないのかも知れないよ。
新本学園には二つの入学手段が存在してね。
一つは最難関と呼ばれる全国一の難しさを誇る入学試験を突破すること。
大半の生徒はこちらの方法で入学しているよ。
・・・その内の三分の一ぐらいは退学してしまうけど。
でも、こっちの方は信也君に関係ないかな。
それでもう一つの方法なんだけど、学園側から中学時代の成績や功績を見てスカウトされるんだ。
こっちは一学年数十人ぐらいだから少ないと思うかもしれないけど、
世界レベルじゃないとスカウトされないからなんだ。
信也君が何をしたかは分からないけど、その様子じゃ断るかもと思った親御さんが手続きしたんじゃないかな。
自分の子供が新本学園に行ってるだなんてとても名誉なことに違いないからね」
Sクラスか。
どうやって師匠が学園を騙したのかは気になるな。
中学時代の事までを直ぐに偽造出来るとは流石に考えられないが・・・。
今考えても仕方ないな、現に俺は入学できているのだし。
いや、遅刻したからどうなるんだ?
遅刻程度で入学停止にはならないとは思うが聞いておくか。
「なあ、俺って入学式に遅刻したわけだが大丈夫なのか?」
「それは大丈夫だよ、入学式に遅刻した程度で退学って事はないからね。
それに勧誘組、通称Sクラスは学校生活においてある程度の自由が与えられているしね。
その分実力を見せないと直ぐに退学させられてしまうし、一般の入学生からはあまり良い目では見られないから気を付けたほうがいいよ」
私は怒られてしまうだろうけどね と吾妻皐は苦笑しながら肩を竦める。
それについては申し訳ないが何にせよ良かった。
入学した程度で俺の過去が分かるのかと手紙を見た時には思っていたが、偶然とはいえ吾妻皐に出会えたのだ。
期待してもいいだろう。
ピリリリリ ピリリリリ
角を曲がり正門が見えた時に着信音が鳴った。
俺の、ではないな。
「おっとすまない。ちょっと失礼するよ」
吾妻皐は一言断るとさっきの物とは違う、委員会用と書かれているシールが貼られた黒い携帯で電話を取った。
「もしもし。委員長ですか?」
「ああ、佐々木君か。今朝の事は助かったよ。委員の皆にもそう伝えてくれるかい」
「どうせまた人助けしていたんですよね?皆分かってますから大丈夫ですよ」
「皆にはいつも苦労をかけるね。電話してきたという事はもしかして何かあったのかい?」
「いえ、入学式については何もありませんでした。それでですね委員長、会議までには学園に来れそうですか?」
「・・・・大丈夫、間に合うよ。心配してくれてありがとう」
「間に合うなら良かったです。それではお待ちしていますね」
少し聞き辛かったが恐らくこんな所か。
電話を切ると吾妻皐は苦笑しながら申し訳無さそうにこちらに謝る。
「すまない。本当は一緒に行って説明して上げたかったんだけどちょっと用事を忘れていてね。私は先に行ってくるよ」
腕時計を確認していたのはそれか。
というか忘れていたのかよ、大丈夫か委員長さん。
・・・・そもそも遅刻した原因の俺が言うのも何だが。
「別にいいさ。ここまでありがとな」
「このままでは心苦しいし信也君が良ければ学校を案内したいんだけど、どうかな?少し時間がかかると思うから嫌なら構わないけど」
人が良いとはこういう奴の事を言うのだろうな。
それにしても、案内をしてくれるというなら助かる。
広い学園だし中に地図はあるだろうが、在校生に案内してもらえた方が詳しく知れるだろう。
「いや、逆にお願いしたいぐらいだ。助かるよ」
俺がそう言うと吾妻皐は鞄からメモ用紙を取り出して数字を書いていた。
「これが私の電話番号だ。信也君の方が終わったら電話してくれるかい?
取れないかもしれないけど、その場合は後で掛け直すよ」
メモ用紙を受け取るとまた腕時計を確認して少し慌て始めた。
「じゃ、また後で」
「俺の携帯番号・・・」
を教えればいいんじゃないか?
そんな俺の提案を聞く前に吾妻皐は走っていった。
相当時間が危ないのだろう。
『偶然、だといいけど』
風に流されて小さな呟きが聞こえてきた。
何に対して言っているかは分からない。
しかし、吾妻皐も何か俺に思う所があったのだろうか。
それらしい反応が無かったし無関係だと思っていたが、考えを改める必要があるかもな。
残り数百メートルの道を俺はゆっくりと歩いて行くのだった。
殺し屋要素が一切無い(予定でも)
これはどうしたらいいのでしょうか・・・
タイトル変えが楽そうですよね(修正内容的な意味で
こんなに過去を膨らまして大丈夫か不安です
(まだ・・・・具体的には決めてないんですよね・・・・・・・)