第三話 登校初日から
主人公の年齢は20代と予定してます
二話でも書いたとおり、高校は一回ちゃんと通っています
(師匠から教養は必要だと言われたため)
知能は高い(という設定ですが作者の知能はド底辺の為そう感じないかもです)
「この歳でまた制服を着ることになるなんてな」
姿見で見る俺は新本学園の制服に身を包んでおり、学生に見える・・・か?
しかし高校生と言えばある程度大人びている奴も居るから、そこまで大差はないと思う。
「ま、気にすることもないか」
気にしても仕方ないものだ。
入学する事は決まっているのだから。
気にすべき事は他に沢山あるのだし。
あくびを噛み殺しながら洗面所を後にし、鞄を持って家を出た。
新本学園はここから三駅と結構近い所にある。
仕事でもない限り電車、特に満員電車になる時間帯は乗りたくないので、徒歩で行く俺には助かる距離である。
道は覚えているし、大体30分程で着くだろう。
辺りに注意を払いつつ、昨日調べた新本学園について考えることにした。
とは言ってもあまり分かっていないのだが。
実は新本学園のついての情報が全然集まらなかったのだ。
いや、無かったと言い切ってもいいのかもしれない。
日之本大介が建てた最高級の設備、教育、そして無償化された高校。
前に少し調べた時と同じ内容ぐらいしか分からなかったのだ。
せいぜいが辺りの地図ぐらいだ。
一応ギリギリまで調べていたのだが、やはり集まらなかった。
日之本の事自体プライペートは殆ど隠されているし、仕方ないのかもしれない。
今回の件、新本学園については知られたくないから情報屋に頼ることが出来なかったのも痛い。
無意味に隠しているわけではないだろうから、何かあると逆に思えたぐらいか。
唯一の情報入手手段であろう昨日貰った学生手帳なのだが、その学生手帳も表紙に名前と顔写真、学園名と判子と校章があるだけ。
本来書かれているであろう校則などはなく、中身は全て白紙のページのみだった。
ここまで事前情報がないのは初めてだ。
本来は情報が集まってから行動するから当然といえば当然だ。
今回は本当に急に決まったのだから。
・・・例え、どんな不利な状況であろうと過去を知るためなら何処へだって行くつもりだがな。
俺自身、何故そこまでして過去を知りたいのかよく分からない。
今更過去を知った所で何が変わるのか、今の俺が変わるわけでもないのに。
・・・考えても分からないから困っているのだがな。
強いてあげるのなら血塗れの少年を見る夢が気になるから、か。
悪夢という程うなされるわけではない。
ただ、こちらを見つめて呟くだけだ。
「思い出しちゃいけない」
それだけの夢。
殺し屋になって、酸いも甘いも知っていても思い出せはしない過去はどれだけ酷いのか。
好奇心と言ってしまうのは情けないが、間違っているわけでもないだろう。
騒がしくなってきた為、考えるのをやめて辺りを見渡す。
新本学園最寄りの駅の近くまで来ている為か、俺と同じ格好をした学生がちらほら見えていた。
腕時計を見ると家を出てからまだ10分程度。
早く歩きすぎたようだ。
後5分程度で新本学園に着くのでゆっくり歩くことにし、前を歩く二人の会話を聞いてみる。
「やばい、俺超緊張してきた!」
「も~落ち着いてよ!私だって緊張してるんだからっ」
「いやいや、落ち着けるわけ無いって!だってあの新本学園に入学したんだぜ!?」
「そうだけど、そんなに震えてたら周りに人から可笑しく見えちゃうよ」
「いやでもなぁ・・・。俺ら以外の同じ高校の奴ら全員落ちてたし、喜びも倍になっちまうぜ。
俺ってやっぱり天才だな!」
「はいはい、そうだね~」
「うそうそ、お前のお陰だって。ド底辺の馬鹿だった俺に一から勉強を教えてくれたお前が居なかったら、
最難関と言われてる新本学園の入学試験なんて合格できなかったぜ!
幼馴染のお前が居てくれて本当に良かったよ」
「たっくんがいきなり新本学園に行きたいなんて言ったのは驚いたけどね」
「でも、本当に良かったのか?お前まで新本学園に来ちまって。
確か料理の専門学校に行くとか言ってなかったか?」
「それを邪魔したのはたっくんでしょー!
でも、料理は何処でも勉強できるし私も興味はあったんだよね、新本学園」
「その件については本当に申し訳ない。
でも成績トップの生徒会長様に頼るしかなかったんだ!
ド底辺だから!」
「そこは威張るとこじゃないっ!それよりもちゃんと学生手帳は読んだの?
校則違反なんて馬鹿な事はしないでよ」
「おう、バッチリだぜ!」
「へ~、じゃぁ校則三条はなんだっけ?」
「え、え~・・・・っと。なんだっけ?」
「校則三条・年に二回行われるテストに二回とも不合格の者は見込みがなければ退学、だよ。
ちゃんとしてよね、折角入学できたんだから」
「悪い悪い」
「日頃からちゃんとしてたらたっくんは出来るんだから、ね?」
「おう、任せとけ!今度は俺がお前に教える事になるぜ!」
「期待してるね、たっくん!」
俺はそこで中断して直ぐ様学生手帳を見る。
しかし、学生手帳は変わらず白紙のままだった。
それに入学試験?俺はそんなもの受けていない。
入学試験は代行が何とかしたと考えても学生手帳がおかしい。
師匠が何かしたのか?もしかしてこれ偽造とか言わないよな?
本物を見たことがないから比べようがないが、いざ新本学園に着いた時にバレでもしたら困るぞ。
そこらのガードマンや警備員なら相手にならないが、警戒はされるだろう。
二度と入れなくなる可能性もあるし少し慎重になるべきか?
ちょっとした緊急事態にどうするか考えていると、小さく男の悲鳴が聞こえた。
聞こえた方向を見ると、新本学園所有の大きな竹林への入り口があった。
新本学園の隣にありながら、特に警備されておらず一般公開されていると書いていたはずだ。
俺も下見の為に今日の帰りに寄ろうと思っていた場所だ。
初日から厄介事に関わるのも面倒だが、少し考える時間も欲しいしな。
学生手帳の件は置いておくことにし、俺は気配を消して竹林へと向かっていった。