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7:アルマンド図書室長

「アメリア、まずは座りなさい」

 私がすすめられた椅子に座ると、室長はその向かい側に座った。

「アメリア、今日はユーグといつものように和やかに話していないようだね。もしかして、ユーグの素性を知った?」

「……はい。あの室長」

「ん?」

「ユーグ様に無礼な口をきいた私はクビになってしまうんでしょうか」

 私は真剣に質問したのに、室長は一瞬あっけにとられたあとになぜか笑い出してしまった。なんで?!

「室長。あの、なんでそんなに笑うんですか」

「すまないアメリア、私はこんなことで職員をクビにしたりなんかしないよ。そんなことをしていたら図書室は人がいなくなってしまう。だいたいあいつ、ユーグが悪いんだから」

「あいつ?!」

 室長がユーグ様を「あいつ」呼ばわりしたことに私が驚いていると、また何を思い出したのか室長が笑い出しそうになるのを必死にこらえている。

「もしかしてアメリアは知らないのかな。私は元騎士でね、ユーグの先輩に当たるんだ。ちなみにあいつは私に一度も勝てなかった。それにね、ユーグが元第二王子だというのはアメリア以外の職員は皆知っている」

「えっ!どうして誰も教えてくれなかったんですか。ひどいです」

 もしかして、私がユーグさんと普通に話しているのを皆、影で嗤っていたのだろうか。だとしたらひどすぎる。特にジリアンのことは親友だと思っていたのに……。

 だめだ、なんか落ち込んできた。


「アメリアがユーグの素性を知らないとわかったとき、私たちはすぐにきみに教えようとしたんだよ。それをあのバカが止めたんだ。元第二王子で今は公爵の人間にそう言われたら私はともかく、たいていの人間は黙っているものだよ」

 室長、今度はユーグ様を“あのバカ”と言ったよね。先輩だからっていいのか?

 私が思わず顔を強張らせているのを見た所長は、大丈夫だと笑う。

「どうしてアメリアに言えなかったのかはユーグに聞いてもらうとして、私たちはアメリアに対して嫌がらせでユーグの素性を言わなかったということだけは分かってほしいんだ。特にジリアンは相当心苦しかったと思う」

「はい」

 もし私が皆さんの立場でもきっと黙っているしか出来ないと思う。室長の言うことも分かる。でも、ユーグさんが私に素性を教えなかった理由は教えてくれないらしい。

「あの、室長はユーグ様が私に言えなかった理由をご存知なのですか?」

「本人から聞いたわけじゃないけど何となくは。アメリアには分かる?」

「全然わかりません。室長、教えてもらうわけには」

「それは駄目だよ。やっぱりこういうのは本人に聞かないと」

 室長…………無理です。あんなことを言った後でユーグ様に話しかけるなんて、千冊の新規購入本の目録を3日間で一人で作ってねと室長ににこやかに言われるのと同じくらい無理です。ええ、室長はそんな無茶なことを言う人ではないということはよく分かっています。でも、例えるならそれくらい無理ってことです。

「アメリア。今すぐにとは私は言っていないよ?ねえ、そんなにユーグが元王子と分かったら話しかけづらいかなあ」

「はい」

「返事が早いね。まあ、2人の問題だから私はもう何も言わないよ。アメリア、とりあえずユーグが何か言ってきたら話は聞いてあげてね。これは私からの願いだよ」

「……はい、分かりました」

 室長にはそう言ったものの、ユーグ様の姿をその後図書室で見かけなくなった。室長が言うには、国王陛下からの頼まれごとがあって忙しいらしい。

 私はそれを聞いて安堵した。ユーグさんに対するもやもやした感情がなくなるまで姿を見たくなかったから。

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