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五話

 「ッ……或!」


 アイツは危険だ。

 よく分からないけれど、俺の中の警笛がとんでもない程に鳴っている。

 逃げろ、逃げろ、と本能が呼びかけてくる。

 まるで、巨大な鈍器を持った殺人鬼に付け狙われているような、そんなベットリとした恐怖が全身に張り付く。命を切り裂く刃ではなく、圧倒的重量を以て殴り潰すような、そんな重い殺気だ。


 俺っていつから、殺気なんて非科学的なものに敏感になったのだろうか。

 まるで漫画の中の超人みたいだ。

 

 そんな事をうだうだと考えつつ、俺の体は俊敏に動く。

 全力で駆け、手を伸ばす。その先では、恐怖により全身が固まって動けなくなった或と、巨大な拳を振り上げている巨大な人影が見えた。

 

 あの不審者、まさか拳を振り下ろす気か!?

 華奢な体躯の或を殴ろうなんて、一体何を考えてやがる――!!

 

 全力も全力、超全力で空気の壁をも突破してしまいそうな速度で駆けた俺は、何とか不審者の拳が振り下ろされる前に或を横に突き飛ばすことに成功した。申し訳ないが、手加減など出来る余裕はなかった。

 

 「――アッ!」


 或の苦しげな声が俺の耳を打つ。

 全身を壁に打ち付けたであろう或に、しかし俺は視線を向けない。

 標的を消失してしまった不審者の拳が、目標を俺に変えてしまったからだ。


 躊躇いなく、容赦なく、勢いよく振り下ろされた奴の拳を、俺はしっかり見ていたのに避けられなかった。


 恐怖してしまったからだ。

 間近で圧倒的な存在感を放つ化物を見てしまったことで、体が動かなくなった。体が芯から震えて、脳からの神経伝達がまったく行われなかった。

 

 その結果として、自然の摂理として、当然の如く奴の拳は俺の頭部へと叩きつけられた。


 「がッ――!」

 

 後頭部を巻き込むような重すぎる一撃。

 脳がグチャグチャにされてしまったのではと錯覚するくらいに、強烈な一撃だった。もう勘弁してくれ……。


 バガン――ッ! という常識では考えられない異常な音が脳に直接響いた。


 俺の顔面は凄まじい勢いで石材の床へと減り込み、そして石材の床に大きなひび割れを作った。床には苦悶を浮かべた表情の型ができたことだろう。


 「ぐぐ……」


 かなり痛かった……が、我慢できないほどの痛みではなかった。不審者の圧倒的なパワーも賞賛に値するのだろうが、それに耐えた俺の頭も大したものではなかろうか。


 どんだけ石頭なんだよ、俺。


 「痛ってえ……」


 思いっきり床に打ち付けた鼻から血が吹き出る。目前で火花が散り、チカチカと視界が明滅する。

 

 なんだこれ、トラックに撥ね飛ばされた時の感覚そっくりではないか。あれは夢だったけれど、俺には何故か酷似して思えた。でも、あの時のように思考がゴチャゴチャになっている訳ではない。それどころか凄く明瞭だ。今なら難問の数式でも簡単に解けてしまえる気がする。まあ気のせいなのだろうけれど。


 「って、そんな事を考えてる場合じゃなかったな……!」

 

 腕に力を入れて、床にへばりついていた上体を何とか起こす。結構な力で殴られたと思ったのだけれど、俺の体は案外丈夫なようだ。骨はおろか筋も痛めていない。


 自分でも知らなかったな、石材の床を砕くほどの威力で殴られても全然平気な体をしているなんて。本当に、思ってもみなかったぜ。

 

 「この野郎!」


 殴られたことで怒り心頭状態の俺は、とりあえず目の前の不審者に飛びかかることにした。鼻血は出てるし頭もクラクラするけれど、今はコイツに復讐することが最優先だ。

 

 それに何より、視界の端では先ほど俺が突き飛ばした或の奴が、床にうつ伏せになって倒れているのだ。気絶しているようだから、逃がすこともできやしない。

 

 もし、このまま俺が逃げてコイツを自由にしてしまえば、或に被害が行く確率が相当高い。俺が気絶した或を背負って逃げるのという策も考えたが、追いつかれない保証がないので却下。


 結局は、俺がどうにかするしかないのだ。


 「っは! お前の拳なんざ或の正拳突きよりも痛かないね!」

 

 痩せ我慢で自分を鼓舞しつつ、とりあえず不審者の胸倉を全力で掴む。

 これだけ接近すれば自慢の拳も振るえまい! このまま絞め殺してやるわ!

 

 ……などと浅はかにも俺は考えていたのだが、その作戦は間違いだった。

 

 俺たちを襲った不審者――丈の長いコートで全身を隠し、茶色のハットとマフラーで顔を隠している――は、事もあろうか前に向かってその巨体を倒したのだ。

 

 当然、俺はコイツの胸倉を掴んでいる訳で。もちろん逃げる隙などありはしなかった。その結果として、俺の軟弱な体が床と巨体に挟まれるのは当然の結末だったと言えよう。

 

 ――ドスンッ、と。

 まるで乗用車が横倒しになったかのような、重厚な音が静寂に満ちた廃マンションの通路に響いた。


 全身が圧倒的質量によって強く圧迫され、石材の床が全身の骨をギシギシと軋ませる。……このデブ野郎が! 重すぎだろ畜生! ダイエットしやがれ!

 

 「――ッ!!」

 

 顔面もろとも挟まれているから叫び声を上げることもできないし、身動きも取れない。このままでは肉に埋もれて窒息して死んじまう! どうにかして抜け出さないと……ッ!


 「ングッ――ッ!!」


 全身を使って全力で抵抗してみるが、この巨体を動かすにはどう考えても筋力が足りなかった。無慈悲なことにピクリとも動いてはくれない。

 

 ガリガリ、と床に爪を立ててみても俺の体はこれっぽっちも動かない。どうやら、自力で此処から抜け出す事は絶望的なようだ。


 畜生……。筋トレでもしておくべきだったか……。

 っく、もしこのまま死ぬのなら、パソコンにたっぷりと保管されている機密情報(R18)をどうにか処理したい。誰でもいいからデータを一つ残らず破壊してくれ、あんなものが露見してしまったら俺はもう生きていけない。いや、現在進行形で死にそうになっているんだけども。


 ああ……でもやっぱり、こんな場面だと心残りが脳裏に浮かぶな。

 せめて、青春はしたかったよな。

 女の子と付き合ったり、女の子と付き合ったり、紫苑さんと付き合ったり(妄言)。未練を挙げればキリがないな。でも、それを考えていられるのも残り数秒か。意識がだんだんと遠のいて、体が思うように動かなくなって――



 『おやおや? 痛みがあるから何かと思えば、私が眠てる間に凄い事になっているね?』



 ――ん? なんだ、この頭に響く声は……? もしかして幻聴か? 

 

 人間っていうのは命の危機に陥ると幻聴を聞いてしまうものなのか?

 ……いや、それにしてはハッキリと聞こえて来る。なんだか小さな女の子みたいな声だ。もしかして或か? 意識を取り戻したのか? いやでも、或とは違ってかなり声のテンションが高めのような……?


 『ふふふ、幻聴じゃないよ~。いやでも、それに限りなく近いかな。身体が無くなっちゃった訳だし……。いやそれよりも、今はこの窮地から脱出するのが先決か。――ちょっとだけ身体借りるよ?』


 俺の考えを読み取ったように、軽快な口調で喋る正体不明の可愛らしい声をした幻聴さん。混乱する俺に何も説明もすることなく、幻聴さんが何やら理解不能なことを言うと、


 ――どういう訳か、俺の右腕が勝手に動いた。指を動かして手をにぎにぎとしている。まるで体の調子を確かめているような仕草だ。


 これは、ありえない現象だった。だって俺は右腕を動かそうなんて少しも考えていなかったし、動かそうともしてなかったからだ。


 「っちょ、ええ?」

 

 他の意識に操られているとしか思えない動きをする俺の右腕は、ギュッと力強く握り拳を作ると、勢いも付けにくい床と巨体の狭い間で、その拳をチョンと前方へと繰り出した。


 その弱々しい拳は不審者の腹部へとめり込み――そして変質者をまるで紙屑のように吹き飛ばした。その勢いのまま、不審者は通路の突き当りの壁に深くめり込む。


 ――なんで!?


 俺は不審者が吹き飛んだ方向を見ながら、目を剥いて驚いた。


 『ふう、何とか窮地を脱することはできたよ、涼ちゃん! あとは君が何とかするんだ』


 再び聞こえて来る、女の子の声。

 これって何? もしかして廃マンションに住み着いていた幽霊が俺に取り憑いたって事なの!?


 御免なさい、もう遊び半分で探検なんてしないから許してください! なんなら貴方様が満足できる豪華絢爛なお供え物も可能な限り用意します! 年一回で良いですか!? 月一となると懐が少々寂しくなってしまいます!

 

 『あはは、違うよ~。私と涼ちゃんはもっと前に知り合っているじゃないか。薄情だな』

 

 私は寂しいよ、と幻聴は続けて言う。


 「もっと前って……」

 『涼ちゃん、前!』


 幻聴の叫ぶような声に促され、俺は咄嗟に前を向いた。

 どのように移動したのか、先程まで遥か前方で壁にめり込んでいたはずの不審者が、いつの間にやら目の前にまで迫っていた。目と鼻の先とは正にこの事。


 コイツ、なんつー脚力してんだ!

 

 「わッ!」


 俺は反射的に、右拳を繰り出していた。

 貧弱極まる俺の拳なんかで何ができる、と拳を振り上げた後に自嘲したが、それは俺の予想を斜め上に裏切って、絶大なる効果を発揮していた。


 メゴォッと不審者の顎に鋭く突き刺さった俺の拳は、不審者を天井へ向けて高く殴り飛ばしたのだ。

 そのまま不審者の頭は天井に深々と突き刺さる。


 やべえ、どんだけ深く刺さってんだよ。落ちてこねえぞ……。


 不審者の質量を十分に知っている俺からすれば、それは有り得ない光景だ。

 頭を天井に突き刺して宙ぶらりんになってしまった不審者を眺めながら、俺はただ呆然とすることしかできない。


 「なんだよ、これ」

 『あははは、流石は私の因子。うまいこと適合しているね』

 「団子?」

 『因子だよ! 字面しか似てないよね、それ!』


 なんだよそれ。因子ってなんだよ。

 団子じゃダメなのかよ。


 「……いや、そんな訳わからん事はどうでもいい! お前は一体なんだ!? もしかしなくても俺の中にいるのか!?」


 頭に直接、もしくは頭の中で喋っているような声。馬鹿げた考えかもしれないけれど、もう俺の内部に何者かが潜んでいるとしか思えないのだ。


 『うん、そうだよ? 私の体はグチャグチャになってしまって修復不可能だったからね。仕方なく一緒に居た君の体に魂だけ避難させてもらったわけさ。中々住みやすいよ?』


 軽い口調で俺の馬鹿げた考えをあっさり認めやがる幻聴。本当に俺の中にいるのか……。


 それにしても、一緒に居たっていうのはどういう事だ? 俺とこいつは初対面じゃないのか? (対面はしていないけれど)。ああもう、何から何までサッパリわからないぞっ!


 『まあまあ、諸々の疑問は隅に置いておくとして、今はとりあえず、身の程知らずの愚か者を倒すことに集中しよう』

 「うお……」


 俺の意思とは関係なく、頭が前方に向いた。

 俺の体どうなってんの? なんていう疑問などこの場では全く役に立ちそうもない。現状を把握出来ていないのだけれど、今は幻聴の言う通りにするしか選択肢がない。ていうか、体が勝手に動くのだから俺の意思など有って無いようなものだ。もうどうにでもなれ。


 『さあ、くるよ』


 幻聴とともに、宙ぶらりん状態の情けない格好をしていた不審者が、のそっと両腕を動かした。そして丸太のように太い両腕で天井を押し上げ、突っ込んでいた頭を強引に引き抜いた。


 マジかよ、あれで無事とか有り得ねえ……。俺なら三回くらい死んでるぞ。


 俺の驚愕をよそに、ドスンッと床に落下して地に両足をつけた不審者は、砂埃で汚れたハットを頭ごと片手でポンポンと払うと、


 『ボオオオオオオオオオオオオッ!!』


 「――ッ!?」


 とても人間だとは思えない、それこそ己が化物だと証明するかのような、そんな強烈な叫び声を上げた。三半規管がぶっ壊されるのではないかと思うほどの、今まで聞いたこともない程の爆音だった。


 『ゴオオオオオオオオオオオ!』

 

 再び叫び、不審者はその両手を俺に伸ばしてきた。

 凄まじい速度で迫り来る巨体。

 なにこれ、凄い威圧感だ。トラックに轢かれた時以上の圧力だぞ……!

 あれは夢だったけどな!


 『さあ、涼ちゃん。戦うんだ。これ以上私は肉体に干渉できないからね。因子の貸出はしてあげるよ。あんな雑魚、一瞬で畳んじゃえ!』

 

 幻聴が喝を入れるように叫ぶと、俺の全身が一気に軽くなった。

 一瞬全身が発光したような気がしたが、それはきっと気のせいだろう。


 しかし、なんだこれは? まるで自分の体じゃないみたいだ。

 肉体が根本から変質してしまった気さえする……。

 もしかして俺、スーパーサイ○人になってんじゃないの? 金髪緑目になってんじゃないの?


 腹の底から湧き上がるエネルギー? 的なよく分からない物の影響なのか、俺のテンションは天井知らずにどんどん上がっていく。気分は徹夜明けだ。


 今なら軽自動車と並走できそうだ! 新幹線は無理だがな!


 「っは! やってやるぜ!」


 武術の心得なんてない一般人の俺ではあるが、とりあえず両手を拳にして構えを作ってみる。

 何かそれっぽい構えになった。俺って才能あるんじゃねえ? 

 

 ……なんてことを考えているのも束の間、変質者の巨大な両手が俺の顔面に迫る。どうやら俺の首を絞めるつもりらしい。だが、そんな遅い動きを見抜けないほど、俺の動体視力はヤワじゃないぜ!


 「こんにゃろ!」


 変質者の両手を、横からまとめて殴りつける。

 どんな手品かは知らないが、俺の拳程度の一撃で変質者の両手は大きく弾かれた。俺の腕力やべえ……。


 自分の異常な身体能力に呆れながら、バランスを崩して俺に向かって倒れてくる変質者の顔面に向けて、全力のパンチを放った。

 まったく腰の入っていない、驚く程に貧弱な一撃だったと思う。もしかしたら小学校高学年くらいとタメを張る位の攻撃力だったかも知れない。運動は苦手だ。


 ……でも、現実は違った。


 ボギバキッと、すげえ音がした。拳に伝わる感触もヤバかった。

 これって顔面陥没してんじゃないか……?

 微かに心配しつつ、とりあえず拳を振り抜いてみる。


 『ボオオオオオオオオオォォォォォォォォォ……』


 変質者は痛々しい雄叫びを上げながらその巨体を大きく仰け反らし、

 ドスンッ……と仰向けに倒れた。ピクリとも動かない。


 もしかして俺、WINしちゃった? 

 それどころかKILLしちゃったんじゃないの、これ?

 

 『おお、ヤッタネ! 流石は私の宿主だよ!』 

 「ヤッタネ! じゃねえ阿呆! これ、もしかして死んでんじゃ……ああ?」


 俺は咄嗟に自分の喉に手を当てる。

 あれ? 原因は不明だが男の象徴である俺の喉仏さまが家出をなさっているぞ? それに今の甲高い声、どう聞いても俺の声じゃない。俺の声はもっとこう、ダンディズムを感じさせるような渋い声だったはずだ。少なくとも、こんな女みたいな声では決してない。決してないのだ。


 「おや? 声もおかしければ髪の色もおかしいのではないかね?」


 受け入れきれない現実を目の当たりにしたことにより思考能力が著しく低下しているせいか、口調がおかしなことになっている俺。落ち着いて観察みれば、目にかかるほどの長さである俺の前髪が、美しい黄金色に変わっていた。引っ張ってみると、そりゃあ痛い。しっかりと毛根が根付いてらっしゃる。ハゲる心配はしなくて良さそうだ。

 

 ははは、それにしても、まさか本当にスーパー○イヤ人になってしまうとはな。フリー○様さえも凌駕してしまったぜ。

 

 『何か勘違いしているようだけれど、君は地球出身の日本人だからね。惑星ベジー○生まれの野菜人じゃないからね。まずは深呼吸をして落ち着いてから、しっかりと自分の姿を見るんだ』


 俺の現実逃避にツッコミを入れてくる幻聴野郎。

 そんな事は重々承知してるっつーの! 言われるまでもないっつーの!


 ……ああそうだよ、嫌な感覚はあったんだよ。

 まずは、この形容しがたい全身の違和感。そして異常に甲高い声。

 俺は背けたい現実と対面すべく、視線をゆっくりと下に落とした。


 驚く程に盛り上がった胸部。


 いきなり決定打である。胸筋と言い張るにはデカすぎるんだよ畜生!

 触ってみたが、やっぱり詰め物とかじゃない。フニフニしてて柔らかいし、なんか先っぽがピリピリしたりもする……。


 涙を流しながら腰に手を当ててみれば、もう吃驚するくらいに細い。

 元の俺がウドンだとすれば、今は素麺である。しかも程良く筋肉が付いていて触り心地が凄く良い。自分の腹だけれど。


 なにより、俺の頭部より垂れ下がっている長い金色の繊維。

 やはり俺の頭皮より生えてきており、自分の髪の毛だと納得せざるを得なかった。


 俺の髪はもっと短かったはずなのに……。地面に到達するほどの長さでは断じてないぞ。


 止めとばかりに、最終確認とばかりに、男の宝玉にも手を伸ばしてみる。

 手がプルプルと震えるが、俺は意を決してズボンの上から、グワシッ! と陰部を力強く掴み上げる……が、俺の手は空振ってしまった。ズボンの股部分を掴むだけに終わった。


 やはり――付いてなかったのだ。


 竿も無ければ玉もねえ……。決して粗チンとかではない。


 ヤバイ、折れるぞ……。俺の心が根元からバッキバキに折れる気配がするぞ……! 現状を飲み込める理解力など、今はいらない。とにかく思考を放棄したい。


 だが、理解してしまうのだ。今、俺の身に起きている大いなる変化について、思考してしまうのだ。


 「ああ、あああああ……」


 もう分かっている。でも言葉になんて出来るわけがない。

 俺が、俺が……お、おおおお――


 『おお、涼ちゃん。今の君は中々に魅力的な女の子だよ。おっぱいデケー』


 「ギャァァァァァァアアアアアア!! 黙れ死ねクソボケコラアアアアアア!!」


 やはり可愛らしい、甲高い声が俺の口から飛び出した。

 どうやら俺は、正真正銘の女になってしまったらしい……。

 心がバッキリと折れた。

 

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