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赤頭巾ちゃんが行く!

作者: 月兎

 「ちゃんと荷物は持った?」

 「もちろんよ、ママ。ママの焼いたふわふわのパンも、おばあちゃんの大好きなぶどうのジュースもちゃんとリュックの中よ」


 心配性ねぇ、と笑いながら赤ずきんは背中のリュックを揺らしてみました。


 「気をつけていくのよ。暗くならないうちに帰ってくること!」

 「はーい」


 心配そうにしているママに大きく手を振りながら赤ずきんは出発しました。頭上には青空が広がっていて、絶好のお出かけ日和です。





 鳥たちの歌声を聞きながら、赤ずきんは上機嫌に歩きます。はじめて一人でおばあさんの家までお使いに行くのです。ちょっとした冒険気分です。


 森に入ると、向こうから誰かが歩いてくるのが見えます。よく見てみると、狼さんです。


 「おはよう、狼さん」

 「おはよう赤ずきん。お使いかい?」

 「ええ。おばあちゃんのお見舞いに行くの。ママの焼いてくれたパンとぶどうのジュースを持って!」

 「そいつはいい。そうだ、だったら花を摘んでいくといい。あっちでいっぱい咲いていたよ」


 そう言って狼さんは花畑のある方向を指差しました。おばあさんの家と方向がだいたい一緒です。


 「お花畑は遠いかしら?」

 「いいや。すぐそこさ」


 おばあさんが喜んでくれるならちょっと寄り道するのもいいかもしれないと赤ずきんは思いました。


 「教えてくれてありがとう、狼さん! お花を摘んでいくことにするわ」

 「どういたしまして。気をつけていくんだよ」


 狼さんに手を振って、赤ずきんは花畑をめざして歩きだしました。

 狼さんが教えてくれたとおりに進むと、綺麗なお花畑が見えてきました。さっそく赤ずきんは花を摘みはじめました。


 夢中になって摘んでいるうちに、赤ずきんの手には少し大きな花束が出来ていました。

 あんまり道草を食っていると帰る時間が遅くなります。暗くなるまでに帰らないとママを心配させてしまいます。赤ずきんは先を急ぐことにしました。


 赤ずきんは再びおばあさんの家へと向かいます。





 花束を手に歩いていると、誰かの泣き声が聞こえてきました。とても悲しそうな泣き声です。

 どうしたのだろうと赤ずきんが声のほうへと向かうと、小人さんたちが泣いていました。


 「どうしてそんなに泣いているの?」


 「彼女が死んでしまったからだ」

 「彼女はうかつにも毒りんごを食べてしまったのだ」

 「とってもいい子だったのに」


 小人さんたちは口々にそう言っては嘆き悲しみます。いわれてみると、小人さんたちはガラスの棺を囲むようにして泣いていました。棺の中には美しいお姫様が眠るように横たわっています。

 泣いている小人さんたちを見ていたら、赤ずきんもなんだか悲しくなってしまいました。


 「そうだわ。このお花をその人に」

 「いいのかい? これはお嬢さんのお花だろうに」

 「いいの。おばあちゃんにはまた摘んでいけばいいもの」


 赤ずきんはガラスの棺の傍に歩みよると、花束をその中へと入れてあげました。そして、お姫様のためにお祈りをしました。


 「心優しいお嬢さん、お花のお礼といってはなんだが、君にこれをあげよう」

 「靴?」


 小人さんが赤ずきんに手渡してきたのは靴でした。簡素ですがとっても丈夫そうで履き心地がよさそうな靴です。


 「私たちの友人の小人の靴だ。とってもいいやつだよ!」

 「ありがとう小人さんたち。私、もういくわ。おばあちゃんの所へお見舞いに行かなくちゃならないの」


 小人さんたちにお別れを言って赤ずきんはおばあさんの家へと続く道へと戻りました。

 おばあさんの家への道のりも、もう半分です。気を取り直して赤ずきんは歩き出しました。


 赤ずきんは再びおばあさんの家へと向かいます。





 赤ずきんが歩いていると、しげみを掻き分けながら何かを捜している女の人がいます。


 「お姉さん、どうしたの?」

 「靴をなくしてしまったの」


 女の人の足元に目をやると、確かに左足にはガラスの靴を履いていますが右足ははだしです。


 「どうしましょう。ほかに靴なんて持ってないないのに」


 女の人は泣きそうになりながらあたりのしげみの中を探しています。ガラスの靴が片方だけしかないのではとても不便です。

 赤ずきんは女の人に何かして上げられないか考えました。そのとき、赤ずきんはリュックに入っているもののことを思い出しました。


 「お姉さん、これあげるわ」


 赤ずきんはリュックから靴を取り出して女の人に差し出しました。小人さんから貰った靴です。


 「でも、それはあなたの靴でしょう?」


 「私には今履いている靴があるもの。それに、困った人がいたら助けなさいってママがいっていたわ!」

 「……ありがとう、赤いずきんのお嬢さん。そうね、もらってばかりと言うのも悪いから、これをどうぞ」


 靴を受け取った女の人は、そう言ってポケットからハンカチをとりだして赤ずきんに渡しました。


 「かわいい! パッチワークね!」

 「ただ端切れを縫い合わせただけよ。こんなのじゃあの素敵な靴にはつりあわないと思うけど」


 女の人が申し訳なさそうに言うので、赤ずきんはぶんぶんと首を振って否定しました。


 「そんなことないわ。すごくステキよ! お姉さんありがとう!」

 「こちらこそありがとう。ああ、そろそろ帰らないと怒られてしまうわ」

 「私も行かなくちゃ。遅くなっちゃうわ」


 笑顔になった女の人と手を振り合って別れ、赤ずきんは歩き出しました。


 赤ずきんは再びおばあさんの家へと向かいます。





 たくさん歩いたので赤ずきんは少し疲れてきました。ちょっとだけ休もうと、座れそうな場所を赤ずきんは探します。

 キョロキョロと辺りを見回すと、しげみの向こうに白い何かが少し見えました。気になった赤ずきんは近づいてみることにしました。すると、鶴さんが倒れています。


 「まぁ、たいへん。鶴さん、いま助けてあげるわ」


 赤ずきんが慌てて駆け寄ると、鶴さんは足が罠にかかって動けなくなっていました。赤ずきんは慎重に鶴さんの足をつないでいる罠を外しました。


 「大丈夫? 痛くない?」

 「ありがとう、お嬢さん。大丈夫よ、特に痛いところはないわ」

 「よかった。そうだわ、鶴さんちょっと動かないでね」


 そう言って赤ずきんは鶴さんの羽についた泥や砂をハンカチでぬぐいました。


 「だめよ、ハンカチが汚れてしまうわ」

 「いいのよ。洗えばいいんだもの。……うん、綺麗になったわ! 真っ白で美人さんね」

 「ふふ、ありがとう」


 泥や汚れが落ちると、鶴さんはとても真っ白で綺麗でした。赤ずきんがそう褒めると、鶴さんは綺麗に微笑みました。


 「助けてもらったお礼に家に招待したいのだけど」

 「ごめんなさい。おばあちゃんのお見舞いに行く途中なの」


 鶴さんの誘いに、赤ずきんは残念そうに首を振りました。たくさん寄り道してしまったので、もう寄り道はできません。


 「お見舞い? どこか具合が悪いのかしら?」

 「ええ」

 「そう。ちょっと待っててくれるかしら」


 赤ずきんにここで待っているように言って、鶴さんは飛んでいってしまいました。どうしようかと迷ったすえ、とりあえず赤ずきんは近くの石に腰掛けました。疲れたので休憩することにしたのです。


 しばらく休んでいると、鶴さんが戻ってきました。口に何かくわえています。


 「待たせてしまってごめんなさいね」

 「ううん。ちょうどお休みしようと思ってたから。ねぇ、それは?」


 赤ずきんは鶴さんが口にくわえているものについてたずねました。あんまり大きくはない包みです。


 「これをおばあさんに。河童から貰ってきたの。河童の薬はよく聞くって有名なのよ。だから、あなたのおばあさんもきっとよくなるわ」

 「本当! ありがとう鶴さん! さっそくおばあちゃんに持っていくわ!」


 鶴さんから薬の入った包みを受け取った赤ずきんは、鶴さんに手を振って走り出しました。





 「おばあちゃん! お薬を貰ってきたわ!」

サークルに投降した作品です。


言わずもがなですが、赤ずきんのたどる順番は、

赤ずきん→白雪姫→シンデレラ→鶴の恩返し→赤ずきん  です。

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