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甘酸っぱいの、食いてえ・・・・・


 次の日―....。

 

 ふあ~...。

 眠い...昨日散々女に追いかけられて最後には撒いたけど...。

「俺が何したって言うんだ....!!」

 そして朝から女にまた追いかけられている。

「あ、紫縞君!おはよ~!」

「ん?池松か、悪い、後にしてくれ」

 走る俺を追っかけるように池松まで一緒に走る。

「ちょ、ちょっと!私を無視して行くなんて最悪ね!」

「~っち、...おい、ちょっとこっち来い」

「....へ...?」

 壁に押し寄せるようにして池松に顔を近づけ周りの女どもに恋人だと思わせるようにした。

「ちょ、か、顔近いってば!!」

「静かにしてろ、女どもに追われてるんだ」

 足音が聞こえなくなり、揉め事の声がしたが無事に追いかけられることはなくなった。

「は~....ったく、なんで俺がこんな目に....行くぞ」

「う.....うん...」

 道路を歩く音と車の音が聞こえる。

 いつも歩いている道に、新しい音が混ざり何か新しいことでもおきそうな予感がした。

「おやま~、葵が女の子連れてる~!めっずらし~!!」

「おー、明良もここに来たのか。お前も珍しいだろ」

 偶然道端で明良と遭遇した。

 いつも機械ばかりいじってる奴が...。

「あ、あなたが明良さん?」

「ふーん。こりゃま~葵ってばいい子選んだね~?」

「え?!な、何言ってるの!私たちはそんなんじゃ―....」

「いい加減ふざけてっと殴るぞ」

 ぼかっと明良の頭を一発殴ってやった。

「言う前に殴ってんじゃんかー!!」

「あははは!」

 池松の笑い声が聞こえた。

「で?なんでいつもはあの場所にいるお前が学校に?」

「んー、暇つぶし?」

「てめ...」

 もう一発殴ってやろーかと思ったけど持ち直してやめた。

「ごめんって!いやー、葵がなんか青春っぽいことやってるから、俺も青春しようかなって!」

 じろり。

「う...た、助けて~尋ちゃ~ん!」

 .....こいつ.....。

 明良を睨んでやったらどういうわけか池松の方に引っ付いてしまった。

「ちょ....何するんですか!離してください!」

「え~、やだよ~。僕尋ちゃんが好きだも~ん」

 一瞬、池松の顔が止まったように思えた。

 ...明良の奴....何考えてんだ?...てかいきなり合って積極的だな....。

「ふ~ん、そ。勝手にやってろ」

 俺は二人を置いて先にスタスタと行ってしまった。

「あ、ちょっと待ってよ!」

 ...はあ~、俺は疲れてるんだ。構うなよ!

「....ふ~ん?」

 明良が何を考えているのかさっぱり分からない。分かっているのはむかつく奴って事だ。

「ちょ...学校は...!?」

「さぼる」

「は、はあ~~?!」

「別に俺に付き合わなくてもいいだろ。大体、何でお前は俺に付きまとうんだ」

「え....いや....別に...」

 ...ふう...。ったく....。お...何か店で飲むか。

 コーヒーを飲みに店に入った俺はさっさと椅子に座る。

 池山はどこか緊張しながらもおどおどと俺についてくる、のはいいものの....。

「おい....ついてくるなといったはずなんだが?」

「...ご、ごめんなさい....」

「別に...」

 コーヒーを片手に一口飲み、テーブルに置く。

「それで?俺に何か用?」

「あ、...いや..別にたいしたことはないんだけど....これ...」

 ...弁当...。しかも三段重ね...。

「あー、そういえば言ってたな。そんな事」

「そ、そういえばって何よ!期待してるって言うから...頑張った、つもりなのに....」

「ふ~ん...」

「ちょ、ちょっと!!」

 折角作った弁当を食べないのは悪いしな....。

 包んでいる布を早速解いて、弁当を開ける。

 ....まだ昼にはなってないが...ま、いいか....。

「へ~....」

「い、いらないなら他の人にあげるか―.....」

「なんであげんだよ、誰も食われえとか言ってねえだろ」

 割り箸をパキッと割ると同時に池松が驚いて目を開いた。

「ま、一様礼は言っとく....ありがとな」

 一人で弁当を食べていると、池松があまりしゃべらない事に気付いて顔を上げた。

「..........」

 うわ...何だよコイツ....。顔真っ赤......。

「お前―...顔赤いぞ?」

「え?!そ、そう?!気のせいだよ」

 あははは―...とか笑ってるけど、顔が赤いせいか笑っている気がしない。

「つーか、俺これ一人で食べきらねえからお前も食え」

「え?!いいよ私は!....」

 強情な奴だな....。

「いいから食え」

 卵を池松の口に入れてやると、池松は更に赤くなってしまった。

「~~~~!!」

 そんなやり取りをしていると急に誰かが俺の隣に座ってきた。

「やっぱりあーちゃんだ!...?だぁれこの方」

 お....明良の姉....。

「か、かか彼女ですっっ!!」

「.....おい、俺がいつお前を彼女にした」

「あらあら?そ~ゆ~関係なのね~?大丈夫よ~。私はそんなつもりないから。うふ!」

 おいおいおい....。

「私は明良の姉、梧桐真衣よ。あなたのことは明良から聞いてるわ~。秘密なことも知ってるけどw」

 秘密....ねえ....?

「え....?!いやその....えと....はい.....」

「なんだ?その秘密なことって―....」

 ?なんだ、俺なんかまずいことでも言ったか....?

「じゃ、尋ちゃん、頑張ってね?うふ」

 アイツはいったい何しにここに来たんだ......。

「.....紫縞........君」

 今度は呼び捨てかよ。

 最後の、君の言葉は小さく、池松は下を向いた。

「その...今カノ―....」

 ガシャーン!!

 池松が言いかけた寸前に窓の割れる音がした。

 店の客が騒ぎ出して、だんだんと人数が減っていく。

 なんだ.....!?

 音がした方に顔を向けると死魔が人を食らっていた。

 人には見えない、物体が―....。

「っち、こんな時まで死魔に遭遇しちまうとはな!!」

 ほとんど客は出て行き、誰もいない店に俺と池松、死魔だけが取り残される。

 テーブルに足をつけ、手から青い炎の剣を出した。

 剣を出すと、魔力が高くなり大抵の人には見えなくなる。見えるのは霊力のある奴か俺と同じ奴だ。

「おいっ!池松!お前は逃げてろ!!」

「で、でもっ!」

「っち、早くっっ!!」

 自分がこんなに大声を出すなんて、自分でも驚いてる。

 それにもかかわらず、死魔は早くも襲い掛かってくる。

「早く行けっ!!」

 この死魔は...前回とは...違う....?!

 っち...面倒な奴が降りてきやがったな....。

 黒い布を被り、顔らしいところには一つの目玉がある。

 手にはいかにも死神らしいかまを持ち、恐怖と言うイメージを持たせる。

「へっ.....前回よりちっとは戦いらしい戦いになりそうだ、な!!」

 死魔の腹を真っ二つにしてやると再び再生してこっちを振り向いた。

「.....っち...めんどくせえ...」

 同じ剣同士の音が店に響く。

 どうする....。コイツは何処が弱点だ....。

 考えながら切りあっていると、死魔の刀が俺の肩に傷をつけた。

「...くっ...」

 死魔と離れて左手で肩を抑える俺は完全にやられた。

 右手が.....使い物にならねえ...!!

 ああ.....俺はこんな雑魚にやられるのか....。

 いっそそれでもいい、なんて考えていた。

「あ~あ、だから言ったのに」

 何処からか声が聞こえた。

 暗闇の空間の中で、そいつとまた、出会った。

「....お前は....?」

「え~!?ひど~い!豚猫って言ったのを忘れたの~?!」

 まさか俺はコイツにまた出会うとは思わなかった。

「なんで俺は死んでないんだ?」

「まっさか~!あんなのを殺せないなんて、あ~ちゃんらしくないなー!まったく」

「.....お前が転送したのか?」

「まさか!ただあーちゃんと話してるだけだよ!この空間でね」

「女だと思って手加減しねえぞ」

「いやいやいや!僕はあーちゃんの見方なのに~...!...えぐえぐ...」

「肩は直してあげたから、ほら、さっさと行かないと尋ぽん死んじゃうよ~?」

 はっ!

「.....アイツは何処だ!何処に行った?!」

「さあ?じゃ、頑張ってね~!」

 暗闇がだんだんと消えて元の店の中に戻る。

「池松!何処だ?!おいっ!返事しろ!!」

 人が多く通る中、俺は大声で叫んだ。

 周りの奴らは呆れた目で俺を見るがそんな事気にしない。

「くそっ!アイツ何処行った....!」

 走る俺はだんだんと息切れして足をいったん止めた。

 はあ、はあ、はあ.....くそっ....!!

 にゃ~お。

 猫の声がして、顔を上げる。

 コイツ....!!案内のつもりか...?

 猫がこっちへ来いとでも言うように誘う。俺はその後をついていった。

 何処だ....ここ.....。

 走りながら周りを見渡す....。

 どうやらどこかの廃墟ビルにでも来てしまったらしい。

 猫が足を止めると、俺の足も止まった。

「....なんだよ。脅かすんじゃねえこの豚猫。....はあ....帰るぞ、池松」

 崩れた機械のごみの中に池松は座り込んで下を向いていた。

 手を差し出しても、何だか様子がおかしい。

「おい、池松.....?」

 体をゆすってみると顔が脱落したように無意識のまま目が開いているだけだった。

 目に.....光が、ない.....?

「にゃおっ!」

 後ろに何かの気配がして振り向く。

 ガキイィィインッ!!

 ..........―死魔、許さねえ.....。

「お前は、一生地獄に這いずり回っとけ」

 黒い何かが俺の中に生まれた。

 俺の目は黒色から赤く染まり、髪の色は茶色から黒に変わった。

 死魔を右手だけで簡単に始末したら池松のほうへ顔を戻す。

「........っ.....」

 冷えた池松を抱き寄せると俺は初めて後悔した。

 俺が巻き込んでしまったせいでこんなことになってしまった....。

 俺が....俺のせいで.....。

「生き返らせたい?」

 振り返ると、猫は人間に化けていた。

 こいつ―....いったい、なんなんだ.....?

 猫の言葉が、俺の心の中を救ってくれた気がした―....。


 

 

  


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