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「あっ・・・」
ふっと視線を上げると目の前の通り向こうを颯爽と歩く一人の男性に釘付けとなった。
手にしていた携帯を急いでバッグに入れ横断歩道を探し走った。
少しでも目を離すと歩くことが早い彼を私はすぐに見失ってしまうのだ。
彼が入っていったお店で逸る気持ちを押さえ私は中をそっと覗き込んだ。
奥の席に座りメニューを見ていた彼
「ご一緒してもいいですか?」
入り口の店員を適当にあしらい真直ぐ彼の元に足を運んだ私。
「・・の・べおか・・」
私の声にメニューから目を上げた彼
「はい。」
霧島さんの拍子抜けた声にニッコリ微笑み返事をした。
「いつ、こっちに?」
「昨夜の最終便で。」
霧島さんの問いに語尾にハートがつきそうなくらい明るい声で私は答えた。
「しかしよく見つけたな?」
お昼ご飯を口に運びながらフッと笑って言う霧島さん
「今日の夜、空いてますか?」
なんとなくつけてきたと言えずに私は話題を変えた。
「・・いや、今日は特に用事はないが?・・・めしでもいくか?」
ドキドキしながら霧島さんの言葉を待った。
そして自分から言おうとした言葉を霧島さんの口から聞け私は顔を綻ばせた。
「きれ~ぃ」
窓際から見える青とシルバーの光に私は目を奪われた。
霧島さんの仕事が終わる時間まで私は予め決めていた行きたい場所に行った。
少し早めに彼との待ち合わせ場所である駅前の噴水広場へはやる気持ちを抑えて向かった。
そこには寒い夜空の中、噴水の淵に座っている男性がいた。
「霧島さん!!もう来てらしたんですか!?」
霧島さんの姿を見つけるなり私は駆け寄った。
「もぅ、連絡くれればいいのに・・・一体、いつから待ってたんですか?」
ふいに触れた霧島さんの手
その冷たさに驚いて私は少し呆れ気味に呟いた。
「そんなに時間は経っていないよ。それより夕食だが・・・」
私の言葉に逃げるように自分の手をコートのポケットにいれた彼
「どこでもいいですよ?どうせ、どこもいっぱいだって言われたんでしょう?」
今日は2月14日・・・世間ではバレンタインデーこんな日にいいお店の予約が取れるとは思わない。
しかも当日に・・・