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「悪いな、せっかくのホワイトデーに呼び出して」
待ち合わせの駅に行くとまだ仕事が終わっていなかったわしく兄は来ていなかった。しばらく待つと急いでやってきた兄がそう言いながら近づいてきた。
「悪いなんてこれっぽっちも思ってないクセに・・・」
わざとらしく拗ねたように私は口を開いた。
「思ってるよ。柚依にたっぷり怒られたから。」
・・・柚依さんに言われたからなわけね。
はぁーとため息を漏らし、さっさと用事を済ませようと私は兄の腕をとった。
「さぁ、早く終わらせましょう。」
結婚が決まった兄と彼女である柚依さん・・・
本来ならば当事者同士が打ち合わせに行くのだろうが柚依さんの仕事がとても詰まっている為、代わりに私が呼ばれたのだ。
「助かるよ。さすがに一人ではサロンに入りずらいし・・・正直、どうすればいいのかさっぱりだからな。柚依もお前なら任せて安心だっていってたし」
本当に困っていたらしい兄はいつも見せるクールな表情などなくなっていた。
「お兄ちゃんに頼られるものいい気分だから私は気にしないけどね。むしろ、柚依さんに感謝??」
いたずらっ子のように私は兄に笑いかけた。
「そう言ってられるのもそう長くは続かないぞ?」
ったくと呆れつつもちゃんと相手をしてくれる兄
「いやぁー悠夏がいてくれて助かったよ。」
サロンから出るなり、疲れたとぼやく兄
「私も自分でそう思うわ。」
そんな兄の態度に私ははぁーと大きなため息を吐き呟いた。
「昔からだけど、モノに執着がなさ過ぎ!!結婚式は当事者同士のことでもあるけど家同士のつながりが出来る行事でもあるの。本人がちゃんとしてないと問われるのは自分なのよ!?それを適当でいいだなんて・・・」
打ち合わせが始まるなり兄はまったく興味がないらしく一言も話さなかった。