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自サイトにて2007.12.25にクリスマス企画で掲載したものです。
「「あっ」」
声が重なったことには気が付いた。
でも、そんなこと気にすることもなく目の前にいる人と視線を交わしたままでいた。
「霧島さん・・・お久しぶりです」
何か言わなきゃ・・・そう思い、出た言葉がそれだった。
「久しぶりだね。えっと・・・旅行かい?」
向こうにとってもかなりビックリする出来事らしく初めて動揺している彼を見た。
「はい。霧島さんは仕事・・・ですよね?」
スーツ姿の彼を見てすぐに察した。
「あーぁ」
何となく気まずい空気が流れた。
彼、霧島さんは以前一緒に働いていた。
同じ職場の正社員だった。
一年前、転勤するまでは・・・
特別に仲が良かったというワケではない。
年も一回り離れていたし、正直関わりもあまりなかった。
それに、なんだか怖かった。
そんな時、彼のアシスタントをすることになった。
見た目は怖そうだが話をしてみるととてもいい人ですごい頼りになった。
彼の印象はすっかりかわってしまい私は彼に懐いてしまった。
と、言ってもすぐに転勤の辞令が降りてしまい以前に比べて多少話程度の仲だが・・・
「悪い、延岡」
時計に目を向け無表情のまま、霧島さんは言った。
「あっ、すみません。それじゃー。」
私は慌てて荷物を持ち上げ、その場から立ち去りホテルへと急いだ。
ふいに淋しい気持ちになった。
きっと一人見知らぬ土地に来ているからだろう。
きっとそうだ。
600字程度の連載になる予定です。