もう嫌なんだよ・・・・
パソコンの音がする。
一人打つ音しか聞こえないところに玄関のドアの音がした。
「お帰り~、葵~....?あ、なんだ、尋ちゃんか~」
ドアから沈んだ顔の尋が出てくる。
「....も、やだ.....」
「どしたの?」
明良はパソコンの手を止め、ソファに座る尋の方を向く。
「.....紫縞君に、怒鳴られました...」
「え?!アイツ怒鳴ったの?!」
「え?....うん....」
驚いた顔で明良を見つめる池松。
「へえ~...俺でも怒鳴ることは無いのに.......やっぱ尋ちゃんは特別なんだろうねw」
「....ううん、彼女なのに何も言ってくれないの...」
「え....アイツの彼女なの?!マジで?!」
「え??.....うん....」
ガタッと椅子から立ち上がる明良は、何かいいことを聞いたような顔をして彼女の手を取った。
「ふふふふふ!そうか~、葵がかあ~!」
ぐるぐると池松の手を取ってまわる明良はご機嫌だ。
ガチャっ―.....。
「俺もう寝る―........」
紫縞が家に帰ってきてリビングのドアを開けた瞬間バタッと寝てしまいそうなところを池松が支える。
「ちょ....紫縞君?!」
「あ~らら...寝ちゃったのかな?....ほら、貸して?」
明良は、ずるずるっと紫縞を運び、ソファへと寝かせる。
「....う~ん...やめろ....行くな....」
逃がすか!待て、シト!!
夢の中でアイツを追いかけていた。
「何の夢をみてるんだろう....」
「さあ、僕にはわからないね~。君なら分かるんじゃない?」
「たっだいま~!今帰ったよ~!」
次に現れたのは真衣だった。
「?あれ?あ~ちゃんお疲れ?」
「そうそう、何か知らないけどお疲れみたい。どうにか起こしてよ~!」
「あら~、......それじゃあ尋ちゃんがあ~ちゃんのこと、呼んでみたら?」
「へ?私がですか??」
「そうそう、葵....ってね!」
「え...ええええええ?!いや、それは....」
「ほら!さっさと呼んでみたら~?」
真衣が後を押すように尋の背中を押す。
紫縞の寝ているソファの前に来ると池松は深い深呼吸をして、地面に座った。
「..............あ、おい?」
少しだけ、紫縞の体が反射する。
....誰だ...?...母さん...?
遠いところから俺を呼ぶ声がする。
遠くに母さんがいると思って追いかけたら、母さんは消えて俺は独りぼっちになった。
一人空間の中にいる俺を暖かくささやく声のするほうへ俺は行ってみるとそれは池松だった。
目すら開けてないのに何故か池松のような気がしたんだ。
母さんが、俺を呼んだ....?いや....池松....なのか....?
「.....あ...」
「今俺の名前を呼び捨てにしたな?」
「~~~~~!!!」
どんどん顔が赤くなっていく池松は目を泳がせている。
「だ、だって真衣さんがそういったら起きるって.....言って...た、から...で..」
何赤くなってんだこいつ....。
つか、真衣ってほんと意地悪な性格してんなあ...それを言うなら俺もか....。
「別に赤くならなくてもいいんじゃねえの?恋人なんだから」
かあああっと音をたてるように池松の顔が更に赤くなっていく。
「は....はい....」
「い~な~!!俺も尋ちゃん見たいな彼女ほし~な~!!」
....ほんとこいつは....。
げしっ........。 ← 真衣が明良のお腹を蹴る音。
明良は真衣に引きずられていった。
「ほんとアイツもこりな―....」
!......死魔の気配......?!
「明良!!」
「おう!」
またひょこっと出てきて、パソコンに向かって明良は情報を察知する。
「....これは....」
「何だ?」
俺が近づいてパソコンの情報を見ると、そこには今までにない死魔が何対か存在していた。
これは.....?!....今までにない死魔だな......。
「普通の死魔なら目を刺せば一撃で送還できるんだけど、この死魔となると―....」
「腕よ」
―....?!
三人一斉に振り返る。
いつもの真衣ならばへらへらしてるはずなのに、その顔はまるで真剣そのもの。
本当の顔を見た気がした―....。
「腕に三本の傷があるでしょ?それがヒントなんじゃない?死魔を作って私達に送るメッセージを知らせる奴が。なんなの、いったい....はあ....はっ!やだ~!今の誰~?」
.....恐ろしい人だ....何を考えてるのか分からない....。
.....でも、的はいてるかもしれない。
「それ、調べてくれ」
「...了ー解!」
死魔は町の方に向かったか....。ここは仕方ない、アレ(・・)を使うしかねえか。
俺は上から黒のマントを羽織る。
俺専用の黒のマントは俺にだけしか使えない、貴重なマントだ。
うし...行くか...。
家を後にしようとした。