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「こうやって二人で肩を並べて歩いたのは年末が初めてだったな。あれからまだたったの3か月・・・も経っていないな。」
ゆっくり私の歩調に合わせて歩く霧島さん。
「そうですね。あの時は本当に偶然で・・・」
「それからは君が俺のところに会いに来てくれた。」
今回は霧島さんが私に会いに来てくれた・・そういつもの私なら返しただろう。しかし現実はなにも言えずにただ黙っていた。
「今回はいつもの逆だな・・・俺が君に会いにきた。俺も君も仕事がある・・・だから会いたいときにいつでも会えるわけじゃない。それに俺は君と一回りも違う。」
霧島さんが紡ぐ言葉に意味を理解しながらただ聞いていた。
そして、はっと我に返ったようにこちらを見ている霧島さんに顔を向けた。
「君はまだ若い。だが、俺は・・・」
そのまま言葉を途切ってしまった彼
「年は、関係ない。そうきっぱりと言い切れたらかっこいいなって私は思います。でも、簡単にはそうは言えない。」
彼から視線を外さずじぃと見つめた。
「それでも、私は霧島さんを想うこの気持ちを捨てることなんて出来ない。」
ゆっくりと彼の手が伸びてきた。
「その真っ直ぐな瞳が忘れられなかった。すっと、俺の中に残っているんだ。気がついたら君が俺の傍にいることが自然になっていた。」
頬から伝わる彼の温かさ・・・彼の手に自分の手を重ねた。
「これからも俺の傍で笑っていてくれるか?」
優しく微笑みながら私の返事を待つ彼。
「・・はい。」
ゆっくりと息を吐き、はっきりと彼に聞こえる声で返事をした。
「と、いってもさっきの言ったとおり、君にも仕事がある。そうそう簡単に会えないとは思う・・・「プッ・・・・」
さっきまでの緊張感のあった空気といきなりガラリッと変わった彼の言葉に噴き出してしまった私。
「わかってます。もう、霧島さんったら、雰囲気ぶち壊し・・・」
クスクスと笑いが止まらない私。
私の言いたいことがわかったのか困ったように笑う彼
いつまでもずっとこんな風に彼と過ごしていけたらいいな・・・・
そう心の中で思いながら明日彼を見送ることがいやだなと思い始めた私だった。
これで本編終了です。




