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最後の試練


 俺はもう、あんな思いをしたくは無い。

 二度と....。

「紫縞君...どうしよう....」

 歩きながら、池松が不安そうに尋ねてくる。

「.....真衣」

「これは、何かしら....?」

 足を止めて橋の下で何かを俺達は見つけた。

 地面にべっとりと付いた緑色の液体が少し、風でなびいている。

 その液体を人差指で確認すると、どうやらこれは人間で言う“血”ではないかと、真衣は言うけど。

 もし、その液体が血だとすれば、どうしてこんなところにあるのだろう....。

「これはもしかしてウイルス剤かしら...?」

「ウイルス剤?」

「そう、技術研究で作られていたビタール。すなわち“化け物”よ」

「なんで....そんなものが....」

 池松は話の中に入ってくる。

「ビタール....ああ、アレか、研究者の一人がこっそり作って異様なまま死んだ、って....けどアレは

 かんけーねーだろ....外の人々を騒がせただけだ、何もこれらに関わってない」

「....そうね。でも、関係ないとは、いえないかもしれないわよ?」

「...え?」

 真顔な顔で俺らを見つめる真衣。

 その顔はどこか懐かしくて妙に苦しくなった。

「ビタールはそれの手先にいるかもしれない。その可能性が高くなったわ」

 要するに....その本体とつながりがある.....って事か...。

「........俺に行かせろ」

「え?」

 池松が目を見開いて俺を見ている。

「ぶっ潰してやる」

 その時の俺の目はとても人の目ではなかった。

 苛立ちと憎しみ、悲しみもすべてそいつに向けていた顔はとてもじゃないくらい醜い姿だ。

 一人で街中を歩いてく俺の後姿をふたりは見つめていた。

 そのままただ歩いていた。

 そして、誰かに腕を掴まれる。

 ....誰―...?

「どう....して、いつも一人で立ち向かおうとする、の...?」

 そこには息を切らしながら俺に話しかける池松の姿があった。

 今の俺にはそんなの聞こえない、いや、聞けないんだ。

 殺す―.....。

 憎しみを抱いて、池松を振り切りアイツの場所へとまた足を動かす。

「駄目っ!!」

 しぶとく池松が俺の腕を引っ張り振り切る。

「私は―...!....ここに、いるから....」

 離れた場所で声がした。

 “私は.....ここにいるから....”

 池.....松の、声?

 ようやくその声が足が止まり、心の中に聞こえた。

 けれど、どうしてか、俺は心の中だけに生きてるみたいで暗闇から出れなかった。

 不意に雨が降り出し、俺達を濡らす。

「私は、紫縞君が傍にいなきゃ、だめ、なの....」

 その声は届いているのに、応えることだけができない。

 一歩一歩と近づいてくる声と足音が俺の中で揺らす。

「おね、が―.....」

 ヒュンッ―....。

「ぐはっ――......!!」

 俺の体に何かが通り抜けた。

 べしゃっと血を吐き出す俺は前に倒れる。

「紫縞君!!?」

 急いで駆け寄る池松は俺を起こして引き寄せた。

「紫縞君、紫縞君!!」

 今でも泣きそうな顔をしているのに、ぼやけてあまりよく見えない。

「い...けまつ.....」

「何?!やだよ!!どうして、こんな....!!」

「わ....りい...。お...れじゃなく、ても、他のいい男...いっぱ..るから...よ...さが..して.」

「やだ、やだっ!!そんなジョーク....っ?!紫縞君?!や、やだあああああああ!!」

 雫が紫縞の頭に落ちる。

「...いや...死んでねえ、殺すな...」

「よ、かった....ふっ...ううあああうっ...」

 っち...くそ...。

 けど、それで何とか戻ったみてーだな....。

「泣くなよ」

 にっこりと笑って池松の涙をふき取り、キスした。

 あー...ちくしょー...。これじゃあまともに動けねえ...。

「ふっ...う...っ....。あ、あなたの力、お借りします」

 池松の首に飾ってあるキーホルダーが、輝いて池松の周りがだんだんと花だらけになる。

「....なん...じゃこりゃあ...」



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