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すべてに理由はつき物―....

 

「俺の顔を見ろ」

 無理やり上に向かすシグナに逆らうように、私も力を入れて拒否した。

「い、いやです~~!!」

「いい加減に、し―....」

 ちょっと油断をして顔をぐいっと上げられると、シグナはピクリともせずに止まった。

「な、何ですか?.....??」

 なに?どうしたの??

 ....?止まってる?....おーい、おーい。

 顔の前に手を振るけど全然反応がない。

「....ねえ、大丈夫?」

 頬をつんつんとしてみたら、やっと気付いたようだ。

「....ふん」

 今度はシグナの方が照れているらしい。

 あれ...シグナさんも照れること、あるんだ....。

「ふふ.....、可愛い」

「あんまり調子に乗ってるとおかずにするぞ」

「ふふふ、だんだんシグナさんのこと、わかってきたみたい」

「~っ.....お前に俺の何が分かる」

 ....え?

 シグナは怖い顔つきになる。

 今さっきまで楽しい時間だったのに、また元に戻って距離が離れてしまった。

「昨日はあんなに怖かったのに、今ではそんなに怖くないんです」

「......」

「それって、シグナさんが優しいから何じゃないですか?」

「......」

「私は.....怖いシグナさんより、穏やかなシグナさんのほうがずっといいと思います」

「で?」

「え?」

「だからなんだ?お前は―....」

 不意に何かが光った。

 シグナは焦ったかのような顔で暗闇を振り返り黙って睨んでいた。

 ?シグナさん?

 今までに、そんな顔を見たことが無かった。初めて見る顔だった。

 私も暗闇の方を振り向き、じっと見る。

「何をしている。さっさと取り組まないか」

 声が聞こえた。男性の声で、暗く低いどん底に落とされたような声が。

「申し訳、ありません。現在進行中です」

 シグナが見えない声に向かって、手をお腹に、頭を下げ礼をしている。 

 え?!シ、シグナさん?!

「リリーもそう思わないか?」

「...はい、おっしゃる通りです」

 リリー?そこに女の子がいるのかな...?

「さっさとやらないと、妹の命はないぞ?シグナ」

「......はい」

 い、妹おおおおおお?!

 何をどう言っていいのか分からなくて、私はそこでうろたえていた。

 ....もしかして、シグナさんはこの声の男に脅されてるんじゃ......。

 考えれば考えるほどそう思えてくる。つじつまが合うのだ。

「もうそろそろわしは待てんぞ、いいな」

「.......はい」

 その声は消えて、シグナがこちらを振り向く。

「おい、玩具」

「え?は、はいい!!」

「今の.....忘れたことにしろ」

「.....やだ」

「おまっ~....」

「妹さん、救いたいからこんな事するんでしょう??」

「...お前に関係ない」

 そんな...今でも辛そうな顔しないでよ.....。

「~っ、関係あります!!」

 私が大きい声でしゃべったのはシグナにむかついたからだ。

「それじゃあ、言わせてもらいますけどシグナさんはどうして私をここに連れて来たんですか?!私みたいな人間なら、世の中にはまだたくさんいます!!」

「...それは...気に入ったからで―...」

「じゃあ気に入ったのならその気に入った玩具の言うことを聞くのも主の務めじゃないんですか?!」

 ぐっと抑えていたものが外に出てしまって後から言うんじゃなかったと後悔する。

「関係がないなら....はじめから、私を連れ出さないでください....」

 そこから立ち去ろうと窓をまたごして木の元へと近寄った。

 そこにだけ咲く一本の大きな木を見つめて私は思う。

「私は、木になりたいです」

「そんなのになってどうすんだ」

 シグナも窓をまたごして私の元にやってくる。

 少し、不機嫌面で。

「木って、すごいんです。風に揺らされても頑丈にどしっとそこに立ってず~っと我慢してるんです」

「....我慢?」

「はい、私はそう思ってるんです。芽が咲いて、枝が生えて、それがどんどん大きくなるまでずっとそこにいなきゃならないんです。私だったら今すぐにでもそんなとこから脱出してどこかに旅立ちそうなのに

木は、人の声が聞こえるだけで話すこともできない、ただ揺れるという表現でしかできないんです。我慢強さがないと、できないことでしょ?」

「...........我慢、ね」

 揺れる木を見ながらシグナの心が少しだけ開いたような気がした。

 はっ....私ってば何一人で語ってんの?!

「それなら私達に協力っていう話はどうかしら~?」

 ばっ―....。

 壁越しに、ひょっこりと顔が見えてそこからなんとジャンプしてくる。

「ま、真衣さん」

 その声の正体は明らかなものへとなった。

 その他にも紫縞と明良がそろってみんな勢ぞろいだ。

 な、なんでここがわかったの?!

「....どうやってここに―...」

「俺、納得いかない」

 紫縞が腕を組んでシグナを睨んでいる。

「こいつとだあ?やなこった。事情がどうあれ、俺は拒否する!!」

「ああ?十分だ、おれだって嫌だからなあ」

 顔をくっつけあう近さでにらみ合う二人、仲の悪さは世界一かもしれない。

「ま、真衣さん....どうしてここに...?」

「ん~、話すと長くなるわねえ。けど、協力するならバンビちゃん、飼ってもいいかもよ?」

 わーいわーいと明良は何かしら喜んでいる様子だ。

 ん?バンビちゃん??

「ほら、バンビちゃんおいで~!」

「~~~っ!!!誰がバンビちゃんだ!!ふざけるな、俺はごめんだ」

 あ.....バンビちゃんってシグナさんのことだったんだ...けど...。

「ぷ.....か、可愛い」

 おかしそうに笑っていたら、シグナの顔が一気に音をたてるように赤くなる。

「わ、笑うな....」

 ぷいっと横を向くシグナを見ていたら、更に笑ってしまう。

 そんな私達の姿を見て真衣さんは「あらら~?」とか言って微笑んでいる。

 ぷぷぷぷ.......っわ!!

 不意に後ろから抱きつかれたと思えば紫縞だった。

「おい」 

 顔を見てみると、すごく不機嫌そうにシグナだけを睨んでいる。

 紫縞君.....??

 いつもの反応と違くてその時は戸惑いを隠せなかった。


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