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08話 シエラ

「すみません、取り乱してしまって……」


「いいえ、こちらこそ申し訳なかったわ。ほんとうにごめんなさい」


俺は、これまでの経緯を全てクリスさんに話した。

モンスターテイマーになった経緯を知ったクリスさんは、申し訳なさそうに頭を下げた。


「いえ、いいんです。もう過ぎたことですし気にしないでください」


「確認画面は二度目からは出ないようになってるの……」


そうだったのか、だから今回は警告もなく確定されたのか。


「はぁ、わたしがもっと注意しておけば……」


確かに悔いは残る。

でも、クリスさんは俺を心配してここまで来てくれた。だからそれを責めるなんてお門違いもいいところだ。


「いえ、ほんとに気にしていないので。それに――」


俺は視線を落とした。

そこには気持ちよさそうに膝の上で寝る、ラピードラビットの姿があった。


「もし、クリスさんが現れなかったら、こいつと一緒にはなれなかったので」


俺一人だったら、モンスターテイマーを選ぶことはなかった。

戦闘に関して不安はある……でも、この寝顔が見られるのなら、むしろ良かったのかもしれない。


クリスさんは一言「ありがとう」と言って、安堵の表情を見せた。


「そういえば、クリスさんの職業って何なんですか?」


「あら、言ってなかったかしら。わたしはねぇ――って、あら?」


クリスさんは「ちょっとごめんなさい」といって、突然動かなくなった。


(宅配便でもきたのか?)


「急にごめんなさいね。今しぃちゃんから連絡があって、もうすぐログインできるそうよ」


なるほど、シエラさんと連絡を取り合っていたのか。


「昨日ログアウトした場所で待ち合わせしたから、急いで向かいましょう」


クリスさんはそう言って、急いで森の外へ向かった。

それほど時間はかからなかったが、待ち合わせ場所にはすでにシエラさんの姿があった。


「しぃちゃ~ん。遅くなってごめんね~」


「いえいえ、わたしも今来たばかりなので」


シエラさんは「お気になさらず」というと、改めて俺に視線を向ける。


「あ、あの、ユキトさん。昨日はいろいろとお恥ずかしい姿をお見せしてしまって……その、ごめんなさい」


彼女はそう言って俺に頭を下げた。


シエラさんはいろいろと抱え込んでしまう性格だとクリスさんが言っていた。

きっと彼女はどこまでも真面目な人なんだろう。


昨日の件も、俺ならクランを抜けて終わりにしたと思う。

それでも彼女は、「お世話になってる人もいるので」といって、簡単な逃げ道を選ばなかった。

まったく、この人はどこまでも――


(真面目で――優しい人なんだな……)


シエラさんと出会ったのは昨日のことだ。


相手のことを知ったつもりなんて思っちゃいない――

だけどこの人とだったら……俺はこのゲームをもっと好きになれる、そう思わせるものがこの人にはあると思った。


「そうだ、昨日のお誘いなんですけど――」


「と、突然あんなこと言われたらびっくりしちゃいますよね!あの……昨日言ったことは――」


「わたしなんかでよければ、ぜひ」


「忘れて……っえ?」


シエラさんは唖然とした表情でこちらを見た。


「あ、あの……今、なんて……」


「わたしでよければ、お友達になりましょう」


俺の言葉を聞いて、シエラさんは少しの間フリーズしていた。

そして突然、俺とクリスさんを交互に見て――

感情がようやく追いついたのか、シエラさんはぱっと顔を輝かせた。


「やったー、クリスさん聞きましたか!お友達になってくれるって、ユキトさん言ってくれました」


「ちょっと、しぃちゃん。もぉ~わかったから、ちょっと落ち着きなさい」


クリスさんは興奮したシエラさんを(なだ)めながら「ほんとに……よかったわね、しぃちゃん」といって微笑んでいた。


(あそこまで喜ばれると、こっちが気恥ずかしくなっちまうな……)


シエラさんはようやく落ち着きを取り戻し、俺に向き直る。


「あの、それじゃあこれからどうぞよろしくお願いします」


シエラさんは深々と頭を下げた。


「こちらこそ、よろしくお願いします」


そう言うと彼女は頭を上げ、目の端に溜まった涙を拭いながら笑って頷いた。

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