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雨上がり・・・・・

 キーンコーンカーンコーン.....。

 学校のチャイムが鳴り響く。

「おはよー!」

「おはよー!」

 ザワザワと騒ぎ出す生徒はどうやら噂で騒いでいるらしい。

「ねえ、聞いた?!紫縞君、一年の池松って人と付き合うらしいよ!?」

「え~!?嘘~?!紫縞先輩、私狙ってたのに~!」

 そんな噂が広まり、全校生徒までその噂が流れてしまった。

 俺のクラスまで、その話は持ちきって周りがうるさくなる。

「なあ!お前、池松って子と付き合ってんのか?!あのお前が?!」

「ふっ。俺のおもちゃ。誰が彼女にした」

「だよなー!やっぱお前がそんなわけねーかー!」

 男子もたかって言ってくる。

 ややこしいことになる前に俺は屋上へ避難した。

 女子も、そんなに追っかけてこなくなり平和がまた戻ってきた、と思っていた。

 ポツッ――....。

 静かに小雨が降ってくる。

 雨、か――.....。

 空を見上げて目を閉じる。

 俺の両親が死んだ時もこんな雨の日だったな――...。

 目の前で、死魔を作り出した元凶、“シト”と言う名の人間の形をした化け物に――...。

 何の力もなかった俺がこうなってしまったのも、アイツへの怒りからきたものだった。

「俺は.....弱いな.....」

 ぼそりとつぶやいた言葉があの日のことを思い出させる。

 大切なものを失う辛さを知っているほど大切な物は作りたくはない。

 今までだって、そうしてきたはずだった―....。

 アイツに合うまでは....。

 雨がやんで、辺りは雲に埋め尽くされる。

 ....今は授業中か...。

 一人で廊下を歩き、家へ帰ろうと靴箱を空けたら、中から一枚の紙が下に落ちた。

「....んだ?」

 拾って中を見てみると、池松からだった。

 “一人で帰んないでよ?”

「....あほらし」

 おもちゃのくせに生意気な奴だな。

 紙を池松の靴箱へ入れ、さっさと帰る。

 足を家の方向に動かすが、かすかに死魔の気配がした。

 ――...?!昼間もか.....。

 人気のない一本道がやけに危ないような気がして学校へと戻ってしまう。

 まだ、ここは安全、か――....。

 っち、面倒だな...仮ごっこでもしてやるか。

 ぐぎゅううう....。

 腹、減ったな。何かアイツにでも買わせて食うか。

 ケータイにメールを打ち、池松にサンドイッチを買わせるように指示したメールを送った。

 昼休みになり、屋上で横たわっていた俺にパンを差し出された。

「はい....これでしょ?」

 怒ってこっちに来ると思ったら、表情が少し寂しげだった。

「?おう..........どうした?」

「え?あ、ううん別に?.....ただ―...」

 コイツはこいつで何かを抱えているのかもしれない。

 俺にとってはどうでもいいことだが.....。

 体操座りで隣に座ってくる池松がなんか深刻そうな顔をしていたから、つい心配になってしまった。

「今度テストがあるから.....私そのテストに合格しなきゃ今年の夏休みが終わっちゃう.........!! はっ!そういえば紫縞君って頭よかったよね!!私に教えてくれない?!勉強!!」

 予想よりはるかに上回る答えが俺の思考を止めた。

 .........は?

「じゃないと私の夏休みがおわっちゃうよ~!わ~ん!!」

 今度は泣き出してそのまま俺に訴えてて来る。

 俺はお前の何でも屋じゃね~!!

「はあ~?そんなもん自分で何とかしろ。人に頼るな」

「そこを何とか!!」

 服を掴まれて引きずられているのにまだ離さない。

「離せっ!俺はしねえ、ぜって~しねえ!!」

「.....わかった」

 お....?あっけなく早えな、今日は......。

「他の人に教えてもらうしかないか.....はあ....」

 池松はふらふらっと屋上から立ち去ろうとする。

 ....他の奴....?....今さっきまで俺に教えてほしいとか言ってたくせに....。

「...それ、どれだ」

「え?」

「だから、その教科は何だって聞いてんだ」

「.....理科と...数学、だけど....教えてくれるの?!」

「....ただの暇つぶしだ」

 俺の向かう先は図書室。

 親鳥の後ろについてくる子供のように、池松も俺の後ろについてくる。

 入ると人数が割と少なく、すぐ近くの机に座った。

「よ、よろしくお願いします.....」

「さっさと始めろ」

 元気のいい声が返ってきて早速集中して取り組む姿がなんだか幼く見える。

 本を読みながら池松をびしばしと指導している俺はいったい何をやってるんだろうと疑問を持ちながら 一緒に取り組んでいた。

「――...」

「?じゃあ次はこ――...紫縞君...?」

 テーブルに肱をついたまま俺は寝てしまった。

「――....あ、葵、君.....?」

 寝ている紫縞に名前を呼ぶ。

 きょろきょろと周りを見回して紫縞を起こそうと揺らして呼ぶが、反応がなくて池松は困っていた。

 ガラッ―...。

「あっ!尋ちゃん!....?どしたの?.....あ~、な~るほど......そういうこと」

「うん...明良はどうすればいいと思う??」

「うんとね~....ごにょごにょ」

 池松と明良はこしょこしょ話をして、それを実行しようとしていた。

「....ふ~」

 紫縞の耳元に息を吹きかけると紫縞はすぐに起きて後ろに飛んだ。

「~~!!.....お前か...お前がやったのか」

「ほら、起きたでしょ?ふふふ」

「....うん...そうだね!明良!ふふふ!」

「....おい、明良...お前がコイツに教えたのか....?」

 あれ?....いねえ....。

「今日はそんなことでここに来たんじゃない、尋ちゃんに渡す物があってここに来たんだ」

 ....いつのまにそっちに....。 

「え?私に?」

「そう、スレイヤーシグダム。君の力になってくれるはずだから。じゃ、僕はこれで」

 そう言うと明良はさっさかと何処かに行ってしまった。


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