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俺はどうしたんだ―・・・

 誰かの声がする―.....。

 誰だ....?

「.....丈夫....?ねえ、大丈夫??」

 目に映ったのは顔面にどアップで映る池松の顔だった。

 びっくりした俺は起き上がろうとすると、何か不意に暖かいものが口に触れた。

「――....っ!」

 数秒止まり、目を見開く。

 ....キス.....していた....。

「はーい!いちゃつくのも対外に―、しろおおおおおおおおお!!」

 明良の大声でやっと離れた俺らは、まだどこかぎこちなかった。

「ほんと、お前だけ...なんだよ!俺が彼女できないからって俺に見せ付けてよ~~!!」

 今度は泣いてしまっている。

 まったくついていけない状況の中で一人だけ浮いている。

「....~、お前はそしていつ帰るんだ」

「え?!わ、わわ私は今日はこ、こここここに、と!とととととま―....」

「まさかここに泊まりに、とか言わねえだろうな....」

「そ、そう言ってき、たけど....」

「やめとけやめとけ、襲われるぞ」

 俺は立ち上がり、風呂場へと向かう。

「お、おお襲われるって.....!」

「おお、そいつに」

 俺は明良を指差すと池松は顔が真っ赤になり、俺のところへと非難してきた。

 ....コイツ、わりと素直に聞くんだな....冗談なのに。

「何――!?俺はけしてそんな事―.....ごにょごにょ」

 おい....俺は冗談で言ったんだぞ。...ったく。

「――...俺、風呂入るんだけど、お前も入る?」

「っ?!ひあ!は、ははははははひ!!」

 上半身を脱いだだけで池松は顔を真っ赤にして出て行こうとするが、壁にぶつかり下にしゃがむ。

「ふっ...くくくっ....おもしれー奴」

「なっ!...........笑ってる」

 あ?何言ってんだこいつ。

「どーでもいい、ほら、さっさと出てけよ。恥ずかしーんだろ?」

「うん......」

 ボソッと聞こえた声と穏やかな池松の顔が何故か俺の心臓を貫いた。

 ....んだこれ......?

 池松が風呂場から出て行った後、俺は下にしゃがんで頭をくしゃっと持ち上げる。

 風呂に入っても、何だかさっきからおかしいのは自分でも分かる。

 っち....何なんだ....さっきの...。

 風呂から上がると、明良が俺を呼んだ。

「なあ、今度の日曜って何もないだろ?俺らでさ、久々に遊びに行かないか?!」

「あ?俺無理。日曜パス、先約入ってっから」

「何?....まさかデート?」

「そ、デート」

 ガシャーン――....!!

「あれ?どしたの誰かお皿落とした?」

「あ、ごめん!私うっかりしてて...いたっ!」

「何やってんだお前?そんなのやんねーでもいーのに、ほら来い。おいっ!真衣!コイツ頼む」

 ぱたぱたと駆けつける。たぶん真衣の部屋で手当てしてくれるはずだろう。

「い、いーよ!私が割ったんだし私が片付けるから――...」

「いーから行って来い」

「....うん」

 とりあえず明良にも手伝ってもらい、何とか片付けた。

「....それで?何処で待ち合わせしてるの?」

「?....陽の間公園に昼ぐらいっつってたけど」

「ふ~ん....ずりいーぞ...俺は、俺はこんなにも彼女がほしくてたまらないのにいいい!」

「....はいはい」

 小さい子を慰めるような感覚で接する。

 とりあえず、もう寝るか―...。

 二階へ上がると暗闇の中に誰かがいた。

 ん?........池松か....?

 どこか後姿が寂しそうに見えた。

「あ、もう戻ってきたんだ。じゃ、もう寝るの?それだったら私は戻らなきゃ―....」

 どこかいつもよりも元気がなくて声が寂しげだった気がする。

「ふ~ん。そ、じゃ」

 後ろで歩く足がピタッと止まる。

 ....?

 振り返ってみると、目は合ったはずなのにそらされて戻ろうとしていた。

 その態度が妙にむかついて口を開いた。

「....それ、俺に対する挑発?」 

 黙って首だけを振る池松の後ろ姿をじっと見つめる。

「それとも、俺に構ってほしくて技とそんな事してるわけ?」

 池松はただ首を振る。

「じゃあなんでっ!」

 池松の腕を引っ張りこっちに向かせたら、池松は涙を溜めて泣いていた。

 .......っ!?

「な、なんでもなっ――...」

 俺の手を振り払ってこの部屋を出ようとするのをいつの間にか俺は、後ろから池松を抱いていた。

「―――っ!?」

「.....っかつく....」

 自分が分からない。こいつもわからない。

 なんで泣いてるのかも分からない。どうして俺がこんなことをしているのかも分からない。

 けど、一番むかつくのは、お前だ―....。

「.....わりい....一人にしてくれ」

 俺が一旦外の空気を吸おうと、ベランダへ向かうと今度は池松が俺の背中の服を掴んで離さない。

「......っ......好き....なの...」

 ドクンッ――....。

「紫、縞君が....好き.....だ、だから私は...って、ほしくない....の...っ」

「.....ふ~ん。お前、俺が好きだから行ってほしくないと?.....マジ?」

「だ、だからそう言って―...」

「俺の何処が好きなの?」

「~~~!!もう、いい!」

 あ~あ....なんか怒ったっぽい...。

 ....っふ。そーかそーか、俺が好きだから、ねえ。....可愛い奴。

「いいよ。付き合っても」

 ガタッ―....。

 壁越しなのがちょっとあれだけど.....。

 バタンッ―...。

 勢いよく、扉が開く。

「それ....ほんとに...?」

「ふっ....情けねえ面」

 指で雫を拭いさると強引に口をふさいでいた。

「――っん.....!」

「.....じゃ、明日からまたよろしくな。池松」

「....う、うん.....」

 そのまま池松は帰ると、俺はベッドに横になった。

 ふっ。....おもちゃができたな。これからもまた楽しくなりそうだ。

 そんなことを考えていると窓から猫が入ってきた。

「そんな事やってると、バチがあたるわよ」

「うるせえくそ豚猫。黙ってろ。俺はもう寝る。何ならお前を抱いて寝てやろうか?」

「あたしはいいわよ~。あなたと一緒になれるなら」

「ふ~ん。お前さ、男の部屋何回入った?」

「数えきれないほど?」

「じゃ、そんな男どもよりいい思いさしてやろうか」

 猫をベッドに連れこみ、寝かせる。

 女は吐息によわいことぐれえ知ってる。

 首筋や下辺りまでに吐息をかけるとすぐにやられる。

 ほら、コイツもそうだ。

「そんぐれえでへこたれんなら、もっと他の奴探せ。くそ豚猫」

 猫は頬を膨らませて夜の中に帰っていった。

 俺にはバチなんか、屁でもねえよ。

 そんくらい、何回もあってきたからな.....。

 俺には一生幸せはこねえよ.....。

 そう考えていた。

 前までの俺は―....。

 これでも、よくなったと言えばよくなったのかもしれない。

 あの日から俺は、止まったままだから――....。


 

  

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