第五話 見つけた最初の手掛かり
一話一万文字とか書いてみたいです
(展開が進むの早すぎなんですよね・・・)
『ーー。ーー!起きなさいってば』
『ん~何だよ○○。俺はまだ寝てたいよ』
『も~、早く起きないと間に合わなくなるでしょ』
『うおっ。分かった、分かったから揺らさないで』
『ほら、これに着替えて』
『はいはい・・・・って、何でまだそこにいるの?』
『え~ーーが一人で着替えれるか心配で』
『もうそんな年じゃないって』
『あはは。それじゃ、またあとでね』
「・・・・・」
サワサワと竹のざわめきが聞こえる。
しかし、目を開けているはずなのに真っ暗なのは何故だ?
不思議に思っていると、何てことはない。濡れた布のような何かが顔に被せられていたのだ。
この時の俺は久しぶりに気絶したことで、気が抜けていたとしか言い様がない。
誰が布を被せたのかも当然だが、後頭部に感じる地面には無い温かさについて疑問に思うべきだったのだ。
「おや、目が覚めたかい?」
布を退かすと目の前にはこちらを心配そうに伺う二つの黒い瞳があった。
そして俺は気付く、自分が彼女に膝枕されている現状に。
「・・・あ、あぁ。ありがとう」
我ながら気の抜けた返事をして立ち上がり、辺りを見回す。
彼女に伸されていた男共の姿はなく、場所も小道に入る前にあったベンチで介抱されていたようだ。
念のためと彼女を見てみるが先程の様に頭痛はしない。
彼女は普通に立ち上がる俺の様子を見て大丈夫だと判断したようで、身嗜みを整えていた。
「それで、目が覚めたばかりの君に質問するのは申し訳ないのだが、いいかい?」
「大丈夫だ」
介抱してくれた礼もあるが、やはりあの状況は疑問に思われても仕方ない。
「早速だが君は何故あんな所に居たんだい?特に何かがある場所じゃないと思うのだけど」
「登校中に悲鳴が聞こえたから気になって行った」
「それは凄いね。君は結構耳が良いみたいだ」
彼女は感心して頷いていて、疑っている様子はないようだ。
確かに耳はいい方、というか鍛えたから嘘ではないがな。
「それじゃ次は君がいきなり倒れた事だ。あれは本当に焦ったぞ。
不遜な輩にお灸を据えたと思ったら突然見知らぬ君が声を上げて倒れたんだから」
彼女はその光景を思い出すように小道へと視線を向けていた。
俺も理由は分からないが、思い当たる節はある。
意識を失う前に見えた見覚えのない女と、目を覚ます前に少し聞こえた二人の少年少女の会話。
血塗れという事であの夢と何か関係あると考えるのが妥当だ。
会話については仲の良い子供としか分からなかったが、これも過去に関係あると感じていた。
で、その頭痛に襲われた原因は彼女なのだが今はそんな感じは一切しない。
今のところ唯一の手掛かりではあるが、今は置いておく。
「持病みたいなものだ。
偶に頭痛に襲われる時がある。気を失う程酷いのは初めてだが」
「そうだったのか。頭痛はもう大丈夫なのかい?」
「ああ、特に問題ない」
当たり障りのないように答えておくことにした。
唯一の手掛かりな以上、今後も会うことになるだろうしな。
「ふむ、じゃあこれで最後にしようか。こんな時間だが君は大丈夫なのかい?
ネクタイを見る限り入学生なのだろう?」
そういって見せてきた彼女の携帯に映る午前10時02分という時間。
ついでにネクタイを確認すると俺は赤で彼女は青だった。
言葉から察するに彼女は在校生、つまりは設定的に年上だったか。
最初から敬語を使っておけばよかったかもな、と思うが今更変えるのもおかしいか。
あまり敬語は好きじゃないからいわないに越したことはないし、幸いにも相手は何も言ってないからな。
なんて考えている余裕はないのだが。
「・・・大丈夫じゃないな」
確か入学式が9時に始まるって話だから、既に一時間以上経っていることになる。
つまり、遅刻しているという事だ。
「ま、私も遅刻してるのだけど」
彼女はよく見る紺色の学生鞄と竹刀袋を持ってはにかんだ笑みを見せた。
中性的に見える彼女だが、その笑顔はとても可愛いらしく女性ということを認識させられた。
「すまん、俺のせいだ」
俺は頭を下げて謝った。
俺を介抱していたから遅れたのだろう。
男共を伸した後に行けば普通に間に合っていた時間なのだ。
「はは、気にしなくていいさ。私が困ってる人は放っておけない主義なだけだよ」
彼女は出口に向け歩き出していた。
彼女の歩みと共に揺れる長い黒髪見ると一瞬だけ、白く光る少女が見えた気がした。
「どうしたんだい?君も学校に行くのだろう」
その光景に呆然としていた俺に彼女は振り向いて声をかけてきた。
初日、しかも入学式にすら出ていないのに早速の手掛かりか。
幸先はいいが、これからはどうなるやら。
「ああ、行くさ」
俺はまだ名前も知らない彼女の後ろに付いていくのだった。