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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

"An Eternal Beginning !!!"

掲載日:2026/02/19

千年ぶりに大地を歩く


衰え尽くした足がふらつく

言葉にするとまったく陳腐でしかないが、とても永い時間だった



『彼』は確実に契約を守る

僕だけでなく、病に冒され死を待つだけだった僕の恋人───僕の唯一愛した人間の少年も、永遠の生を手に入れて居る


事ここに至って、僕には既に天使の名誉など惜しくは無かった



『契約は悪辣だが、履行出来なかった場合は自らが苦しみながら息絶える』という悪魔の不文律に照らし合わせるに、僕たちが不死になった事は疑いの余地も無かった


いずれにしても僕は契約通り、千年の間、炎で全身を燃やされ続けた

皮肉にも、責め苦の中で狂わずに済んだのは『彼』が居たからだった


彼は僕の躰を悦んで燃やし苛んだが、反面、必ず僕に定期的に話し掛ける事を忘れなかった


生きたまま燃やされる痛みは、痛覚の総てを刃物で削られ続けるような烈しいものだったが、気が狂いそうな苦痛の嵐に絶えず覆い尽くされながらも、僕の意識は確かに囁く声を、自分に向けられた『認識』を、そして言語そのものを断続的に知覚し続けた


千年のうち幾度か精神が砕けたが、そのたびに僕は『言葉』という知性の命綱を辿って、狂気から帰還する事が出来た



今となっては、どんな囁きだったのかなど覚えて居ない


いずれにしても悪魔の行いだ

『彼』は、灼かれる僕を嘲って居たのだろう




屋敷が視えてくる


意外な事だが、僕たちの住処は木々や蔦に覆われながらも、千年前と同じ場所に存在して居た


朽ちた扉を開き、屋敷へ入る

広間は昏いが、おびただしく割れた屋根から、木漏れ日のように陽差しが照らして居た


少し歩くと、表紙まで含め、あらゆる面に隙間無く文字が書かれた帳面が落ちて居た



拾い上げて、読む

視れば、総ての頁にびっしりと「いたい」「どうして」と震える文字で書かれて居る


筆跡が恋人のものである事に気付き、床を踏む両の足から、力が抜けていくのが感覚として解った


不穏な呻き声と共に、奥の部屋の扉が開く

そして、皮膚という皮膚が斑点に覆われた人型が這い出てきた



『斑点が浮かぶ』という症状から考えて、これが何者なのかは確実だった

しかし、僕の心はその理解を拒んだ


人型に───散々躊躇したのち、僕は声を掛けた

恋人の名前で呼び掛け、反応を待つ


名前を聞いた瞬間に……或いは、僕の声を聞いた刹那に人型は激昂し、僕に掴みかかろうとした


しかし動く事すらままならないのか、躰を少し跳ねさせたあと直ぐに床に叩き付けられて悲鳴を上げ、芋虫のように悶え始めた




「不死にはなったけど」


「病気は治らなかったみたい」


この千年で最も聞き慣れた唯一の、声

それを感じ振り返ると、そこには『彼』が立って居た



「『君のせいでこうなった』って、教えてあげたよ」


悪魔が歯を剥いて嗤う



「事実だからね」


自分の膝が床に衝突する感覚

そして、肩に『彼』の手が置かれたのが解った



「こんなのより」



「もう、僕にしなよ」


耳の直ぐ横で、甘い声が聴こえた

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