くだらない日だ
この町には、平和という平和はない。普通に過ごしている奴らは誰も気付かない、ただ闇が訪れるのを待つだけだ。俺はそんな闇の化け物を排除する役目をもってしまい、誰にも気付かれずに排除しなければいけない。だけど、ほとんどが平和なせいか学校の授業とかがくだらなく思えてくる。
「え~、今日から新入生の紫縞 葵君で~す!」
「.....俺保健室行っていいか?」
クラスの女子はきゃあきゃあ言っていろいろ聞いてくるが、紫縞はドアを開けて廊下を素早く歩いた。 ここか....。
ガラッ―...。
「あら~?紫縞君じゃな~い?よく来たわね~!さ、さ入って入って~?」
「...お前、保健の先生だろ」
俺は間違ったとこに来たみたいだ....。
「そうよ~?保健の先生 嵯桜由理で~す!よろしくね」
その言葉が途切れた後、嵯桜は俺にキスしてきた。
ドタッ.....。
俺は固まっていたが、その音で我に戻り、ベッドの方へ視線を向けた。
まさか.....。
「ご、ごめんなさい!!見るつもりはなかったんだけど.....」
案の定―......!!
「あら、池松さん起きたの?うふふ、やあねえ!私は可愛い子にはキスしたくなっちゃう体質なの!」
うふふと嵯桜は笑うと、コーヒーを入れだした。
「...俺は眠いからここに来たんだ。寝かせろ」
「わっ....!」
一つしかないベッドに入り、まぶたを閉じた。
「あ、あのっ!い、一緒に寝るのは―....」
「大丈夫、お前なんて襲わねえから安心しろ」
嵯桜にコーヒーを勧められたけど断って俺は寝ることにした。
最近ろくに寝てなかったような気がする。排除する数が多すぎて、寝るにも寝れなかった。
久々に寝たら、また誰かの声がして起こされる。
「.....縞君」
「ん........何」
まだ眠い....。
目を開けると今さっきの女の子が俺を呼んでいた。
「.....何だよ、俺はまだ眠いんだ」
「はい、これ」
小さな小瓶を渡された。
?.....ああ、眠気すっきりのやつか....。
「それ、俺にくれんの?」
「うん、もうすぐ授業だしこれ飲んで行こう?」
「.....俺はさぼる。お前だけ行って来い」
「.....紫縞君も行くの!!」
強情なわりに強引な女だな.....。
「...きゃっ!」
紫縞は強引に彼女の腕を引っ張りベッドへと移させた。
「それじゃあお前も一緒にさぼれ」
「なっ!」
それきり、彼女は黙って結局そのまま寝ることになった。
「..........お前の香り...いい匂い...だな.....」
寝ながらぼそぼそと言うと、俺はまた眠りについた。
気がつくともう夕方になっていた。化け物が現れる時間は決まって夕方から夜までの間だ。
俺はその化け物を死魔と呼んでいる。正確には、死神の使い手だ。そいつにつかまれば闇に引きずり込まれて一生そこから逃げ出せない。魂を食べられて生きる屍になるだけだ。
そうなれば、もう助けられる事はできない。だから俺の役割が必要なんだ。
「くそっ.....!」
死魔の妖気が伝わってくる。俺は何故かその妖気を感じることができてしまう、半ば人間じゃないかも しれない。
廊下を走り、だんだん妖気が近づいてくるのを感じる。
「....ここか」
死魔はここの図書室にいる.....。
「死魔!!」
ガラッとドアを開けると、女の子が一人ドアの前にいた。
泣きそうな目でこっちを見てきて、そいつが俺を抱きしめた。
「よかった....紫縞君、居たんだ....ひっく、よ、かった....ドア、開かなく...て」
「お前......」
こいつ....死魔が見えるのか.....?!
....もしかしたら.....こいつ...。
「~~、少し我慢しろよ?」
朝に合った女の子をお姫様だっこすると、急にじたばたして顔から煙が出ている。
「?目、つぶってろ」
三階の窓から飛び降りるとその子は叫び、玄関のところで降ろした。
「見えるんなら仕方ねえ。そこで待ってろ」
「う、...うん....」
お、やけに素直じゃねえか。
外に飛び出したはいいものの、死魔をどうすっかな.....。
考えてるうちに死魔がこっちの降りてきた。
「お、手間が省いた。んじゃ、早速送還させてもらうぜえええ!!」
俺の手から二本の刀が青い炎とともに出てくる。
「えええええええええええええ!?」
なんか後ろでうるせえな....。
「消えろおおおおお!アクアレザーー!!」
次の瞬間黒い物体の死魔は砂になって消えて行った。
...?何だ?今回のはやけに簡単だな.....。
ま、一様明良に電話しとくか。
「明良?俺だけど、今回のはなんか簡単すぎておかしくないか?そっちはどうなってんだ?」
「.....ょっと...」
「そうか....またなんか分かったら連絡―...」
俺が携帯を切りかけようとした時、横からあの女に取られた。
「ねえ!これどういうことなの?!説明しなさいよ!!.....え?い、いや違―......」
返せ!
「誰がだ。偶然コイツがいただけだ。俺がそんなの作ると思ってんのか?!」
ぶちっ。
「ったくなんだんだ.........お前!」
「わ、私はお前じゃなくて池松尋!」
「んじゃ池松、このことは絶対学校では言うなよ?言ったらどうなるか分かってるよな??」
「別に言わないよ?」
「......ならいい」
ふっ。変な奴....。
「じゃーな」
「あ......」
今日の晩飯はなんだ....。エビフライか....ハンバーグか.....。
帰り道、ご飯のことを考えながら家に帰った。
といっても俺の家は住ませてもらっているただの居候だ。
ドアを開けるとすぐにアイツが―....ホラ.....。
「あーちゃんお帰り~~!」
「あーもう、うっとうしい....」
ここは家って言うよりも、俺等の仕事場でもある。
俺の知り合いの梧桐明良も俺と同じメンバーだが、明良は主に情報を集めたりし て作業している。そして明良の姉 梧桐真衣も同じくメンバーであり、俺とは違う 種類の排除するもの。性格は俺とは合いそうもないが家がない俺にとってはありがたい話だった。
俺は両親の血を受け継いでいたため、偶然にもその力を発揮することができた。けれど、両親はデスブ ラックと言う奴に殺され復讐を思ったことはある。そんな時に初めて真衣が真剣に俺に言ってきたこと を今でも覚えてる。
“怨んでも殺したとしても、最後に悲しくなるのはあーちゃんだよ?”
あんな真衣を見るのは初めてだった。
まあその結果、今は怨みも消えたし結果オーライなんだけど....。
「今日は和風ハンバーグで~す!!」
ぐうううう.....。
「真衣~!飯まだ~!?」
あ、明良.....こっち来たら....。
「自分のことしか考えないのかああお前はあああ?!」
あ~あ....。
「....それ以上やったら明良死ぬぞ....」
「あら!やだ私ったらっ!さ!ご飯たべようか」
リビングへと三人そろって向かう。
「じゃ、いっただっきまーす!」
「いただきます」
「ばくばくばく」
「あ~き~ら~?」
....なんかいいよな、こういうの....。
「あ、それよりさ電話の女の子、誰よ?」
「あ?あー、だから偶然会っただけだって―...「えー!?誰々?!彼女?!」
「違えよ。っていうか、明良、池松 尋って知ってるか?」
「池松?!嘘!!マジ!?」
....おい....。
「何でも、死魔が見えてるらしいんだあいつ」
「ふーん。けどさ!池松って言ったら可愛いよなあ...ああ、僕は彼女の笑った顔が見たい....」
....笑った顔、ねえ.....。
「あいつ、普通に笑うぞ?」
それがどうしたんだ?
「え?!嘘!誰も笑ったことないって言うのに」
....へえ....。
「もしかして、好きなんじゃない?あーちゃんが!」
「...今寒気がした。そんな気持ちの悪いこと言うなよ....ご馳走様でした」
「あ、ちょっと....!」
自分の部屋に戻り、ベッドに倒れこむ。
疲れた........寝る。
まぶたを閉じると、いつの間にかどこかの空間にいた。
ここは.......何処だ.....?
辺りは暗闇で、自分だけが浮いている感じだ。
何処からか声がする。俺を呼ぶ声が.....。
“葵―...。パートナーを見つけなさい。パートナーを見つけて契約を結ぶのよ...今すぐにでも―...”
はっ.....。
何だ.....今の夢は.....?
「あーちゃ~ん!朝だよ~!遅刻だよ~!!」
あ、もう朝か.....。
下の方から真衣の声が聞こえる。
香ばしいコーヒーの匂いがして俺はリビングへと向かった。
「はい、鞄忘れずにね~」
「...行ってくる...」
「いってらっしゃ~い!」
家を出て焦らずに学校へ歩いていると野良猫が一匹なすりついていた。
「?なんだお前、俺はお前にかまう暇ないぞ」
「ごろにゃ~ん」
「俺は.......」
「みゃお~」
「........」
どうする....。こんなときどうする....。
考えて歩いていると、黒猫はどこかへ行ってしまった。
ふう、やっとどっか行ったか....。
「にゃ~~お!!」
何処からか黒猫がまた現れて俺に向かって飛んできた。
「おわっ!!」
倒れた俺は黒猫にすっかり気に入られてしまったのか、顔をすりすりとじゃれてくる。
「.........」
どうしてか、俺から離れない黒猫は一緒に連れて行くことになってしまった。
教室にはさすがに駄目だろうし保健室は.....やめとこ.....。
結局屋上で一緒に空眺めって事になって俺の腹はぐーぐーなっている。
ああ....もう昼休みか....。腹減ったな......。
猫と一緒に空を眺めていると不意にドアの音がした。
「あれ......紫縞君じゃん。こんなとこでな―....きゃ~!!」
ビクッ.....。
「何だいきなり。叫ぶな」
「この子どうしたの?拾ったの??」
「そいつ、俺から離れなくてイラついてたんだ。丁度いい、お前そいつ絶対離すなよ?じゃあな」
「みゃ!!」
「あっ.....」
池松が黒猫を持っていたのに関わらず、黒猫はジャンプで俺の頭に乗ってきた。
「うおっ.....!」
飯が.....食いたいのに.........。
「あはは!よほど気に入られているんだね、その子に」
ぐうううううう...。
「......紫縞君...お腹空いてるの?」
「俺はだから早く飯を食いに行きたいんだ」
「私の食べる?私あまりお腹空いてないから....」
「いらねえ。お前の分はお前のだろ?俺は早く食堂に.....いい加減離せこの豚猫っ!!」
「みゃ......!」
人の話が分かるのか、黒猫は離れたとこに行き尻尾を見せてしんなりしているようだ。
....なんなんだよいったい.....。
「んじゃ、俺食堂に行って来るな?猫」
「...ねえ、私も一緒に食べていい?」
「あ?知るか。勝手にしろ」
「ふふ、勝手にするし!」
なんだこいつ....。
「おばちゃん、ハンバーグ定食一つ」
「あらあら!お似合いのカップルだねえ。少し安くしとくよ!」
「....カップルじゃねーし....」
「お、おばちゃん....!」
椅子に二人で座って待ってたら、何だか周りがやけにざわざわし始めた。
「はいお待ち!和風ハンバーグ定食、たんとお食べ!」
「....どうも」
はあ....やっと飯が食える......。
....ん?
「お前、そんだけしか食わねえの?」
「え?!いや、うん....紫縞君って、和食、好き?」
「あ?まー嫌いではない、ていうかそれ、食わねえならもらうぞ」
ひょい、ばくっ。
「!.....これ、お前の母親が作ったのか?」
「.........ううん。私」
「へー。お前料理できたのか。俺はその逆かと思ってたけど」
「む....それどーゆー意味?」
「別に?上手だってほめてんだろ」
?何固まってんだ?俺の顔になんかついてるか?
「いつまで人の顔を見るんだ。俺そろそろ帰るわ」
「あ、明日お弁当の練習で作るんだけど食べてくれないかな??」
「練習って....お前、料理うまいだろ」
「新しいもの......作ってみたくて.....だめ?」
「.......ふっ...わかった。楽しみにしとく」
弁当か.....。懐かしいな....。
小さい頃はよく作ってもらってたな、そういえば....。
「紫縞く~~ん!私達のお弁当も食べて~~~~!!」
...げっ....どこから聞いてたんだあいつらども....。
俺は廊下を走り回って保健室に逃げ込んだ。
はあ、はあ、はあ、はあ.....。
よし....誰もいないみたいだな......。
走って疲れたのでベッドに横になろうと思ってシーツをはごうとしたらなんか妙にやわらかいものが手 の感触に残った。
....?なんかやわらかい.....。
「も、もう.....葵ってば、大胆.......」
ズザザザザッ―.....。
後ろに大きく下がった。
誰だ、コイツには見覚えがない...。
「誰だお前.....」
「ひど~~い!今さっき合ったのにもう忘れちゃったのおお?!」
見覚えがない....。いや、あるか....。首の鈴、手をぺろぺろとなめる仕草....これはまさか...。
「...お前、まさか今さっきの豚猫?!」
「ひっど~~い!私はこんなに愛らしいのに~~!!」
「いやあれはどう見ても豚猫だろ。何?俺に攻められたいの?」
「いいよ....葵なら私は―....むぐっ」
「冗談に決まってるだろうが。本気にするなバーカ」
「もうもう!ミーちゃんと遊んでよ~!そうじゃなきゃ、パートナー作れないんだからね!」
.......っ!
「....俺にどうしろって言うんだ」
「私を葵のそばにおきなさいっ!」
「却下。じゃーな豚猫」
あんなのにかまってられるか!
「....私をそばに置かないなら、どーなっても知らないんだからね?うふふ」
このときは思いもしなかった。
この猫が、俺達と関係してるなんて―......。
どうも!!はじめましてひよぽんですw
何事にも、好奇心とドキドキが大好きな私ですが今回の××の秘密を呼んでくれてありがとうございました!!
面白かったと言ってくれれば光栄です(^^/
まだまだ続きますがこれからもよろしくお願いしますw