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「その箱は何?」
興味津々に覗く母親の言葉にドラジュの中に埋まっているもう一つの箱に手を伸ばした。
「あら、かわいい」
そこにはブルーに輝く3連ピアスが収まっていた。「どんな人なの?」
箱から取りだしゆらゆら揺れるピアスに魅入っていると楽しそうな声が耳に届いた。
「仕事熱心で自分にも他人にも厳しい人よ。でもね、すごく優しくて笑顔がとても素敵なの。」
彼のことを聞かれスラスラと出てきた言葉
はっと我に返り母親に顔を向けた。
きっとさっきのようにニヤニヤとし、からかわれる。
そう思っていたが目の前にある母親の表情はとても穏やかそうに微笑んでいた。
思いもよらない母親の態度に私は度肝を抜かれたように言葉を失い突っ立っていた。
「悠夏もすぐにこの家から出て行く時がくるのね。」
固まっている私の手元からピアスを取り上げ丁寧に元入っていた箱に直した母親
「・・・私の片思いだって言ったでしょ!?」
まったく聞く耳を持たない母親に呆れつつも霧島さんからの思わぬプレゼントに心弾んだ。
まだ仕事中だろうからあとで、連絡しよう。
パッと時計を見上げるとまだ19時を過ぎたばかりだった。
「まぁ、何はともあれまずは目先のことよね。」
ふぅーとため息交じりに母親が呟いた。
「・・あっ、お兄ちゃんとの約束の時間!?」
ばたばたと荷物を自分の部屋に置き私は急いで家から出て行った。